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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
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59.その出会いは突然に。

 料理長リリネットさんはウォルベル王国に突如現れた流れの天才料理人だ。その腕を見込まれ、この若さで料理長に抜擢されたという。

 ドラゴンの肉を捌いているのも彼女で、あの細腕にどこにそんな力があるのだろうか。


 私が興味津々で彼女を観察していたが、途中で我に返りハズリムさん肩に乗って耳元で囁いた。

「うひゃうっ」

 突然ハズリムさんが奇声を上げやがった、私は思いっきり耳を引っ張った。


((変な声だすな!))

 私の声はそんなに不快か!


「すまんすまん。突然、耳にふわっと息がかかったからついな」

 その絵面で耳が敏感とか言うなよ!


((例の件、言ってくださいよ))


「おぉ、そうであった。テーブルの下にある私のバッグに例の物を入れておいてくれ」

((了解しました。生なので早めに切り出して下さいね))


「あ〜、すまんな料理長殿」

 先程奇声をあげてしまったので、変なおっさん認定されてしまったのだろう、物凄く警戒されている。


「いかがいたしました?」

 流石だ、営業スマイルを崩さない。

「実はな先日、あるルートで古代竜の肉を入手してな。良かったら見てもらいたいのだがダメかの?」


「ええっ!?古代竜ですか!?」


 凄まじい食いつきだ!

 ハズリムさんはバッグの中に入っているラプトルの肩肉塊を見せた。あの時のラプトルはアトラスに真っ二つにされ、さらに細かく切り分けしてカガミンの中で保管しておいたのだ。


「・・・・」

 真剣な表情だ、ドキドキして観察している。


((これ、ラプトルよ、本物だ!))


 その時、私は聞こえてしまった、リリネットさんの耳元から聞こえる微かな囁きを。


・・・これは・・もしかして妖精?


 注意深く観察するが、隠蔽能力か?全く分からない、阻害能力もかかってるのか?

 でもラプトルと言う個体名を知っていた。ただの妖精ではないはずだ。


(・・・上位妖精の可能性がありますね)

 カガミンも反応する、上位の妖精ということは私と同じスプライトということ?


「失礼ですが、貴方様は?」

 リリネットさんが姿勢を正して聞いてくる。


 ハズリムさんが少し困っている、

「・・・単なる無職・・・ダヨ?」

 この人、物凄く言い訳が下手くそだ!


「あの、この方はクリストア王国のグランドル元公爵様です。病気の療治のために、お忍びでこの国に来てます」

 アイネちゃんが大慌てでフォローを入れる。

「クリストアのグランドル公爵?もっ、もしかして剣聖様?」

 おいおい、ハズリムさん隣国でも有名かよ!

「いやいや、元公爵で元剣聖だよ、すでに引退しているし、療治のためにお忍びで来ているから、あまり騒ぎにされても困るのだ」

 ハズリムさんは観念して正体を明かした。


「もしかして剣聖様と言うことは、この古代竜を討伐したと言うことですか!?」

 食いつきがすごいな、リリネットさんが迫ってくる、


「・・・違ウヨ、金にもの言わせて買いましたヨ」


 嘘が下手くそだな!


 アイネちゃんがプルプル震えている、いつ吹き出してもおかしくないよ。


「・・・・」


 考え込むリリネットさん、ラプトルの肉をじっと見ている。

「これを食べることはできないか?」

 ハズリムさんが本来の目的を思い出したようで尋ねる。

「いっ、いえ、これ程のものを初めて見たので。もし、よろしければお預かりしてもよろしいでしょうか?」

 どうやらダメもとでリリネットさんが預かっても良いか聞いてきた、

「ああ、かまわんよ、まだ手持ちに沢山あるから、そちらはお譲りしよう」


 あぁ、ハズリムさん、また墓穴を掘ったよ。


「もしかして、丸ごと一体あるのですか!?」

 うふふ、そうなりますよね。お馬鹿さん!


「ナイヨ、ソンナノモノ」


 片言にしてもバレバレだよ!変顔すんな!!


「・・・すいません、失礼いたしました。極秘の事でしょうから聞くのは野暮でした」

 リリネットさんは空気を読める人のようだ。最近、私の周りがポンコツばかりだから、その気遣いがありがたい。

「分かりました、お預かりして色々試してみます、失礼ですが何時まで王都に滞在してますか?」


 この質問に関してはリマさんが代わりに答える。

「王都を立つのは3日後です」


「うえぇ〜!?そんなにも!?」


 今度はアイネちゃんが奇声をあげる。そんなに早く女神様の大神殿に行きたいのか?

「・・・申し訳ありません」

 アイネちゃんは顔を真っ赤にさせて謝罪する、少しは反省しなさい!

「それなら、2日後に是非当店にお寄り下さい、料理人の誇りをもってこちらを調理させてもらいます」

 本当は食べれるかどうかを知りたかっただけなのに、何故か大ごとになってしまった。


 色々あったが私達は食事を終え、お店を出ることにした。

「お、お嬢様、少々お待ちを、」

 意気揚々とホテルに帰ろうとしたがカーリンさんに呼び止められた。

「マリアが、その、」

 そこには酔い潰れたマリアさんが大地と嬉しそうにキスをしていた。貴女も今日から地の女神様の信者だ。

「さあ、皆さん行きますよ」

 リマさんが無慈悲な見捨てる宣言をする。

「だ、だめよ、こんなところで寝たら風邪ひくよ」

 アイネちゃんは今日もいい子です。


 結局ハズリムさんがおぶってホテルに帰ったよ。途中でマリアさんがリバースしてしまい、ハズリムさんが悲惨なことになったがそこは気にしない。

 そうして慌ただしい1日がようやく終わった。


 とても疲れたよ。



 ーー???ーーー


「リリッ!早く、早く見せて!」

 目の前にはあの憎っくき恐竜の肩肉が横たわっていた。


「ねえ!本当に本物の古代竜の肉なの?」

 リリが肉を見て疑いつつも聞いてきた。

「間違いないわ!しかもムカつくラプトルの肉よ!」

 相棒の「肉切丸」の鑑定でもラプトルの肉と出ている。


「こりゃ、料理人としての腕がなりますな!」

 リリがやる気に満ちている、

「まずは味見ね!!」

 それが本音だろ!困った食いしん坊だ。


「しっかし、恐竜を狩るなんて、剣聖ってとんでもないね」

「単なる無職のおっさんて言ってたよ」

 そんなの真に受けるなよ。実際に対峙したことから、これがどれだけ凄いことか分かっていないのだろう。


・・・だけど彼ならやれるかもしれない、一筋の光がさした気分だ。


「剣聖ハズリム、彼なら力になってくれるかもしれない」



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