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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
62/499

62.竜狩のヴェロニカ

「ゔっ!」

「マズッ!」

「苦っ!」

「ぐっ!」


 いきなり汚い嗚咽で始まってしまった。


 メイド3人と剣聖1人、彼らのために胃腸薬を作ってあげたのに酷い反応をされた。


「ギャン!」


 ビックリして振り返る、なぜかマキシムが泡吹いて倒れていた。

 どうやら床にこぼれた胃腸薬を舐めてしまったらしく、皆が飲んでいたから自分も欲しかったみたいだ。本当にアホな子だ。まぁ、体には良いものだから大丈夫だろう。


 朝から変なトラブルが起こってしまったが、私達は無事出発することができた、今回はマリアさんとカーリンさんは留守番です。

 カーリンさんは倒れたマキシムの介護を頼みました。

 マリアさんは個人的にあのお店はもう出禁です。


 大通りを抜け、レストラン「フレイア」についた。何か普通に歩いて来たけど、もう何も言わない。

 決して馬車が嫌いというわけではなく、この人達が健脚なのだろう、それで納得した。そういう眼差しでアイネちゃんを見ると極上のスマイルを返してくれた。

 この子は何も分かっていない。


 受付けに行くと前回と同じ個室を用意してくれてた。

 私は部屋に入らず、少し冒険してくると言って廊下に残った。


「さてと、目的地は厨房かな?どう、カガミン」

(そうですね、リリネット料理長だけ専用の個室厨房があるようですね、案内します)


 私はカガミンのナビに従い進むと、専用の厨房と思われる場所についた。

「おや、あそこの高い窓から見えるかな?」

 そこから中が覗くことができた。

 中ではリリネットさんが集中して鍋の中を見ていた。

 

・・・少し窓が空いているので匂いが漏れてくる、これは間違いなく美味しいやつだ!


「ヴェロニカ、どう?いい感じかな?」

 おっと、いきなり本命が登場した。


(おそらく火の女神様の眷属でしょう)


 ヴェロニカと呼ばれた妖精は赤い髪のポニーテールが印象的な容姿をしている。

 私と同じように異国風のドレスを着ており、少々肌の露出が多い。背中に羽が生えておらず魔力の羽で飛んでいるので私と同じスプライトなんだろう。

「私と同じ転生者かな?」


(可能性はありますが、本人が申し出なければ打ち明ける必要はないと思います)


「そうだね、私もそれでいいと思う」

 鍋の蓋を開けると少し漏れていた良い匂いが一気に充満した。

「すごい、いい出来だよ!美味しそう!!」

 ヴェロニカさんがリリネットさんをベタ褒めする。


(ラヴィリス様とアイネさんのようですね)

 カガミンが鏡らしくない事を言う。

(鏡らしいとは難しい事を言いますね)

 はははは、聞こえていたか。


 すると廊下から1人の壮麗な男性がやってきた。年は50才くらいか、肌艶がよくて体格も良い、身嗜みからかなりの高貴な人物のようだ。

「あら、将軍。どうですか味見してみません?」

 将軍と呼ばれた男性はとても嬉しそうだ、すぐに勧められたものを口に運んだ。

「なんだこれは、美味い!これが古代竜なのか?」

 どうやらかなりの美食家なのだろう、ラプトルの肉を食べてなにやらウンチクをたれている。

「剣聖様に気に入ってもらえれば嬉しいですが」

 おっと狙いはハズリムさんですか、いい趣味してますな。

「まぁ、私の姿を見て何と言うかな」

 ヴェロニカさんも絡んでいるようだ、

「まずは、私から打ち明けます。将軍もそれまで待っていて下さい」

 リリネットさんが顔を強張らせている。

「そろそろ行ってきます」

 そう言うと厨房から出て行った。


(どうされます?何やら深刻そうですが)


・・・何か事情があるのだろう、私も急いで戻ることにする。



 私が戻るとすでに配膳が始まっていた、

「古代竜のシチューです」

 私は隠蔽してアイネちゃんの肩に乗る。

「お帰りなさいませラヴィリス様」

 小声で喋りかけてくる、慣れてきたのか姿を消しているのに感覚だけで気付くようになっていた。

 目の前には大きな肉がゴロッと入ったシチューが配膳されており、まさしく先程の鍋の中身なのがわかる。

 私はリリネットさんを観察する、明らかにアイネちゃんやリマさんがいる事を疎ましく思っている。


((少しやっかい事が起こるかもしれませんね))


 小声でアイネちゃんに囁く、私の口調から察したのか唾をゴクリと飲み込んだ。


((まずは食べましょう))


 そう促すと目の前にある極上の料理を一口食べた。アイネちゃんの目が大きくなる、非常に美味いようだ。膝の上に移動した私にもこっそりお裾分けしてくれた。

 うっ美味い、これはいわゆる凄いヤツだ。自分の語彙力が低くて泣けてくる。

「これは素晴らしい、このような肉は初めて食べた。古代竜とはこれ程までに美味とは」

 ハズリムさんも感動したらしく手放しでリリネットさんを称賛する。

「ありがとうございます、とても良い経験をさせていただきました」

 称賛を受け頭を下げる。顔が強張っている、明らかに何か言いたげだが切り出せないようだ。


・・・実直でいい子なんだろう。


「どうかされたかな?」

 ハズリムさんも気付いていたのか優しく聞いてみた。

「えっと、あの」

 アイネちゃん達がいるのが気になるようだ。

 私は隠蔽を解いてリリネットさんの前に姿を見せた。

「ラヴィリス様?」

 アイネちゃんが私の思わぬ行動に驚いている、皆も私に注目している。

 リリネットさんも大きく見開いて私を見ている。


「はじめまして竜狩のヴェロニカ様」


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