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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
五章 サンクリス皇国編
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86.醜い争いの行く末

「初めましてリントワース伯爵様、ベタスルール王国出身のテルーと申します。どうかよろしくお願いします」

 テルーさんがホランドさんに深く頭を下げる。


「娘が世話になっているようだね、アイネの父のホランドだ。話は娘から聞いたよ、大変なことだが気を確かにな。我々も出来ることは協力しよう」

 普通に考えれば緩い気がするけど、まぁリントワース家っぽいから良いかという考えに至った。


 私はハズリムさんの所に行き、今回の旅にゼル君を連れて行くように勧めた、アイネちゃんを羨ましいと言っていたからコキ使ってやると言う。


「ほほう、中々の提案ですな、ガルファが大喜びしそうだ」

「あんまり虐めてはダメよ、適度にね」


 不良祖父母夫婦からは了承を得た、後は任せて私達はグランドル邸を後にした。そして、テルーさんを連れてリントワース領に戻った。


「今日からお世話になります、ベタスルール王国出身のテルーと申します」


 え?なぜかテルーさんがメイド服を着ている!?


「エルフメイド、アリね!」

 駄メイドのマリアさんは相変わらず頭がおかしい。


「なんと、私と同郷ではありませんか」

 腹ペコメイドのカーリンさんと同郷なの!?


「私にもついに後輩が」

 最年少の手芸メイドのタナさんがご機嫌だ。


 話を聞くとテルーさんがお客様扱いは嫌らしく、しっかり働きたいと願い出たのだ。その態度をメイド長のクレアさんが気に入ったそうでテルーさんに仕事をしっかり教えたそうだ。

 覚えも早く、あっという間にかなりの仕事をこなせるようになっていた。


 あれ?駄メイド共いらなくない?


 当のテルーさんはリントワースのユルユルっぷりに驚いているようだ。

 そして、ここで一つの問題が生じた、従者枠が3人らしい。リマさん、テルーさんは固定枠なのであと1つしかない。


 しかし、ここで反旗を翻す者がいた!


「リマ先輩、最近アイネお嬢様のお世話を全くしてないじゃないですか!」

 下克上だ!タナさんがリマさんを糾弾した。

「なっ、そんな事はありません!」

 狼狽て言い淀むリマさん。


「そうよねぇ、アイネお嬢様は放っておくと自分で勝手にやっちゃうからね」

「リマはラヴィリス様の世話ばっかしてた」

 そこへマリアさんとカーリンさんが加勢する。

「本当なの?」

 メイド長のクレアさんの目が光る。


「そそそそそんな事ごじゃりません!」


 動揺が隠せないリマさん、心当たりがあり過ぎるようで目が泳ぎまくる、クレアさんに睨まれ泣きそうになっている。

「私は今回はリマ先輩も抽選に参加すべきだと思います!」

 タナさんは本気だ、本気の下克上だ!

「サンクリスはお魚が美味しいですからね、私も譲れません!」

 カーリンさんが良い情報をくれた、魚が美味しいのか、それは是非食べたいな。

「ラヴィ様の身体を洗うのは譲れない!」


・・・マリアさんはぜひ落選してほしい。


「マリア先輩何をしているんですか!!」

 タナさんがブチ切れた!!この醜い争いに私もテルーさんもドン引きだ。


「なら私も参加しようかね?」

「「「ええぇ!?」」」


 まさかのクレアさんが参戦宣言をした。

 そうすると他の担当のメイドさん達も参加したいと言い出し、場は異様な雰囲気になる。


「何かあったんですか?」


 そこへ雑草を袋いっぱいに持った変人貴族令嬢アイネちゃんがマキシムを連れてやってきた。

「・・・ア、アイネちゃん、その草は?」

 一応皆がツッコんで欲しそうだったのて聞いてみた。


「ラヴィリス様!この草を薬草にしてみたのです、鑑定して下さい!」


 どうやらマキシムを護衛に連れて森に入ったようだ、貴族令嬢がそんな事してはいけません!

「あ、後でしてあげますね」

 そう言うと不服そうな顔をしている、そしてアイネちゃんはこの場の異様な雰囲気にようやく気づいた。

「あ、あの何か揉めているんですか?」


 私はサンクリス皇国に同行する面子で醜い争いをしている事を説明する。

「え?マキシムが行くならリマは同行しなくてはならないんじゃないですか?」

 アイネちゃんの一言に全員が唖然とする。


「ですよね!ですよね!!マキシム!マキシム!!おいで!!マキシムー!!!」


 リマさん大復活!必要以上にマキシムを可愛いがる。確かにマキシムと契約しているのはリマさんだから仕方ないか。

・・・でもエンゲージリングを渡せば誰でもOKなのだが・・・言わない方が良さそうだ。


「あと、テルーと同郷だからカーリンも来て欲しいかもしれませんね」

 カーリンさんが天高く両拳を突き上げた。一方のタナさんは絶望している。

 下克上を失敗したようだ。


「なので、あと1人ですね」

「「「え?」」」

 どうやらテルーさんはノーカンらしい。


 タナさんが復活した!


 そして運命のくじ引きが始まった。

「どうやら私のようだね」

 当たりを引いたのはクレアさんであった。


「ふぐあぁぉ」

 タナさんが突っ伏している、前もこの光景を見た気がする。

「うう、メイド長が・・・」

 複雑そうなリマさんとカーリンさん、クレアさんがいるとお馬鹿ができないからね。私的にはクレアさんと仲良しなのでむしろ嬉しいんだが。


 クレアさんはタナさんを見てため息をつく、

「はぁ、私が行ったら奥様の面倒を見る人間がいないから貴女が代わりに行って来なさい」

 まさかタナさんに権利を譲った!?クレアさん貴女はは本当に優しくて素晴らしい方です。


「ふぐ、ふが、グレアざま〜」

 汚い顔でクレアさんに抱きつく。その光景を見て思った、私はクレアさんの方が良かった。


 こうして醜い争いに終止符がうたれた。



 ちなみにアイネちゃんが薬草にしたと言う雑草は九割が雑草のままだった。一割成功でも凄い成長なんだけど落ち込んでいる。

 あとマキシムがいつも以上にモフモフになっていた。リマさんが必要以上に手入れしている。

 それらを見て、テルーさんが率直な一言を言っていたが、私はとても共感できた。


「リントワースって変な人ばっかりなんですか?」

 はい、私もそう思います。


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