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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
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50.みんなの声

 ーーハズリムーー



 錬金術師バルトハイトと薬師オズリットを捕縛した、消火活動は進んでいるが校舎がかなり延焼してしまった。

 周囲に注意を払いつつ、私達は中庭の神樹の跡でラヴィリス様を待っている。


『ハズ、シェル』

 か細い声が聞こえる、シェルがすぐに反応する。


「マーナ!?どこ!?どこにいるの!?」


 左腕を通して伝わってくる。私は根元辺りを優しく掘ると土まみれで弱っているマーナを見つけた。

 すぐに抱き上げる、こんなに小さくて、こんなに華奢なのに!胸が締め付けられ、想いが溢れてくる。


『お願い、ラヴィが、ラヴィが死んじゃう、助けて』


 それを伝えにきたのか!?こんなに弱りきっているのに?

 ラヴィリス様もそうだ、妖精とはこんなにも健気なのか!?それなのに我々人間はいったい何をやっているんだ!


「ハズ!」

 シェルの言葉に正気に戻る。マーナがこうして生きていられるのは私の左腕が神樹の一部だからだろう、左腕に触れている状態ならマーナは安定している。

 マーナの言葉で神樹魔法で根を動かすと地下への道が出来た。


 今度ばかりは危険なので、私1人で行こうとするが全員に拒否されてしまった。

「おそらく、皆が貴方と同じ思いよ」

 本当に察しの良い妻だ。

「ラヴィリス様を助けたいんです!絶対に行きます!」

 アイネ嬢も決意は硬い、

「・・・分かった、行こう」

 周囲に誰もいない事を確認し、私達は地下へ向かった。


 激しい轟音が響く、今まさにラヴィリス様が何者かと死闘を繰り広げている。

 はやる気持ちをおさえ慎重に地下へ進む、すると先には広い空間が広がっていた。

「地下にこんな場所があるなんて」

 シェルが驚愕している。


『マーナはずっとここで危険なのを抑えてた』


 マーナが語り出した。


『ここでみんなを守るのがお仕事だって神様から言われた。みんなの声がいつも聞こえたから辛くなかったよ』


 ずっと・・ここを守り続けてきた?


『ここは危ないからマーナが守らないと、でも上でも危ないことおきた』

 シェルが目に涙を堪えている、


『守れなくって、ごめ』


「もういい!マーナは何も悪くない!!これからは私がマーナを守る!ラヴィリス様も私が守る!」

 会話を途中で遮った、これ以上は言わせてはいけない。これ以上、マーナを苦しませてはいけない!


 グルァァ!!


 突如、異様な咆哮がして激しい衝撃が走る!


 遠目に見えたのはあり得ない存在であった。

「古代竜!?」

 学園の地下にこんな怪物が封印されていただと!?

 マーナはコイツから我々を守ってきたという事か!


「負けるもんか!!」


 聞き覚えある声が、悲愴に満ちた叫び声がきこえる。

 ラヴィリス様の魔法だろう、巨大な戦斧が古代竜に突き刺さる。

 しかし古代竜を仕留められず、灼熱のブレスが放たれる。

 壁にあの小さな身体が打ちつけられるのが見えた!


・・・全身に震えがきた。


 あの小さな身体で再び立ち上がろうとしている!


 なんと気高く、なんと美しい。


 気がつくと私は剣を握ると古代竜に向かって走り出していた。




 ーーラヴィリスーー


 早く回復を!必死に大地から吸引するがラプトルは火炎弾を放とうとする。


「させるか!」


 突然、脇から物凄いスピードで影が割り込んできた、剣を握りラプトルの下アゴを斬りあげてブレスを阻止した。


「ラヴィリス様!!」

 なぜアイネちゃんがここにいる?

「今、治療します!」

 私に治癒魔法をかける。


・・・来てくれたんだ、


 安心感から呆けてしまった。

「大丈夫ですか」

 シェルさんまでいる、

「今、ハズが時間を稼いでるわ」

 ハズリムさんまで、マーナが呼んでくれたの?

『ラヴィー!』

 マーナが抱きついてきた、涙で可愛い顔がぐちゃぐちゃだ。


 あふれる思いに言葉がつまる。


「ありがとう、助かった・・・本当にありがとう」

 安心したのか私も涙が溢れてしまった。

「ラーヴィーリースざまー」

 なんでアイネちゃんが大号泣してるの!?


 まったく・・・本当に・・・元気出た!


「シェルさん!アイツは今、私の作った毒に犯されています、時間がかかれば毒が回ります!そうすれば私達の勝ちです!」

 現在の戦況を説明する、

「流石です!すでに勝ち筋を作ってあるんですね」

 シェルさんがハズリムさんの方に向く、

「ハズ!古代竜はラヴィリス様の作った毒に犯されているわ!時間をかければ勝てる!!」

「分かった、任せろ!」


 するとハズリムさんが一定距離を保ちながら戦い始めた。さすがに上手い、本当に剣聖の名は伊達じゃない。


 カガミン!ラプトルの解析は?

(ハイ、どうぞ!)


 ヴェロラプトル

 LV:88 HP:1074/2530 MP:145/260


 よし、半分減っている!

 アイネちゃんの治癒魔法で動かない身体も治った。

 まだ行ける!まだ私は戦える!!


「マキシム行くよ!」


「はっはっは、長らく先陣を切ってきたが、これ程の相手と戦うことになるとはなぁ!」

 強がりを言う、けっこう余裕そうだな。

「ハズリムさん!スライドして!!」

 私とマキシムが逆サイドから雪崩れ込み、そのままハズリムさんがサイドにズレるようにして挟み撃ちにする。

 今なら溜めが必要な魔法が使える、私はアースランス装甲弾をデイルズハーケンで作った傷目掛けて打ち込む!

 ラプトルは苦しそうに小さく悲鳴を上げる。


 かなりのダメージを与えられてるようだ、動きがどんどん悪くなっていく。

 更にはマキシムが影の刃でまとわりつくように斬りつける。


 私達コンビ攻撃に反撃しようとすると後ろからハズリムさんが神速の剣戟を振るう、更には遠目からアイネちゃんとシェルさんが魔法攻撃をする。


 いい感じで攻撃が噛み合ってきた。



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