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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
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73.魔王スライム戦 その1

 ヴェロニカさんが額に触れるとメアリーさんに魔力が流れ込んでいくのがわかる。


「お願い!生きて、生きたいと願って!」


 ヴェロニカさんが懸命に声をかける。


 メアリーさんはすでに私と触れ合っている、彼女ならきっとヴェロニカさんを受け入れられるはず。

 だから大丈夫!


 突然、メアリーさんが炎に包まれた。

・・・これは自分で自分を燃やして中のスライムを焼き尽くしている!?


「炎装魔法のスキルを授与しました。彼女は炎を纏います」

 ヴェロニカさんが説明する、どうやら火属性の派生系魔法のようだ。

「ゴホッ!ゲホッ!」

 中に入ったものを吐き出すようにメアリーさんが咳き込み意識を戻す。そして、ヴェロニカさんを見つめる、目には涙が浮かんでいる。


「ヴェロニカ様ありがとうございます。貴女様の声がしっかり聞こえました。生きろと言ってくださり、私は、私は、なんと感謝したらいいのか」

 ほぼ土下座気味に頭を下げて謝礼を言う。

「メアリーさん、貴女の強い意志があったからです、私はほんの少し力添えをしただけです」

 ヴェロニカさんの小さな手でメアリーさんの涙を拭う、メアリーさんは感無量で言葉が出ないようだ。


「ラヴィリス様!」

 ハズリムさんとリリネットさんが遅れてやって来た、

「リリ、今日から貴女の妹よ。私の力を分け与えたわ」

 ヴェロニカさんがリリネットさんにそう告げる、するとメアリーさんを抱きしめる。

「よく頑張った!よく生きてくれたわ!大丈夫よ私もヴェロニカも貴女を絶対に守るから」

 どうやら何があったか理解したようだ、優しく何度も声をかける。

「もしかしてリリネットさんも?」

「ええ、私もヴェロニカの従属よ」 

 やはりリリネットさんはヴェロニカさんの従属だったか、何かのスキルを授与しているとは思ったが。


「ところで、そこで死んでいるのが今回の首謀者か?」

 ハズリムさんがヴィランやその側近らの死体を見て話しかけてきた。

「そうみたいです、自分達を憂国の志士と名乗っていたけど、もう情報は得られそうにないですね」

 オルベア神聖同盟に反目しているようだが、やっている事は好きになれない。


「後で説明します、今はスライムよ」

 あれからスライムの行動に反応が無い、どこにも気配がないのだ。


『ラヴィー!こっち!』


 おおう、マーナがここにいるとは思わなかった。ハズリムさんが呼んだのか、

『この子の根っこの下がむず痒いって言ってるよ』

 大きな木の前でマーナが首を傾ける。

 私はマーナの言っていた大木に触れる、神樹魔法で木の声を聞く。

「ハズリムさん、この城の地下にブラックコアがあるのですか?」

 木の根の先に広い空間があるようだ、

「いえ、所在は聞いておりませぬ、内通者がいたようなのであえて聞きませんでした」


 ふと私はハズリムさんを見つめる。


 ある仮説が頭によぎる、ハズリムさんが[人間]から[樹木人]になった、これを進化というのではないのか?

 もしもスライムの狙いが養分としての餌ではなくブラックコアなのではないのだろうか?


「オルブさん!?ここにあるのは()()()ブラックコアなのですか!?」


 少し酷だが落ち込んでいるオルブさんに聞く、

「いえ、代々封印されているのは魔王核片というブラックコアと聞かされてまして」

 カガミン、魔王核片って何!?


(ハイ、魔神、魔王クラスの魔石の事を指します、総じて死後も巨大な魔力を保有しています。魔石の一種なのでブラックコアとは根本的には同じですが錬金物ではないので残存した思念が残っている可能性があります)


「それはどこにあるの!?もしかして地下ですか?」

 もしかしてスライムは魔王核片を求めて地下に潜って行ったのではないのか?

「城の地下深くに封印の間が」

 答えを聞く前に私は両手を地面に突く?


「皆さん離れて!」


「ガイアインパクト!!」


 ドーン!


 一瞬大地が振動する、大きな音と共に地下の空間が崩落して大穴が開く。

「くぅ、遅かった!」

 大きな後悔を口にする、

 スライムが魔王核片を取り込んでいた。

(気をつけて下さい、フューズスライムが進化します)

 禍々しい魔力が集約されていく、


ディザスタースライム

種族:スライム(魔王化)

所属:ウラノス台地

LV:100 HP:5530 MP:5604

力:87 魔力:442 体力:317 知力:16 速さ:45 運:23

スキル:

暗黒魔法、捕食、擬態、水属性魔法、悪食、

融和、物理無効化、魔法可変、溶解、分体化、

復元能力、



 くそ!魔王化してしまった。

「皆さん離れて下さい!カアコ、炎舞を!」

 ヴェロニカさんが先制攻撃をする、カアコと呼ばれた炎を纏った大きな鳥が次々と炎を放出していく、


「最終炎武!フレアバースト・ノヴァ!!」


 炎が集約され凄まじい光量の炎塊となる。それがスライムに目がけて放たれた。

 確かに今の状況は好都合だ、私が開けた大穴の底にスライムがいる。

「このまま釜焼きにしてやる、アースウォール!」

 ヴェロニカさんに呼応する様に私は穴の周りに土の壁を作る。

 巨大な火柱が天高く燃え上がる。


「これが女神の直系眷属の戦いなのか」

 ハズリムさんがその威力に驚愕している。

 一方、ヴェロニカさんがヘロヘロと上空から降りてきた、どうやらさっきの大魔法で魔力が枯渇したようだ。

「まだ、終わってません。すぐに準備をして下さい。私もすぐに回復します」

 ヴェロニカさんが地面に着くと皆に伝える、どうやら倒しきれなかったようだ。


「リリ、お願い」

 リリネットさんは腰の巾着袋から次々と美味しそうな料理を出す。その巾着袋はアイテムバッグのようだ、おそらく女神様からの最初のプレゼントか何かだろう。

 ヴェロニカさんはその料理を次々と口に運ぶ、小さな体に何故そんなに入る?


 私はその大食漢ぶりに驚愕していた。


 ヴェロニカさんと目が合う、すると恥ずかしそうに言い放つ、

「すいません、私は魔力を回復するのに何か食べないといけないんです」

 私は愕然とした、そんな魔力の回復方法があるの?

「あ、あの私と体型一緒くらいですが、どれだけでも食べれるのですか?」

 不思議そうな顔をされた!?

「どうでしょう?多分そうだと思いますけど」

 私は沢山食べられないうえに、太らないように食事制限されているのに!!


 そんなの不公平だ!


 私は地面に突っ伏した。こんなに悔しい思いは初めてだ!!



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