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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
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69.ラヴィリスの誕生日。

 相変わらず私はセルリス様の胸に抱かれたままです。

『もう聞きたい事はない?』


 まだ色々あるけど、流石に私ばかりが質問責めは嫌かな、するとセルリス様は私をさらに強く抱きしめた。


『決まりとはいえ本当によく生き残ってくれたわ、ありがとうラヴィちゃん』

 急にセルリス様の声が湿っぽくなった。


「決まりとは?」

『私達はあなた達を含めてこの世界に介入してはいけないのよ。こうして誕生日になってようやく会えたの・・・』

 助けたくても助けられなかったって事か、そして私は今日が誕生日(この世界に来て1年)だったのね。


「あなた達ってことは、火の女神様の眷属者のヴェロニカさんも転生者なのですか?」

『そこは分からないわ、彼女らも自分のやり方でやっているからね。この世界の魂か、もしかしたらラヴィちゃんとは違う世界から魂を呼んだかもしれないし』


 それぞれの女神様が直系の眷属を作っているのか、私達の他にも水と風のスプライトがいるってことね。でも最初の試練で命を落とせば会えない可能性もあるわけか。


 どれだけの時間を話しただろう、セルリス様の母性本能がとてつもなく強いようで私を片時も離さなかった。


『・・・惜しいけどもう時間なのね』

 悲しそうに呟く。

「また、会えますか?」

 実は私もかなり名残惜しい。

『来年の誕生日も会いに来て、待ってるから』

・・・1年後、必ずまたここに来よう。


『そうだ誕生日プレゼントを用意してあるのよ!』

 ようやく抱擁から解放され、セルリス様は空間からゴソゴソと取り出した。

 私の前に出されたのは刀と薙刀であった。

「・・・これは?」

『貴女の世界で流行っていたでしょ?日本刀!刀って人の姿になって意思を持っているんでしょ!?』

 私には何の事か意味がわならない、セルリス様は鼻息荒く興奮気味に語り出す。

『私、どハマりしちゃってさ、プレゼントするならこれだろって!』


・・・あれ?女神というのは暇なのか?

『そっちの世界で私を祀る神社にあった神刀を拝借して来ちゃった』


 おいい、何やってんだよ、勝手に持って来るなよ!大迷惑だよ!


『まあまあ、私の神社に祀ってあったんだから私のものよ、ラヴィちゃんの方が優先!』


 あ、愛が重たい。


「でも私の身体じゃ使えないですよ?」

・・・刀と薙刀って両方とも大きすぎて私では到底扱えない。


『任せて!改造は得意なの!』


 あかん!カガミンの二の舞はあかん!

 私は刀を咄嗟にカガミンの中に入れた。


『え〜なんで〜』

 おそらく貴重な文化遺産だろう、やらせてはいけない!

「これは・・・一応貰っておきます」

 冷や汗が垂れる、私では使えないけどハズリムさんあたりなら使えるだろう。


『うー、なんか納得出来ない、じゃあこれもあげるよ』

 渡されたのは私の指に入る小さな指輪であった。

『本当はこれが本命なんだけど』


・・・だったら先にこれを出せよ。


『ラヴィちゃんはジオグラフィックバトンが好きみたいだからさ、この【キャスト】をあげるわ。使い方は鑑定で確認してね』


 ほう、これは良さげなものだ。ありがたく頂こう。


 そろそろ時間だな・・・私は自分からセルリス様の胸の中に入っていった、それに呼応するように優しく抱きしめられた。


「行ってまいりますお母様」

 私は光に包まれ、周囲に魔法陣が展開されていく。

「そう言えば私のいた前世の世界では何というお名前の神様でしたか?神社があるくらい有名な神様なんですよね?」


『うふふ、大昔、私は鈴鹿の立烏帽子【鈴鹿御前】と呼ばれていた時があったの、今の貴女にはあまり関係ないけどね』



 はにかんだ笑顔を最後に、気がつくと大礼拝堂の女神様の掌の上に立っていた。

 外を見ると明るくて、丸々24時間セルリス様と居たのか。


 ちらほら参拝する人もいる、私は掌の上で寝っ転がり貰ったプレゼントを鑑定する。

 まずは【キャスト】という指輪だ。


(マジックアイテム、大地のログを一体だけ記憶できる)


 おお、まさにジオグラフィックバトン専用だ!これがあれば()()が必要という欠点が解消出来るかもしれない。


 次は刀の方を鑑定だ。


(神刀・騒速丸(そはやまる) 悪鬼羅刹を討つ旧史伝説の神刀)


 そんなものを勝手に持って来るなよ!くう、見たくないけど薙刀の方も鑑定してみよう。


(神刀・大通連(だいつうれん) 騒速丸の夫婦刀、旧史伝説の神刀)


 私は身悶えて頭を抱える、前の世界の皆さん本当にごめんなさい・・・でももう返せないので貰っておきます。


(ラヴィリス様のそういう割り切りの良い所、本当に素敵です)

 いつものカガミンの合いの手が入る、うじうじ考えていてもしょうがないからね。



 おや、下に見覚えのある一団がやって来たのが見えた。

「わざわざ迎えに来たのか」

 私は掌から飛び立ちアイネちゃんのもとへ舞い降りた。


「ラヴィリス様!」

「ただ今戻りました、遅くなってすいません」

 なんだろう、凄く心配されている気がする。私が不思議そうな顔をしていると、頬を赤くしながら弁明してくる。


「いえ、もしかしたら帰って来なかったらと思って心配で」

 少し過保護すぎでは?

「いえ、別れ際が、その、まるで天に召されるようでして」

・・・確かにそんな風だった気がする、これは心配かけてしまったようだ。


 こういう時は、

「心配かけてごめんなさいね、久しぶりにお母様に会えたので甘えてきてしまいました」

 必殺のハニカミスマイルをくらえ、


「「・・・」」

 

 あれ?反応がないぞ、なんか全員顔が赤いぞ。

「ラヴィリス様、それはずるいです」

 なんで?アイネちゃんに意味不明なことを言われてしまった。


 帰り道、私はいつものバスケットの中に寝そべりながらキャストを眺めていた。あらかじめ性能をテストしたいな、

「ラヴィリス様、その指輪は?」

 リマさんが私が眺めていたキャストを見て聞いてきた。

「ええ、お母様から頂いた誕生日プレゼントです」

 何気なく答えるが反応がない、何か固まっているぞ?・・・あれ?


「ラ、ラヴィリス様の誕生日だったんですか?」

 リマさんが青ざめている。

「何故言ってくれなかったのです!」

 そして泣きだしてしまった。

「どっ、どうしましょう、早くお祝いを」

 アイネちゃんが狼狽えている。

「お祝いでパァとやりましょう!」

 マリアさんはノリノリですね。

「そういえば、お腹空きました」

 カーリンさんはブレない。

「わっ、私はどうすれば」

 メアリーさんまで加わらないで!


 たかが私なんかの誕生日に・・・


 本当に私は皆さんと出会えて幸せです。


大通連は[だいとうれん]とも読めるのですが、

ここでは[だいつうれん]に統一します。

本来、大通連は大刀との事ですがこの世界では薙刀にします。


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