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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
51/499

51.声よ、届け!!

「グルァァァァ!!」

 ラプトルが火炎弾を乱発する!


「ハズリムさん!貴方は樹木人なので火に弱いから気をつけて!」

 え?・・まぁ、怖い!ハズリムさんの左腕はすでに燃えていた。だけど自分で腕を切断して新しい腕を生やしているではありませんか!?


 順応性が高すぎません?


「はっはっはっ、そういう事はもっと早く言って下され」

 自分が原因とは言え、ハズリムさんがどんどん人間離れしていく。


 うっ!シェルさんの視線が痛い!!


(気をつけて下さい、ラプトルの様子が変です)


「もしかして生存本能!?」


(そうです、ようやくここまで追い詰めました、ここからが正念場です)


 1/5まで体力が減ると発動するスキル【生存本能】、能力が1.5倍になり体力が自動で回復していく。だけど今は猛毒状態だから回復は微量のはずだ。


「皆、聞いて!ヤツの体力はあと1/5程よ、だけどこれからが正念場です!」


「生存本能か?獣王種が持つと言われるスキルだな」

 どうやらハズリムさんもラプトルの異変に気がついていたようだ。


「えぇ、時間をかけて粘るか、倒し切るかどちらかね。どちらも酷い修羅の道だけど」


 ガッ!


 作戦タイムを与えないつもりか!?ラプトルは高速で間合いを詰めて鉤爪で襲いかかる、ハズリムさんの超反射でギリギリで防ぐ!


 元々常識離れしたパワーを持っているのに、それが1.5倍になるとどうなるか?


 その答えは理不尽極まりないパワーでした!


 今まで受けることができた攻撃が受けきれない!圧倒的なパワーでハズリムさんが吹き飛ばされてしまった。


「アイネちゃん、ハズリムさんを治療して!」


 私はアイネちゃんに指示すると、ラプトルと再び対峙する。

 出血していた傷はすでに血は止まっている。だけど毒は効いているようで呼吸は荒い。まだ、勝ち筋は残っている。

 私は高速で飛行しながら魔法を放とうとする、しかし今のラプトルは私のスピードについてくる!


 ヤバイ!!


 ラプトルの爪をギリギリ避けるが追撃がさらにやってくる。回避のため上に旋回する、すると無慈悲なブレスが放たれる!

「させるか!」

 ハズリムさんが懐に入り神速の連続剣戟を繰り出す!何それカッコいい!すごいんだけど!!


千手波濤(せんじゅはとう)!サウザンド・レイヴ!!」


 ハズリムさんの奥義だろうか?ラプトルに反撃の隙を与えない、これはチャンスだ、私も加勢する。

「ハズリムさん、加勢します!」

 横から更に追撃する!


「ストーンマグナム・ガトリング!!」

 私も手数勝負の魔法を放つ!ラプトルに反撃の隙を与えてやるもんか、このまま押し切ってやる。


 どれだけ撃ち続けているだろう、手数勝負しているがまったく倒せる気配が無い。ハズリムさんの連撃もすでに止まって息を整えるために下がっている。


 私もついに息が切れて後退する。

 くそ!それでもラプトルはまだ健在だ!


 どんなに消耗してダメージを受けても怯まずに動けるというスキル【タフネス】はこういう時に本当に厄介なスキルだ。


 やはり、強力な一撃が必要か。

「ジオグラフィックバトンを使うか」

 あの魔法は強力だ、時間をかけて更に奥の記憶を辿れば強い誰かが応えてくれるかもしれない。


(ラヴィリス様の魔力もかなり消耗してます、使うなら一撃で仕留めないといけません)


 デイルズハーケンは強力だけど私には少し不向きだ、今のラプトルに投げても直接攻撃しても当たる気がしない。


(深層にまでログを辿れば()()()()()()()()()()()()()()が応じてくれるかもしれません)


 やはり時間をかければ・・・か、


 ハズリムさんがこちらを見ている。

「何か策がありそうですな?」

 その言葉に全員が私を見る、


「時間を稼いでくれたら、大魔法を使う!」


「・・・」

全員が黙りこくってしまった。


「数刻ですな、我慢できるのは」

 ハズリムさんがラプトルの相手をしながら交渉してきた、もう少し欲しい気がする。

「私も前に行きます!」

 アイネちゃんが立ち上がる、

「アイネさんを止めないの?可愛い弟子なんでしょ」

 シェルさんが聞いてきた。

「あたり前です、私はそこまで偉くありませんよ、私は誰かに助けて貰わないと戦えませんから!」

 シェルさんがため息をつく。


「ふう、どの口が言うんだか、私らで時間稼いでみせます。なるべく早くして下さいね」


 はい、善処します。


 3人が散開してラプトルに攻撃を仕掛けていく、距離をとりつつ時間を稼ごうとしている。

 私は大地に両手をついて声をかける、かつてない程神経を研ぎ澄ます。


 深く深く大地の深層にまで声を届ける。


 お願い、力を貸して。


 お願い、私の声を聞いて。


 お願い、声を聞いて。


 声よ!届いて!


 深く深くログを辿る、そして見つけた!

 声が・・・届いた!!


「ジオグラフィックバトン!」


「凱旋王!」


「アトラス!!」


 大地が輝き複雑な魔法陣が描かれる。

 光の中から白銀の鎧を身に纏った黒髪の騎士が現れる。そしてその手には身の丈以上の大戦斧を持っていた。


「アトラス!私に仇なす敵を討て!!」


 私は思い感じるままにアトラスに命じた!


 次の瞬間、


 アトラスは一閃でラプトルを両断していた。


 音もなく、美しく、まるで時が止まってしまったようにラプトルだけ崩れ落ちる。

 誰も何が起きたか分からなかった、ただ最後には静寂だけがその場に残っていた。


 アトラスはラプトルを両断すると、光に包まれ消えていった、それと同時に私は物凄い倦怠感に襲われる。


(ラヴィリス様の魔力が枯渇状態になりました、地精吸収で回復して下さい!)


 カガミンの言葉に私はすぐに地面に両手をつけた。

 皆が私を見て全力を尽くしたと理解したようだ、自分達も限界だったのかその場にへたり込む。

 私は笑いがこみ上げてきた。

 正直に言って嬉しかった。


 勝てて嬉しかった。


 今まで逃げてばっかだったのに。


「うふふ、あははははははは!」 


 地べたに寝っ転がって笑い出してしまった、




 よかった、皆が無事で!!





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