第一章 用語集
亜人
人間以外の知的生命体の総称。エルフもこのカテゴリーに分類される。他にも虎人、狼人、豹人、牛人、兎人、山羊人、獅子人、馬人などが居るが、基本的に同族同士でコミュニティを形成しているので他種族と積極的に交わろうとする者はそう多くない。部族として纏まっているが、人間のように国を作るほどには至らず、度々人間から被害を被っているので人間への感情は悪い。中でも大陸一の大国ギルス共和国では家畜以下の存在として強い迫害対象となっている。反対に大陸第二位のボルド帝国は隣国のギルス共和国に対抗する形で亜人の権利を人間と同等に認めている。
ギルス共和国
エーシア大陸の南西部に位置する大陸最大の国家。王のような絶対的君主がおらず、貴族や聖職者の実力者で構成する元老院議会が国家運営を行っている。誇り高き自由を掲げ全ての民に政治に参加する権利が保障されているものの、実際には固定された身分制度によって形骸化して久しい。さらに宗教的な弾圧も極めて強く、国教である人類至上主義であるユピリウス教以外を信仰する事を重罪として禁止している。当然人間ではない亜人は強烈な弾圧の対象となっており、存在そのものが悪と断じて、唯一の善行がデウスマキナの部品となる事と公言して憚らない。
作中の序盤でエルフの村を襲撃したのもこの国の軍である。
ボルド帝国
エーシア大陸南東部に位置する大陸第二位の国家。元は中堅国家だが周囲の小国を併合し続けて大国にのし上がった。その経緯から多民族国家的性格が強く、少々纏まりに欠けるのが難点である。しかし西の隣国のギルスに比べ、亜人への風当たりはかなり弱いため、活発な活動と文化育成によって大陸でも抜きん出た文化水準の高さを誇る。身分制度も硬直化しておらず、良い意味では伸びしろに余裕がある反面、制度的な安定性に欠けてしまい、皇帝の代替わりのたびに大小様々な反乱に悩まされている。
ギルス共和国に襲われたニコラとエルフが庇護を求めたのもこの国である。国教はギルス共和国のユピリウス教の主神ユピリウスの妻であり妹である女神ジュノーを信奉するジュノー教。
大陸の宗教
エーシア大陸の宗教は基本的に多神教である。ごく一部を除けば全ての神は親子や血族の関係にあり、大陸の国家はそれぞれ一柱の神を主軸に据えた宗教を国教としているが、若干教義や生活環境の違いからくる指針に差異がある程度で、大筋は似たり寄ったりでしかない。違いを求めるのは何時の時代も人の都合である。
ギルス共和国の国教はユピリウス教。これは全ての神の頂点に立つユピリウスを信奉しており、他の神を主神にしている教派を見下し、一方的に異端者と敵視ないし蔑視しているが、本来そのような教義は無い。
デウスマキナ
本作に登場する、全ての兵器を凌駕する全長10Mの鋼の巨人。正しく一騎当千の戦力で、各国はこの兵器を一機でも多く揃えようと日々、影に日向に闘争を繰り返しており、黒夜の森のエルフが襲われた直接的な原因である。
外部装甲は錬金術によって生み出された堅牢無比のアダマンチウムで覆われており、内部の制御系には人間、より高い性能を求めるなら亜人の生体組織が部品として使用されている。この為、亜人は人間に利用される運命にある。中でもエルフの生体部品は高性能であり、高位騎体には優先して使用される。動力源はこの星で産出されるクリスタルが用いられている。当然こちらも希少資源である。
きわめて高価な兵器であり、大国でも新規製造は一年に一騎が限度である。さらに高性能であればあるほど搭乗者の遺伝子の相性が強さに影響を与える、取り扱いの難しい兵器と言える。維持費も相当に掛かり国軍を除いてそれなりに裕福な貴族の家に一騎あれば良い方である。
タクティカルアーマー TA-30
地球統合軍で制式採用している陸軍歩兵用装備。21世紀より改良を重ね続けて小銃と共に歩兵の命とも言える息の長い兵器。
ニコラが使用しているのは西暦2430年から更新している新型で、異星生命体『ライブ』への対策として対弾性能だけでなく対毒、対細菌、対光学など、より防御に重点を置いた改良が施されている。
特筆すべき点はスーツに張り巡らした人工筋肉の補助によるパワーアシスト。これは生身の筋肉を増幅させる効果があり、最大稼働時には実に通常の筋肉の二十倍にまで増幅する。反面、使用後にはそれなりの疲労感を伴うので頻繁な使用は自粛気味。
他にも周辺装備とのデータリンクによる射撃補正や発砲時の反動軽減など、便利な機能が搭載されている。
インテリジェント砲弾
状況に応じて誘導方式を能動的に選択し、自己を正確に目標へと到達させる機能を持つ砲爆弾。内部にはナノチップが埋め込まれており多目的ヘルメットの網膜ディスプレイと連動して対象への弾道を補正する。
ニコラの持つアサルトライフルの下部にオプションとして装着したグレネードの弾頭であり、統合陸軍の個人携行火器の弾薬としてはスタンダード。
ライブ
西暦2410年に人類が銀河中心部で接触した超敵対性生命体。銀河中心に派遣した調査団を壊滅させた元凶。奇跡的に調査団の生き残りが持ち帰った情報と『ライブの切れ端』を解析した結果、人類の存続すら危うくすると予想され、事実この生命体との接触が地球人類の今後百年に渡る星間戦争の幕開けとなる。しかしその結果、史上初の人類統一国家樹立の原動力となったのは甚だ皮肉な結果である。
バクテリア以上の繁殖力を有し、有機物無機物問わずあらゆる物質を捕食、雄雌の区別なく繁殖に使用する。その時に副次的に膨大なエネルギーを生む事が分かっており、地球軍ではこのライブを利用した新型兵器が開発されていると噂が流れている。
物語開始時、ニコラはこのライブの襲撃に備え、街で市民の避難誘導をしていたが、なぜかいつの間に森に居た。混乱して当たり前である。




