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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
五章 サンクリス皇国編
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84.兄と弟と妹

 後日、私達は王宮にいた。


 王宮に入るには強力な魔法壁が施されており、隠蔽魔法も解除されてしまうので私は特製ポーチバッグの中で身を隠していた。


「ラヴィリス様、もう大丈夫ですよ」


 アイネちゃんの声でポーチから出る。ここは控え室で順番が来たら呼ばれるシステムらしい。

「どうですか?消えてますか?」

 確認の為、隠蔽魔法を使ってみる。

「大丈夫です、全く見えません」

 どうやら王宮全体を消失結界で覆っているが、宮内では魔法は使えるようだ。

 私は姿を消してアイネちゃんの肩に乗って移動する、初めて見る王宮は豪華絢爛で、まさに御伽噺に出てくる光景そのものであった。


 進んで行くと大きなホールに着くと、いわゆる上位貴族の方々が待ち構えており、その中にはガルファさんもいた。

 謹んで膝をつき礼をする。流石にここは貴族令嬢らしく板に付いている。

「よくぞ参ったリントワース卿、アイネ嬢も大きくなったな、見違えたぞ」

 王座に座る男性、彼がこの国の王ローデアル・ファン・クリストアだ。その横には妻のレイア王妃が座っている。その傍らに息子のエルヴィン第1王子とアリアス第2王子が立っており、その横に一際目を引く美少女が立っていた。

 おそらく彼女がリプリス王女だろう。リプリス王女の横にはまだ幼い女の子が立っており、リプリス姫と手を繋いでいた、情報通りだと彼女が末っ子のミュース姫だろう。


「此度の件、謹んでお受け致します」


 アイネちゃんが平伏してサンクリス皇国への派遣を了承した。

「感謝するぞリントワース卿、アイネ嬢、上手くいった際は最上の褒美をつかわす」

「ははっ」

 親子揃って頭を下げる。


 何事もなく謁見が終わったと思ったが、2人にはまだ残るように言い伝えられアイネちゃん達は控え室にいた。

「他の貴族からのやっかみがあるかと思った」

 私の言葉にホランドさんは笑いながら、

「今は値踏みってところでしょう。もし成功して褒美をもらうと一気に潰しに来るか取り込みに来るでしょうね」


 貴族って怖い。


「リントワース様こちらへどうぞ」

 案内の人に促されて応接室に通される。そこには国王一家が揃っていた。

「無理を言って悪かったなリントワース卿」

 あの場では言えなかった謝罪から入った。ホランドさんも畏って礼をする。

「リプリス」

 国王に促されリプリス王女が挨拶をする、見るからに可憐で気品溢れる美少女だ、

「お久しぶりですリプリス様、この度はご一緒させて頂きます。リントワース家長子アイネ・リントワースです」

 臣下から先に挨拶するのが通例らしい、

「アイネ様がご一緒していただき本当に心強く思います、よろしくお願いします」

 リプリス様も礼儀正しく挨拶をする、

「リプリス、臣下に礼は必要ない」

 いきなりエルヴィン王子が口を出してきた。

 困惑顔のリプリス様だが、ここでアリアス王子が反論する。

「臣下ではあるがアイネ嬢は薬師としてクリストアを代表しているのです、こちらから敬意を表するのは当然だと思いますが」


 一気に空気が冷たくなる、


「ふん、どちらが上かの線引きはするべきだがな」

 エルヴィン王子が挑発ともとれる発言をする

「上というのは年齢でしょうか?それとも能力でしょうか?」

 アリアス王子も皮肉で返す、このままじゃ収束がつかなくなるぞ?

「2人共いいかげんにしろ、今回の主役はリプリスとアイネ嬢だ、お前達は留守番だ」

 国王が2人を諫める。


「父上、此度の派遣に私も同行させて下さい。リプリスの補助もできるし、アイネ嬢とは学校でも一緒の友人です、是非協力させて下さい」

 アリアス王子が国王に願い出る、

「父上、アリアスは憂国の志士に繋がっている嫌疑がかかっている以上は自由にさせない方が良いですよ」

 アリアス王子がキッとエルヴィン王子を睨む、本当に仲が悪そうだ。


「パンっ!」


 突然アイネちゃんが手を叩く、一帯に気分を落ち着かせる花の香りが立ち込める。


「失礼しました。花魔法、華の香です」


 この場の怒気が冷めていくのがわかる。

「落ち着きましょう。私はリプリス様とお話しがしたいのですが?」

 アイネちゃんが真っ先に覚えた花魔法だ。心を落ち着かせることができるのでこういう場で使うと効果的面だ。


「2人共、頭を冷やしてこい」

 威圧ともとれる国王の迫力ある言葉に2人は渋々と部屋から出て行った。


「・・・あそこまで拗れていましたか」

 ホランドさんがため息をつく、

「あぁ、グランドルを一派から追い出した途端に増長してしまった。何度か諫めているのだがな」

 国王が深く息を吐く、

「アリアス様があそこまでお怒りになるのも初めて見ました」

 アイネちゃんも少々ショックのようだ。

「アリアスは少々理想が高いからな、馬鹿が上に立つことが許せないとか陰で口にしたらしい。本当かどうかは分からないがな」


 あれ?この国って情勢は安定しているんじゃなかった?


(どうやら私の情報のソースが古かったようです、先代の国王が非常に優秀だったため、とても栄えていたようです)


 カガミンも学校の授業で情報を新しくしたようで、最近はちょくちょく情報を訂正するようになってきた。

「アイネ!先程の魔法凄かった!」

 リプリス様がアイネちゃんに親しげに近づく、きっとこれが本来の姿なのだろう。

「うふふ、師匠のとっておきの魔法なんです。心を落ち着かせる事ができるから何度も助けてもらいました」

 微笑みながら答える、元々面識があったとは聞いていたが、仲は良好のようだ。


「ありがとうね、アイネさん私からもお礼を言わせて」

 レイア王妃がアイネちゃんに感謝している、この感じから息子2人が困った子なのだな。

「うふふ、今のやり取りを見ているとガルファ殿がおっしゃったことはあながち嘘ではありませんね」

 おや、レイア王妃がニコニコして口にする。ガルファさんがアイネちゃんの事を何か言ったのか?


「あ、あの、ガルファ殿がアイネの事をなんと?」

 ホランドさんが尋ねる。そりゃ気になるよね、娘が他者からどう評価されているかってね。


「ああ、あのガルファがアイネ嬢の事をこの国の宝になる人物だと言っておったわ!全員ビックリしておった、だが私もそれを確信したわ。人は宝、大切に育てないといけないな」

 しみじみと国王が口にする、ガルファさんは今回の派遣も反対してくれてたらしいからな、とても嬉しい事だ。


 あれ?

 アイネちゃん?



 大変だ、息をしていない!


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