表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
四章 ウォルベル王国編
54/499

54.受けつけない人

ウォルベル王国編スタートです。

 学園が突然休みになってしまった。

 寮も閉鎖になってしまった。

 悪いのは例の2人組で、私達は何も悪くありません。


 ホランドさんからの報告で私は小物っぽい言い訳をしたが、どうも耳を貸してくれません。

 ここはリントワース領館です。あの事件のせいで学園はだいぶ早い冬休暇に入るそうです。おかげで学生寮が閉鎖になり行く所がないのでここにいます。


 さてと、なぜでしょう?私は今、ウェディングドレスを着てます。

 リントワース領から呼ばれてやってきた手芸メイドのタナさんが、真っ先に私のもとにやって来て、

「是非これを着てください!」

 私がお礼を言う前に言われてしまったよ。

・・・目が血走ってて怖かった。


 だからついこう返事をしちゃったよ、

「は、はい。わかりました。直ぐ着替えます」

てね。


 前世の時に結婚式で着たウェディングドレスより全然豪華でびっくりしたよ。

 そして私を見たタナさんが鼻血を出して倒れてしまい大騒ぎになってしまった。


 そして冒頭に戻る、

「ところで、ラヴィリス様はどちらのどなたとご結婚なされるのかな?すぐに祝賀会をひらかなくては」

 嫌味なの?貴族ジョークなのかな?

「じゃあ、ホランドさんで、」

「お断り願おう、いくつ心臓があっても足りなくなりそうだ!」

 即フラれた?酷い!

「今のまま、娘の先生と生徒の父という関係が1番ベストだと思う」

 どうやら私は火遊びポジションらしい、


「ベルリアル公爵様は帰られましたよ」

 私達の寸劇を止めたのはアイネちゃんであった。

 私を見るとポカンとしていたが、

「ラッ、ラヴィリス様!?いったいどなたとご結婚なされるのですかっ!?」

 この子の頭は大丈夫か!?ホランドさんも心配な目で娘を見ているよ!狼狽るアイネちゃんを無視して聞いてみた、

「ベルリアル公爵が来てたんですか」

 ベルリアル公爵はアイネちゃんのクラスメイトのドリル子ちゃんことミリアリアさんのお爺様らしい。

「私が派閥を離脱した途端に来るとは思わなかったよ」


 そう、ホランドさんは今回の件で現派閥を離脱し、中立派として再デビューしたのだ、

「ベルリアル公爵様は私達と同じ東部貴族連の長で中庸派の方ですよね、なぜ今更お父様を勧誘なさるのですか?」

 立ち直ったアイネちゃんが首を傾けて質問する。


「まあ、なんだ、中庸派という名前の国王派だ」

 ものは言いようですな。


「宮内に入って王国のための役職につけということだ、政務大臣のポジションをやれと言われた」

「あら?それは出世なのでは?」

 つい思ったことを口走ってしまった。

「人によってはな、重要な役職につくと王都に滞在してなければならない。自領の内政を任せられる兄弟や親族がいれば良いが、残念なことにリントワースには私しかいない。私の姉と妹は他所に嫁いでいるからな」

 つまり自領の内政が疎かになってしまう訳か。

「なんとかそれを理由に保留にしてもらったよ。遠からずその任命の打診は断れなくなるがね」

 貴族社会も大変ですな。


 さてとアイネちゃんが来たので、そろそろグランドル家に一回行こうと思っていた。

「ホランドさん、今からグランドル邸に行こうと思うんですけど、よろしいかしら?」

 もう敵対関係ではないと思うが、一応は確認しておこう、

「ああ、ハズリム様の治療をアイネがしたことになっているから堂々と表門から入って下さい」

 OK、じゃあ行きましょう。


 私はこの豪華絢爛なドレスからいつものに着替えてから、アイネちゃんとリマさんに合流してグランドル邸に向かった。

 マキシムは散歩と思ったのか、尻尾をリズミカルにフリフリしている。

 彼はリントワース家に来て以来、メイド達によって極上のモフモフ状態が常にキープされている。まさに狼から飼い犬にクラスチェンジした残念な男だ、今も私と同じタナさん作の可愛らしいドレスを着ているから見た目からして男の娘かな。


 上機嫌なマキシムを連れ、私はリマさんのエプロンのポケットに入って大通りを眺めていた。

「おおっ、アイネ様ご機嫌よう!」

 おや、アイネちゃんに話しかけてきたのは冒険者風の格好をした女の子だ。よく見ると耳が尖っている、いわゆるエルフと呼ばれる人だ。

「もう、テルー、私のことは様付けしないでくださいよ、友達なんですから」

 テルーと呼ばれた女の子はスラっとした体型に長い髪を後ろでまとめた健康的な女の子だ。


「いやいや、ここは学校じゃないんだからちゃんとしないと!」

 冗談を言い合えるような仲なのだろう、

「これから狩りですか?」

 テルーさんの格好を見てアイネちゃんが聞いてみた、

「そうだよ、学校が休みになったから仕事しなくちゃいけないわけ、寮が閉鎖したから生活費をバリバリ稼がなきゃ!」

 貴族ばかりじゃなくて一般の人もいるわけだから大変なんだな、本当にあの馬鹿2人は何てことをしてくれたんだ!


 なんかごめんね、私のせいじゃないけど。


「まあ、おかげでBランクパーティーのアイアンベルトにスポット参加できるんだけどね」

 ほう、王都のBランク冒険者か中々凄そうだな、

「確かアイアンベルトってかなり有名だよね、凄い!がんばって!」

 嬉しそうに意気揚々と去っていくテルーさんを見送ってから話してくれた、


 前に話していた友達というのが、彼女のことらしい。

 一般の人なのだがかなりの実力者で、学園でも随一の風魔法の使い手なのだと。故郷が遠いので寮閉鎖中は冒険者ギルドに世話になるらしく、アイネちゃんも困ったら言って欲しいと伝えていた。


「アリアス殿下がおっしゃっていたんです、優秀な人材に身分も人種も関係ないって」


・・・あの第二王子か。


「だから、テルーの様な方がのびのびできるんです」

 確かに立派な事なんだろうけど、何か含みがありそうで信用できなさそうなんだよね。

 おっとそろそろ行かないと遅くなってしまう。


 グランドル邸につくと、門の前に豪華な馬車が停車していた。そう言えば私達は普通に歩いてきたけど・・・貴族は普通、馬車で移動するんだよね?

「えっと、マキシムの散歩も兼ねてましたから」

 本当か?どうもこの子は時々貴族らしくない行動をとる。常日頃、馬車を待っている時間が勿体ないと愚痴る時もあるから今日も怪しいところだ。


 おっとそう思っていると、馬車の持ち主が屋敷から出てきた。取り巻きを何人か連れており、1人を囲うように歩いている。

「んっ?君は、」

 こちらに気付き近づいてきた。

「アイネ・リントワース嬢じゃないか?」

 アイネちゃんの知り合い?

「ご無沙汰してますエルヴィン王太子殿下、」

 アイネちゃんが貴族モードで丁寧に挨拶する。王太子殿下という事はこの国の第一王子か!?

「・・・なぜお供1人だけ連れて道を歩いている?君は貴族なんだからその吟持をしっかり顕示してもらわないと困るよ」


 ああ・・・これはダメな人かも。


「はい、申し訳ありません、以後気を付けます」

 こっちは悪い事してないのにね。何で謝らなくてはならないんだろう。

「今日は貴族としてではなく、薬師としてグランドル様の元へ参ったので気が回っておりませんでした」

 そう言い訳を残して屋敷の中に向かう、すると後ろから声がかかる。

「何ならその薬師として私の方から医科に推薦してあげようか?」


・・・やっぱ私はダメだこの人。


「ありがとうございます、ただ私は未だ学生の身なので学業を優先するように言いつけられてます」

 そう言うと頭を下げ、振り返らず早足で中に入った。


「・・・はぁぁ〜」


 アイネちゃんが大きくため息をつく。

「あれは、大変ね、」

 私がつい本音を漏らしてしまった。

「はい、とてもキツいです」

 アイネちゃんの本音もただ漏れである。

「噂には聞いてましたが、本物の貴族至上主義者なのですね、派閥間争いの直接的原因だと聞いてますが、」

 リマさんも困惑顔だ。


「今回の件で我々は派閥を抜ける事がきまったよ」

 前方からイケボがする、おそらく王子を見送りに来ていたガルファさんに私達の会話を聞かれてしまった。

「もしかして、王太子派を抜けるのですか?」

 アイネちゃんが困惑顔で尋ねる。

「元々、私の親と折り合いが悪かったからな、今日はわさわざクビ宣告を言い渡しにきたのさ」

 うんざりした顔でとんでもないことを言った。


・・・おいおい、あんなのが王太子でこの国は大丈夫なのか?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ