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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
53/499

53.窓から見える景色。

 ーーオルベア神聖同盟ーー



 私の名前はシャトレア・アルテアナ。光神オルテシア様より神託を受け聖女として選ばれた。

 教会からは、聖女として恥ずかしくないように礼儀作法等を徹底的に学ばされた、だからここ何年も聖地オルベア聖皇堂から出ていない。


「いつもと同じ窓からの景色だ」

 美しい庭園は自分だけしか味わえない味気ない景色だ。


 ホーリズ枢機卿がもうすぐ私の存在を公表するとおっしゃった。初めての公務も決まった、海を渡った東方大陸の大国クリストア王国、その建国100年祭の迎賓として同行し聖女再来の宣言をすることらしい。


 どんな所だろう?教会の聖皇堂から出るのは何年ぶりだし、外国なんて初めてだ。


 だがその初めての公務が暗礁に乗り上げた、クリストア王国に凶悪な魔獣が出現したという。

 名を「バニッシュ」と言う姿が見えない透明な怪物だ。さらには魔獣の軍団を率いて神の尖兵を屠ったという。

 話を聞いただけで震えがくる。もしかしたら魔神顕現の前兆でその配下の魔王ではないかと噂されている。


 もしかしたら公務は中止になるかと思われたが、新たな聖女の誕生は魔の者に対して牽制になる。ということから公表を含めて公務は予定通り行なわれるということになった。

 複雑な気分だった。もし本当に魔王に襲われたら、自分に何ができるのだろうか?肩書きだけの聖女の私に期待されても何もできない。


 不安しかない。


 ここに来る前の自分は教会孤児であった。


 またあそこに戻るのか?

 もし失敗したら生贄として殺されるかもしれない。


 誰にも打ち明けることが出来ず、1人庭園で悩むことが多くなった。


 でもその日は違った。


 噴水を見つめながら物思いにふけっていた、そこに何かが浮かんでいたのだ。

 すぐに噴水から出してあげる、それは小さな小さな妖精であった。

 誰にも見られていない事を確認すると、服の中に隠して自分の部屋に飛び込んだ。


 翌日、彼女が目を覚ました。

 非常に怯えており、前にいた場所でとても酷い目にあったようだ。

 私は彼女の世話をして、ここは安全だと言い聞かせた。次第に心を開いてくれると会話をぽつぽつしてくれるようになった。


「水の女神エリエス様の直系眷属シャルロッテと申します」


 初めての自己紹介は衝撃的であった。

 女神様の御使いなど本当に実在したとは思わなかったし、彼女が物語の世界でしか聞いた事もない深淵の地獄と呼ばれる場所【奈落】からやってきたと聞いたのも驚きだった。



 シャルロッテ様は美しかった。

 直系の御使いという事は水の女神エリエス様の子供ということ、つまりシャルロッテ様の姿はまさに女神エリエス様の現し身そのものなんだろう。

 ストレートの青みがかった長い銀髪、澄み渡る美しいお声、凛とした容姿に私は心を奪われた。

 とても博識で色々なことを教えてくれた、歌が大好きで私にもいっぱい歌を歌ってくれた。


 同じ窓からの景色でも、シャルロッテ様がいてくれるだけで毎日が幸せで溢れていた。


 今度はシャルロッテ様が私に魔法を教えてくれた。驚いたことに治癒魔法しか使えない私が【声霊魔法】という聞いたこともない魔法が使えるようになってしまった。これがあれば何とかなると言われた。


 私の不安な気持ちを解きほどくように毎日優しく微笑んでくれる。


「シャトレア、私に今日があるのは貴女のおかげよ、ありがとう」


 いつもお持ちしている小さな傘で口元を隠して恥ずかしそうに言ってくださった。

 私の方こそ今が幸せなのは貴女のおかげです。


 そしてある日、ついにシャルロッテ様が私の事を尋ねられた。

 私がここで聖女と呼ばれており、世界の秩序を守るために祈りを捧げ続けていること全て打ち明けた。

 シャルロッテ様は悲しそうな顔をされていた。


 私の頬を優しく撫でてくれる、自然と涙が溢れてきた。

「何があってもシャトレアは私が守るから、何があっても私は貴女の味方です」

 シャルロッテ様の瞳にも涙が溢れていた。


 でも、ここは光神オルテシア様の教会聖地、もしこの事が誰かに知られたらシャルロッテ様がどうなるのか?考えたら恐怖で体が震えてくる。

 シャルロッテ様はそんな事をつゆ知らず、私に優しく微笑んでくださる。


 私はシャルロッテ様を絶対に守りたい。


「私こそシャルロッテ様を必ず守ります」

 小さく呟く、そして心に強く決意する。



 私達の出会いは2人だけの秘密です。



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