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第5章ー28

 モスクワ陥落という情報が、全世界に流れても、ソ連政府の態度は変わらなかった。

 繰り返される連合国からの無条件降伏勧告に対しては、

「ソ連の人民全てが死に絶える時が、戦争が終わるときである。また、世界中の民主主義者が死に絶えるまで、民主主義国家ソ連の精神は気高く伝えられ続けるだろう。これは世界の民主主義を護るための戦いなのだ。非民主主義国家であり、君主主権国家である英国や日本が構成する連合国に対する無条件降伏等、断じて受け入れらない」

 そう、ソ連政府は反論し、無条件降伏勧告を拒絶していた。


 もっとも、ソ連政府首脳部としても、無条件降伏を受け入れた後にどうなるか、を考えれば、とても無条件降伏を受け入れられない、というのも事実だった。

 実際、ドイツでは、非ナチ化、自由主義化を大義名分として、更に戦争犯罪を理由として、ナチス党幹部への国際裁判(いわゆるニュルンベルク裁判)が既に始まろうとしているという現実があった。


(なお、少なからず先走るが、この国際裁判により、ゲーリング国家元帥等は絞首刑になる。

 彼らの全ての遺体は、火葬に処せられた後に遺灰を北大西洋に撒かれるという措置を取られた)


 そういった状況から、ドイツ国内では、旧ナチス党の幹部の家族らまでが迫害され、多くが少しでも暖かく迎えてくれる筈のアルゼンチン等に亡命を図る有様だった。

 また、一時、ドイツ軍の占領下に置かれた土地においても、ドイツ軍協力者に対する迫害が起きている。


 そして、中国でも、似たようなことが起きていた。

 旧満州国、蒋介石政権が、日米韓等の支持により、中国本土の統治権を急速に回復していたが、その際には必ず、共産党員やその家族に対する報復が伴った。

(もっとも、中国国民党の左右対立から、1927年のいわゆる日中限定戦争が勃発し、それによって、中国国民党左派と中国共産党の連合政権が樹立された後、中国国民党右派に対する大迫害がなされ、右派とされた党員やその家族、支持者らが虐殺されたり、強制収容所送りにされたりした歴史的経緯を考えれば、当然の報い、という見方も成り立つのも事実なのだが)


 更に実際問題として、連合国軍に既に占領されたソ連領内でも、ソ連政府にしてみれば、看過できない事態が発生していた。

 極東においては、蒋介石政権が、ロシア帝国による侵略を非難し、更に第二次世界大戦でソ連軍の侵攻が行われたことから、ネルチンスク条約当時の国境線回復を呼号し、ソ連の沿海州等の割譲を求めていた。

 その一環として、ソ連国籍の沿海州の住民に対する迫害を、蒋介石政権は行っていた。

(なお、日米両国は、この蒋介石政権の行動を非難し、陰に陽に沿海州の住民を庇護していた)


 また、旧バルト三国や西ウクライナでは、完全にソ連邦からの分離独立派が、多数を占めるようになっており、もし、住民投票をすれば独立宣言をして、独立国家になるのは間違いないと、内外から観測されるようになっているが。

 その一方で、旧共産党員やそのシンパに対する迫害は苛烈極まりない状況が発生していた。

 

 それらを考え合わせれば、ソ連政府首脳部が無条件降伏に署名することは、自らの死刑執行状に署名することと同義であると言わざると得なかった。

 更に言えば、ソ連共産党員の多くにとっても、自らや家族が迫害され、場合によっては処刑されるのが目に見えている事態でもあった。


 だから、ソ連政府首脳部は、連合国からの無条件降伏勧告には応じなかった。

 だが、連合国側もこれ以上、第二次世界大戦を続けるつもりは無かった。

 だからこそ、最後の作戦を実施して、なし崩し的に第二次世界大戦を事実上終わらせることを決意し、実施した。

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