??.振り向かれなかった/言われたことのなかった二人の話
私の家は、とても寂しいのです。
父は仕事が趣味の変なひとで、母は自分の趣味に忙しいひとでした。
それでも私が幼い頃は私の世話をちゃんと焼いてくれたのに、今では念願の男の子が生まれたせいで両親も祖父母も弟ばかりを可愛がります。
祖母は「男が生まれたから、もうお前の家は安泰だね」と朗らかに笑い、祖父は弟が興味を示した物ならどんな高価なものでも与えました。
父は私には自分から接触してくれなかったくせに、弟には「パパとボール遊びしようか?」とか「今日は誰と遊んだんだい」と積極的に触れ合うのです。
母はやっと周囲からの圧力から解放されたと喜び、弟の教育に何より熱心になりました。
―――私は、それが、寂しかった。
目の前で弟をぎゅっと抱きしめて成長を喜ぶ祖父母を離れたところから見つめることが。
私に隠れて、弟と何か作ったり遊んだりする父を物陰から見つめることが。
友人たちに弟の成長を喜々として語る母のそばにいることが。
私は正直に言えば弟が憎くて。
ある日、誰も見ていない時を狙って、弟を突き落としました。
そして落ちた弟に駆け寄って悲鳴を上げて、何食わぬ顔で救急車に運ばれる弟を心配してやりました。
「死んでよね」
仏壇の前でそう祈ったけど、弟は結局死にませんでした。
結局、弟はこの事故のせいで足が不自由になった―――それだけでした。
でも清々した、と私が笑っていられたのも数日の間だけ。
祖父母は「生きていてくれただけで良かった」と泣き、両親は弟がちょっとした痛みに泣くだけで大慌て。……まったく私を見てくれない。
どうしたら私を見てくれるかしら、そう考えた幼き日の私は、ある日家出をしてみました。
まあ家出と言っても、せいぜい帰りが夜になるくらいのものです。でもそれでも、当時の自分からしたらとても恐ろしい行為です。神社の端で蹲りながら、何度家に帰ろうと思ったか分かりません。
けれど耐えて耐えて、そして時計を見て「もう大慌てで探してくれてるだろう」とうきうきしながら家路を急げば―――家では、弟が高熱を出して寝込み、母は弟に付きっきり、父はそんな弟のために買い出しをしている最中でした。
誰も、私が帰ってきていないことに気づいていませんでした。
「どうして〇〇ばかりこんな目に遭うの…!」
「…おまえ…」
「○○は男の子なのよ、大事なこの家の跡取りなのに…花奈は病気も怪我も無縁だというのに、どうして〇〇ばっかり……!」
「しょうがないさ、そういう運命だったんだ…」
「あの子は男の子なのに、走れないし自由に動き回れないのよ。きっと小学校に上がったら惨めな思いを何度も味合うことになるわ…あんなに足の速い子なのに…あんなに体を動かすのが好きな子なのに―――」
「……」
「こんなのってないわ。どうせなら…どうせなら、花奈が落ちていればよかったのに」
「おまえ―――」
「だって、そうでしょ。花奈なら……それに、あの子、動けない〇〇に嫌みを言うのよ。私たちに隠れて何度も何度も。わざと〇〇の必要なものを高い所に隠したり……」
「………」
「どうして花奈じゃないの」
―――その日から、私はひねくれて、誰よりも早く反抗期を迎えました。
父は余計に私によそよそしく、母はよく私をヒステリックに罵りました。弟には近づくことも許されなくなりました。
それでも私は家に不和を齎し続け、ついに弟を家から追い出して祖父母の家に住ませることが叶いました。
上機嫌でいた私でしたが、両親がまるで隠れるように私に黙って弟を連れて旅行に出かけたのを知ったとき、「本当に追い出されたのは自分」だということに気づきました。
―――そんな中、あるお節介焼きな親戚が見かねて、私に同い年のいとことの交流を勧めてきました。
ひねくれていた私は、……まあ最初は嬉しかったけど、あの子と来たら視界の端でうろうろしては話しかけて欲しそうにして、いざ声をかけてみればびくびくと怯える姿に非常に苛立ちしました。
しかもあの女ときたら話題を振られるのを待つばかりで自分から話題を振ろうともしない。まるでそのことが当然のようにどこまでも受身で、ちょっとでもその態度に苦言を呈してみればメソメソと泣く。面倒臭くて、あの子と会うたびに何度イライラしたか分かりません。
それでも周囲が、あの子自身が私にくっついて一緒にいることを強要してくるから、私は窮屈で不自由な思いばかりしていました。
―――だから私は、いい機会だと思って、中学に進学した際にあの子を安居院さんに押し付けました。
あの子の数少ない特技を褒めてくれた安居院さんに、あの子はよく懐いていて……だんだん安居院さんと過ごしていて、野暮ったいあの子が可愛くなっていく姿がまたイラつきましたが、それだって今思えばマシでした。
「あんなに優しくしてくれた子を、刺そうとしたんだって」
……あの子は、安居院さんに惚れ込んでいました。
強気で、でも優しくて、人を傷つけることを好かない。文武両道の才女。
物語の登場人物のように、華やかな美少女―――そんな、彼女にとって輝かしい存在が、「ある一人の生徒」の前ではただの同年代の少女のような表情を浮かべることが。あの子はそれが何より許せなかったのです。
そして、あの子に触れることが出来ない、最底辺の自分の存在も。
―――その最後が無理心中。……それが未遂で済んでマシだったと思えばいいのか、いっそ綺麗に二人そろって死んでくれたらと願えばいいのか―――。
彼女に付き添う生徒によってやっと彼女が登校してからずっと、その綺麗な顔は憂いを帯びていて。いつもなら幸せそうに食事をしていたのに、今では食が細くなって、サンドイッチ一つだって食べられない。
普段と違い、儚げで今にも消えそうな美少女を見て、他人がどう思うかなんて、分かりきったことでした。
「恩知らずだわ」
最初は、痛々しい彼女の姿を見て、そうした犯人への怒りだけがありました。
「そういえば、あのクズを安居院さんに押し付けたの、あの子なんだって」
…しかし犯人はこの世にいないので、誰かの言葉をきっかけに、すぐそばにいる形ある人間へと、その怒りは向けられました。
「……ごめん、もうこっちこないでくれるかな」
とはいえ、彼らの怒りは薄っぺらいもので、やがてそれは公然と暴言を吐くことの免罪符となり、私は日々のストレス発散道具としての役を押し付けられ、孤立しました。
私も最初は反論したり仕返しをしたりしたけど、私に害意を持つ人々のその数に、悪意に満ちた日々に、どんどんとひねくれた心に罅が入って、ついには折れました。
あんなに強気でいた私は、絶対にすまいと決めていたことを―――親友だったひとたちの前で、負けを認めて、泣いて、「許してください」と土下座していました。
両親は、弟の足がゆっくりと動かせるようになったことに喜んでいました。
「―――あれ、おまえ、またここに来たのか?」
その日も苛められ、私は人の目から隠れるように震えていました。
すると、どこか呑気な声が背後からかけられて。とんとん、と振り返ろうとしない私の肩を指で叩くと、恐る恐る振り返る私に視線を合わせてくれました。
「女の子なんだから、茂みの中に入ったらダメだ」
そっと手馴れたように傷ついた手に触れて、ぺたりと絆創膏を張ると満足そうな顔をする―――そんなあの人に、私は泣いてしまって。慌てたあの人に縋るように、今までの感情を叫んで。
好きなだけ泣き喚いた頃には、あの人は私の背をあやすように叩いては「そっか」とか「うん、そうだよな」と相槌を打ってくれていた。
私は、ただでさえ好意を持っていた人が自分の話を聞いて、「それは酷いことだ」と憤ってくれたことが嬉しかった。涙を優しく拭ってくれた場所が、熱くて震えそうだった。
―――たとえそれが、あの人がなによりも愛しているものと私を重ねたがゆえの優しさでも、その時の私はかまわなかった。
だって、また貰った飴玉は、宝石よりも輝いていてうっとりするほど甘かったのだもの。
*
――――息が、出来ない。
まるで水に溺れるように、私の命は小魚のようにこの手から逃げてしまいそう。
ここがどこか分からないけれど―――暗くて、夏なのに寒くて。まるで海の底みたい。
(振り向いてくれなかった)
自分を「魔法使い」と笑って名乗った男の言う通りの手順を踏めば、忌々しい恋敵を害そうとする企みはそこそこ上手くいった。
上手くいったが―――肝心のところで、邪魔が入る。あの恋敵を悪い男子の玩具にしようと企んだ時だって、万が一にも逃げ出さないようにと本の力を使った。
なのに、何故か邪魔が入った。本を手に図書館の隅で目を瞑って陵辱の光景を見ようとした瞬間、何かの視線を感じた。そして現れたのが佐島だった。
イライラしながら本による支配を強めると、今度は髪が一部バッサリ切られた。
それでも諦めずに本を開いたら、白いページに触れていた手のひらが焼けるような衝撃と、一瞬だけ嘲笑うように白い紙片から金色の花弁が舞って溶け消えたのが見えた。
そうして最後に見えた光景は、国光くんが、泣きそうな顔であの女を、抱きしめていた。
―――私だって、あの時、抱きしめて欲しかった。
(わたしではダメなの?)
あの女が学校に来なくなった。国光くんが怖くなった。
それでも国光くんに接触してみた。無表情で見下ろされて、思わず泣いてしまった。
慰めて、くれなかった。
「……くにみつ、くん」
電柱の影からこっそり見つめる。少し顔色の悪い彼は、宝物のようにあの女から渡されたお重を抱えていた。
あんな目に遭ったのに、あの女は今では穏やかな雰囲気ですらある。それに安堵しつつ、名残惜しげに国光くんは別れを告げ、家路を急いだ。
私はその背を追いかける―――そのための足はない。魂だけが彼を追いかけていた。
でも、彼は一度だって振り向かなかった。
*
―――私は、周りから「可愛い」とちやほやされて生きてきた。
というのも、父方の祖父母にとっては初めての孫で、母方の祖父母にとっては初めての孫娘だったし、我が家でも待望の娘にして末っ子でもあった。
幼稚園に行っても先生や友だちは「可愛い」と言ってくれたし、小学校に通ってからはクラスで一番男の子と仲の良い女の子だった。
そんな私には幼馴染がいる。昔は特に何も思わず、なんとなく一緒にいただけだったのだけど、幼馴染はちょくちょく私のそばに居て、「綾ちゃんはすごいねえ」と目を輝かせてくれるものだから、あの子だけは私のそばに居座ることを許していた。
けれど一年二年と時が経つにつれ、私のそばにはひっきりなしに人が集まるからだんだんとあの子をかまってあげることができなくなってきた。
たまに寂しそうな顔をしていたけれど、私は色んな人間と遊びたかったし、誰かに縛りつけられるのはごめんだったから気づかないフリをしていた。
やがて小学校でも最年長の学年になると、私の周囲は変化した。
今まで苛められるだけで、友だちも誰もいない男の子の格好ばかりした変な女の子―――「御巫 文」が、可愛らしい女の子の服装を着てきた。
まあ、確かにあの子は顔が悪くなかったし、よくよく見れば所作も綺麗だった。
でも表情が暗いんじゃあねえ……とダメ出しをしてしばらく。彼女は自身にくっついてくる男子生徒に花が綻ぶような笑みを見せた。
男子生徒にだけ見せたのだろうその笑みを、もちろん周囲の生徒も見た。見て、「可愛いね」と女子が柔らかく囁きあった。男子は思わず視線をあちらこちらへと泳がせていたけれど。
なんだかそれがつまらなくて、私は部活帰りに偶然会ったあの子に愚痴った。そして聞いた。
「ねえ、私の方が可愛いよね?」
「うん!」
久しぶりに私から話題を振られ、手を引かれたあの子は、嬉しそうに笑った。
中学に上がった。
入学式の日、私はこれから大好きな少女漫画…とまではいかなくても、それぐらいにすてきな恋がしてみたいと胸を躍らせ、周囲の男子生徒に点数をつけていた。
あの子はなんだかそわそわと私のそばにいたけれど、正直邪魔だった。これじゃあイケメンを見つけても声がかけられないじゃないの!
内心イライラしつつも表面上では微笑みを浮かべている。そんな私の視界に、一年の中では一番背の高い男の子が映った。
「わあ、綺麗な子…!」
思わず呟くほどに、背の高い男子生徒は整った顔をしていた。ハーフなのか、緑色の瞳を持っているところもポイントが高い。
何より同じクラスメイト―――うん、これは狙うしかない!
意気込んだ私は、入学式後の教室内での自己紹介タイムで、まさか顔面を殴られるような衝撃を味合うはめになるとは思わなかった。
「安居院 彩羽です。…えーと、趣味は読書かなあ。好きなことは美味しいご飯を食べることです。でも嫌いなものも多いので、今年の抱負は嫌いな野菜を二つ三つ克服することです。よろしくお願いしますっ」
事前に黒板に書かれた指示通りにあれこれ答えた少女は、よく通る声で挨拶するとニコっと笑った。
挨拶とともに揺れる金髪にも驚いたが、そのスタイルの良さと気品がありながらも人懐っこそうな雰囲気が魅力的だった。
媚び売るようでも頭が弱そうでもない、どことなく暢気な性格が覗く挨拶は教室内の緊張した空気を緩和し、彼女の後ろに座っていた気弱そうな女子は有り難そうに息を吐いた。
(……あの子、やっぱり髪は染めてないのよね…?染めてたら流石に怒られるだろうし……あの子もハーフなのかしら…肌白いし……しかしまあ、見たところ、小学校ではお姫様扱いされてそうよね……目障りな……)
流石の私も、もし彼女が同じ幼稚園、同じ学校に通っていたらああもちやほやされた生活は出来なかっただろう。そうあっさりと認められるくらいには、負けを認めてしまえる容姿を彼女は持っていた。
その後数人の後に入学式の時から目をつけていた男子生徒が立ち上がった。
「……嘉神 羽継です。趣味は特に……強いて言うなら…料理を作ること、です。……よろしくお願いします」
悪くとればそっけなく、良くとれば静かな挨拶だった。
男子の何人かは「あれ、ハーフ?」みたいな顔をして見つめていたが、女子のほとんどは熱い視線を送っていた。もちろん私も。
それから残りの生徒たちの自己紹介は続いたが、けっこうな人数がこの二人に注目して終わっていたのである。
「彩羽、お昼」
「うん」
―――あれから私は、彼となんとか親しくなろうとするも尽く上手くいかなかった。
というのも、彼は基本的に同性の友人たちと過ごし、異性と関わることのほぼ全てが彩羽さんばかりだった。
まず、朝の登校では彩羽さんと共に、お昼はお互いの友人同士で食べるか二人で食べるか、それとも両者の友人たちと固まって食べるか―――下校時にはもちろん彩羽さんがいる。
もちろん二人のべったりとした関係を妬ましいやらなんやらで引き裂きたい生徒は男女ともにいたのだけれど、二人そろって容姿良し、頭良し、運動神経良しとそろい踏みで悪く言える隙がない。
これで両者とも性格も問題ないのだから、二人がクラスの中心となるのも当然のことで―――
―――私はそれが、嫌だった。
「もうっ、なんで嘉神君はこっち向いてくれないのよ!」
同年代の男子と比べ、落ち着いているし気遣いも出来るイケメン。少女漫画のヒーローのような彼に、私の恋心はだんだんと腐ってきた。
だって、彼ときたら私がどんなに褒めても持ち上げても、彩羽さんの「羽継は、今日も格好いいなあ」という飾りっけのない言葉を喜ぶし、すぐそばで彼の名を呼んでも彩羽さんが彼を探すように視線を彷徨わせていればすぐに飛んでいくのだ。
彩羽さんのように、華やかな子が好きなのかと思って髪型を真似て巻いてみたり、頭が良い子がいいのだろうかと勉強を頑張ってもみたが、私の雰囲気に巻き毛は合わないし、成績だってちょっと上がっただけ。むしろ徹夜でテスト勉強したから肌が悪くなった。最悪。
気づけば小学校から親しかった子たちの何人かは彩羽さんとこに行っちゃうし。毎日毎日あっちは賑やかで楽しそうだし。日々輝くような彼女を、嘉神君は飽きることなく見守っているし。
……勝ち目がないって、こういうことか。
「ねえ、私の方が可愛いよね?」
久々に、帰り道で出会った幼馴染のあの子。今ではサッカー部に入った。
ちなみに私は入部している吹奏楽は休みだったのだけど、嘉神くんが弓を射る姿を見たくてこんな時間まで残っていた。
なんだか顔を見て懐かしさを感じたのは私だけではないようで、あの子も懐かしそうに私を見、同じクラスなのにお互いの近況の話をした。そうして途切れた間に、私は懐かしい問いを向けたのだ。
「…………、……うん、そうだね」
珍しい沈黙が気になったが、その時の私はただ自分を肯定してくれる言葉が欲しかっただけだから、特に何も言わずに機嫌良く家に帰った。
―――それから、数ヶ月もしない後のこと。
彩羽さんは学校に来なくなった。みんなは可哀想だなんだと言っていたけれど、私としては清々する。このまま一生学校に来ないでくれたら、とりあえずこのクラスで一番可愛いのは私だ。
その証拠に、何人かの男の子からは告白されちゃったし。「可愛いなあって思って」と言ってくれたけど、まあ今は嘉神君狙いだから断っておいた。
私は邪魔者がいないうちに、最近休みがちになってきた嘉神君にアピールしたいのだ。今は文化祭も近くてみんな浮かれ気分だし。嘉神君とは作業グループ被るし、上手くいけば一緒に遊べないにしろ、少しは距離も縮まる気がする。
私は前向きに考えて積極的に嘉神君に話しかけている頃、時折あの子はフラッと視界から消えてどこかに歩いて行った。
「あーッ!もうっ、ぜんっぜんダメ!むしろ距離が開いた気がする!」
イライラするし、生理痛は辛いし。
もうふて寝しちゃおう。なんだか一気にやる気がなくなっちゃった。
―――授業が始まり人通りもない廊下を、私は機嫌の悪さを隠さずに歩く。目指す場所はもちろん保健室だ。
こんな時に教師に見つかって小言をもらいたくなかった私は近道をして普段は通らない道を進むと、教務室近くの空き教室から話し声が聞こえた。
耳を澄ませばそれが男女の声だと分かり、なんだか聞いたことのあるもののような気がする。……思わず、好奇心から足音を消して近寄った。
「……めんね、ちょっと……ついちゃって……ありがとう」
少しだけ開いている、扉を覗いた。
見えたのは、パイプ椅子に座る金髪の―――不登校中のはずの彩羽さんと、
「いいんだ。気にしないで」
幼馴染の、あの子だった。
「君に少しでもなにかできるのなら、俺は嬉しい」
そんな言葉、私にも言ったこと、なかったじゃない。
―――ただ、立ち尽くしたあの日。
今まで求められるのが当然の生活をしてきた私は、初めて私のもとから立ち去る人間に涙を流した。
こんな醜く私自身にすら目立たずにあった初恋は、それに相応しく静かに去ったのだ。
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①ひえっ、ストーカー!なあの少女視点
②ストーカー少女と仲の良い()、自分以下の存在の友人()に囲まれてお姫様をしてきた少女視点
…です。②視点は区切り良いのでここで一旦切ります。
ちなみに自己紹介時の彩羽の「美味しいものを食べることが好き」と羽継の「強いて言えば料理を作ることが好き」発言の意味は何人かの生徒は察してたりします。




