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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
70/499

70.仕組まれた情報

 ーーラヴィリスーー



 ささやかながら私は誕生日を祝ってもらった。


 何歳になったかは内緒にしておいた、1歳になったとは口が裂けてもいえない。


「ところで戦況はどうなっているんですか?」

 気になっていたから聞いてみた、ヘオリス領都から避難してからすでに1週間近く経っている。

 私に言っていいか悩んでいるようだが、必ず皆の言う事を聞きますと説得したら話してくれた。


「戦況は膠着しています、どうやらハズリム様がいらっしゃるから敵も攻めあぐねているようです」

 やはり剣聖の名前は伊達じゃない。

 私は敵の正体を知らないので何とも言えないが、スライムの動向の方も気になる。


 その時、急に外が騒がしくなる。

「こちらにアイネ・リントワース様はいらっしゃるか!?」

 早馬でやってきたヘオリス領兵が大声で呼ぶ。

「私がアイネ・リントワースです。どうかされましたか?」

 アイネちゃんがすぐに反応して前にでる。


 領兵から手紙のようなものを受け取っている、すぐに走って私達の元へ戻ってきた。

「ハズリム様からです、ラヴィリス様に」

 私は手紙を見せてもらう、内容は頭痛のしそうなモノだった。


[領城にブラックコアがあり、悪い呪術師がそれを狙っている、敵は呪術で操られた者達らしい]


[それで史上最悪な死霊使いを蘇らそうとしている。そんな事できるのか?]


[あとブラックコアをどう処理したらいいかわからんから助言求む]



 おいい、領城にブラックコアっておかしいだろ!そんな物を悪用されたら大変なことになってしまう。

(処理するなら学園のように封印をします、無効化するなら起動させて倒す必要がありますね)


 そんなもの封印一択です!


 私は改まって皆の方を見る・・・

「反対意見もあるかもしれませんが、私は領城に戻るべきだと思います」

 誰も何も言わない、

「リマさん、思うところは有ると思いますがよろしいですか?」

 

 複雑そうな顔をしている、彼女が私の事を1番心配していたから行かせたくないのだろう。

「分かっています。納得は出来かねますが止めることは出来ません。私はやれる事をさせてもらいます」

 本当に優しい方だ、何とかその気持ちに応えたい。

 そして全員から了承を得て再び領都に向けて出発することにした。




 ーーハズリムーー



 ややこしい事になった、操られた愚物の集まりかと思ったが時間をかけて攻めて来る。

 籠城している我々からしたらやっかい極まりない。

 援軍が未だに来ないのは、敵側の王都と分断させる作戦が上手くいった証拠だろう。


 物資に余裕はまだあるが過信は禁物だ。

「王都からの援軍です!」

 領兵が声を上げる、

 ラヴィリス様の策が効き始めたか?オルブ殿も安堵の表情をしている。

 ここは挟撃のチャンスだ!周囲を囲まれないように対策してきた価値が大きい。


「討って出るぞ!」

 オルブ殿が気勢をあげる。


 だが何か引っかかる、


「・・・行ってはならん!」

 思わず口に出してしまった。まさかとは思った、だが本能で感じてしまった。


 彼らは味方ではない。


 ずっと疑問を覚えていた、呪術師バルデンがいかに優秀な能力を持ち、呪術がどんなに凄くても何千もの人間を操ることができるのか?


 たかが盗賊団とは思えない程の練兵戦術を使ってきた、そこはラヴィリス様も同様に疑念を思っていたようだ。

 そしてあまりにスムーズに行った住民の避難。普通の盗賊なら人質に利用できる手駒を見逃さないはずだ。


 オルブ殿のみを狙っており、ブラックコアの事も知っている。


・・・何かがおかしい。


「門を開けてはならん!あれは敵だ!!」

 私は叫ぶが、時は遅く門は開いてしまった。

「ヴィラン様?」

 隣にいた領兵が唖然としている。

「ヴィランとは誰だ?」

「・・・オルブ様の・・・次子様です」


 オルブ殿の行動を把握し、ブラックコアについて知っている者。

 都合よく情報を操作でき、デマに信憑性を持たせる事ができる者。


 なる程な納得のいく答えだな、我が国でもあったが、生き急ぐ若者が力を求めてブラックコアを手にしようとしている。


・・・もしくは誰か扇動者がいるのか?


 急いでオルブ殿の元に行く。

「ヴィラン、何故ここにいる?どういう事だ!」

 呪術師バルデンなどオルブ殿が戦死した時の予定調和でしかない、おそらくデマなのだろう。


「父上、申し訳ありません。手荒なマネはしたくありません。城内の魔王核片、いやブラックコアの場所をお話し下さい」

 色々小細工しておいて何を言うか、

「愚かな、一体あんなものを何に使うつもりだ」

 私はすぐに間に割って入れるように身構えておく。

「分かっておられないのだ父上も兄上も!持てる力を何故眠らせる。いつでも使えるようにしなければ意味がないのだ!」

 オルブ殿の後ろ回っていた兵が剣を抜く、そのまま割って入り剣を振る。


「ぎゃっ!」

 悲鳴があがり、剣を握ったままの腕が宙を舞う。


「ハズリム殿」

 オルブ殿は我を取り戻し行動にうつす。

 撤退命令を出して城内に戻る、多少の被害は出たが最小限で踏み止まった。

「城内の兵は?」

「おそらく400程です、敵は合流含めて約2000!」

 およそ5倍か、

「オルブ殿、ブラックコアが何処にあるかは絶対に口にするな、たとえ私にもだ。おそらく間者が中に居る」

 小声で警告する、オルブ殿が無言で頷く。


 昔からトラブルに巻き込まれる体質であったが・・・

「はぁ、自分が嫌いになるな」

 つい愚痴が漏れてしまった。

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