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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
58/499

58.ウォルベル王国にて

 リントワースから思っていた以上に近く、ウォルベル王都にあるクリストア王国領事館についたのは2日後であった。


 女神様の恩恵の国ということもあり4姉妹女神はここでは大人気だ。

 この国では次女セルリス様は人気はなんと第2位!農家さんや土木関係者からの信仰が厚くて信者は多いらしい。

 1番人気は末っ子の火の女神フレア様で、商売繁盛、火の用心、家内安全もかねているらしく、商人や平民、貴族までもが信仰しているようだ。

 3位は長女の水の女神エリエス様、4位は三女の風の女神フィオル様のようだ。

 ただここでの人気は信者数の話であって、セルリス様は信者は多いけど懐は寂しいらしく、教会などはとても質素であった。


「目的地は地の女神様の総本山ロパゲルスス大神殿ですね」

 領事館の案内役のベスリットさん、実はメアリーさんの親戚のお兄さんでした。事前にメアリーさんが話を通してくれたみたいで、すぐに欲しい情報を提供してくれた。

「南東の高地にあるんですが、山を半分くり抜いた巨大な神殿があるんです、そりゃもう壮観で一見の価値ありますよ。まさに知る人ぞ知る名所です!」

 ベスリットさんの説明が上手いので皆んなが聞き入ってしまった、アイネちゃんなんかはすでに目が輝いており、早く行こうと皆に急かし始めていた。

 ただ残念ながらすぐに出発というわけにもいかず、数日はここウォルベル王都に滞在することになる。


 今回はハズリムさんが同行しているからなのか何故か護衛がいない、と言うか全員拒否したらしい。世話役として駄メイドのマリアさんとエキゾティックメイドのカーリンさんが同行している。

 この同行メイドの選抜に対してはかなり揉めたようでくじ引きの結果この2人になったが、手芸メイドのタナさんが悔しくて突っ伏してガチ泣きしてた、私はもちろんドン引きしたよ。

 エキゾティックメイドのカーリンさんは異国の武術を嗜んでおり護衛としても一流らしく、そのおかげで人手を減らす事ができたらしい。


 そんな面々を引き連れて予約してあるホテルに向かう、どうやらここで友達のメアリーさんと会う約束をしているようだ。

・・・アイネちゃんは友達との約束をブッチして出発しようとしてたのか、本当に困った子だ。


「メアリー!」

「アイネ!」

 2人はこの前会ったのに久しぶりに会ったような抱擁を交わしている。

・・・しかし、その若々しい再会をぶち壊す人達がいた。


「いいっすね、美少女同士のガチ百合!」

 駄メイドのマリアさん、全てが台無しです。


「本当に何食べたらあんなに大きく、」

 リマさん気にしてたの!?


「お腹が空きました」

 エキゾティックメイドのカーリンさん、どうやら腹ペコキャラのようだ。


「ドラゴン肉はまだか?」

 ハズリムさんも何を言っているんだ!



「ええっ!?もしかしてグランドル様?なんで!?」

 メアリーさんがハズリムさんに気づいた、今の彼は威厳も何もない単なるおっさんですから。

「ははは、メアリー・フルート嬢よ、私はすでに引退した身で此度は湯治もかねてリントワースの食客をしている、気楽な隠居爺だからそんなに畏まらないでくれ」

 人懐っこい陽気な性格はこういう時は便利だな、メアリーさんの緊張が一気にほぐれた。

 こうして私達は噂のレストランに向かうため馬車に乗り込んだ。


「そう言えばハズリムさん、この前の古代竜って食べれるのでしょうか?」

 私は恐竜が食べれるのか疑問に思っていたのだ。ドラゴンを、食べるならもしかして恐竜もいけるんじゃないだろうか?

「どうだろうかな?まずお目にかからない代物だからな、聞いてみたらどうかな?」

 ドラゴンの肉が捌けるレストランなら恐竜もいけるんじゃないか?

「鏡の中に古代竜が入っているので後で出します、ハズリムさんが聞いてくれませんか?」

「おぉっ、それはいい!クリストア王国では出せなかったが外国なら出所も問われないだろう」

 私達2人が悪巧みしている間に、馬車は例のレストランに着いてしまった。



 レストラン「フレイア」


 大通りに面した大人気高級レストランだ。高級レストランにかかわらずかなり賑わっている。

「予約をとってあるのでどうぞ」

 メアリーさんはやる気満々だ、案内されたのは広い個室で高級感が半端ない。

 使用人の分もテーブルが用意されており、まさかのメイド達も高級料理を食べれるという奮発ぶりだ。

 メアリーさんはやる気だ!本気で接待をしようとしている。


 私はとりあえず隠れて食べれるテーブルに着くためメイド席にやってきた。

 マリアさんは悪戯っ子なので断り、カーリンさんは腹ペコなのでおこぼれがなさそうだ。本当は素直で優しく甘々なアイネちゃんが1番良いが、メアリーさんと同席なので無理だ。

 やはりリマさんしかないが、最近は太るからと食事に厳しく、お腹一杯食べさせてくれないのだ。まあ、残りはハズリムさんしかいないので消去法でリマさんしかないんだが。


「ドラゴン肉のステーキです」

 給仕さんが次々と料理を運んでくる。


 マリアさん、ご飯食べずにお酒をぐいぐい呑んでいるよ?カーリンさんに貴女の料理食べられてるけどいいの?ヤバイなリントワースのメイド達、やりたい放題だ。


 私も小さく切ってくれた肉を食べてみる。

「美味い!」

 思わず声をあげてしまった。

 リマさんも一口食べて目を丸している。


 この小さい身体になって初めておかわりした、と言っても微々たるものだが。

 久しぶりにお腹一杯になったので、私はハズリムさんの方を見てみる。ハズリムさんもこの肉に感動したようで一心不乱にバクバク食べている。


 そして・・・


 デザートが出るなんて聞いてない!

 私のお腹はパンパンだ!お肉をセーブしておけば良かった!

 美味しそうなケーキがテーブルに置いてあるが、私のお腹は限界でもう入らない。甘い食べ物は別腹説は嘘だよ!

 リマさんが一口食べて恍惚の表情をしている。私の悔しさが限界突破だ!


 マリアさんはすでに出来上がってしまっている、お酒しか呑んでないよこの人!想像以上に駄目人間だよ!!

 カーリンさんは丸々2人前を食べてるよ、この人どんだけ食べるんだよ!


 そして私はさっきから延々とツッコミをしている気がする。


「失礼します」

 おや、調理服を着た人が入ってきた、

「リリネット料理長。大変美味しい料理ありがとうございます」

 メアリーさんがお礼を言ったのは、この料理を作ってくれた料理長のようだ。

 礼儀正しく頭を下げる料理長、その姿をよく見てみる。


 思ったより若く、凛とした女性であった。



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