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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
497/499

497.のぞき魔 その1

 レストラン「フレイア」



 ーーヴェロニカーー



「ううう、緊張してきました」

 なぜか厨房にいるメアリーちゃんが緊張している、このままフレイアに就職しそうな勢いだ。

「少し遅れているみたいね、今さっき王城を出発したって」

 リリがホールから帰ってきた。リリは場数をこなしているので程よい緊張感で臨んでいるようだ、出会った頃を思えば本当に成長したと思う。

「下拵えは出来ているし大丈夫だよ、後はリリが目の前でドラゴン肉のステーキを焼くパフォーマンス次第だよ」

「何でそんなプレッシャーをかけるのよ!」

 それでもリリの顔を見ると萎縮はしていない。

「ドラゴン肉のワサビソース仕立て・・・絶品でした。今も思い出すだけでヨダレが出てきます」

 メアリーちゃんが昨日試食したドラゴン肉のステーキにワサビバターを使った特製ソース仕立ての味を思い出しているようだ。確かにアレは美味しかった、無類の肉好き女子のメアリーちゃんには堪らなかったようだ。

 他のコース料理もバッチリだ、よほどのトラブルが無ければ大丈夫なはず。


 ・・・ん?


 何か奇妙な反応がある。

 感知に引っかかった対象の温度が高くて様子がおかしい、どちらかと言うと敵意が高くなっていく感じだ。

「メアリーちゃん、少しだけ付き合って」

 準備は万端なのでリリにこの場をお願いして外を確認しに行く。

((そのまま真っ直ぐに進んで))

「はい」

 裏口から出て路地の狭い道に入る。

((あそこ))

 使われていない雑居ビルのような高い建物から反応があり、警戒しつつ中に入る。反応は上の方だ、息を潜めて屋上へと足を運ぶ。

「人がいますね」

 メアリーちゃんの視線の先には明らかに怪しい3人組がいた、その3人の見ている方向はフレイアの方角だ。


「ちょっと、貴方達!何をしているの!!」

 メアリーちゃんが3人に声をかける、手元には望遠鏡みたいな筒状の物を持っている。間違いなくフレイアを覗いていたのだろう、カーテンを閉めっきりにしておいて本当に良かった。

「覗きは犯罪です!」

 正義感に燃えるメアリーちゃんがビシッと指摘する。

 いいぞ!もっと言ってやれ!!

「はあ?何だ?言いがかりか?」

 鶏冠(とさか)のような派手な髪型をした不良が威圧的に近づいてくる。

「可愛いからやるか?」

「おい、面倒事はよせって」

 おいおい、それ以上私の可愛いメアリーちゃんに近づいたら火傷じゃ済まないぞ?

「いいもん持ってんじゃねえか」


 ブワァ!!


 不良が触れようとした瞬間、メアリーちゃんが炎に包まれる。

「汚らしい手で触れないでもらえる?」

 カッコいい!怒ったメアリーちゃんもまた新鮮だ!!

「コ、コイツ」

 もう一人の坊主頭の不良が鉄の棒を手にメアリーちゃんに襲いかかろうとする。

 この野郎!女の子相手に凶器なんか使うな!!


 カラン。


 高熱の焔で鉄の棒を溶断してやる、いきなり持っていた武器が溶け、さらに熱伝導で高温になったので慌てて放り投げる。大丈夫だ、この人はメアリーちゃんに夢中で私の事は見えてないはず。

「お、おい!服が燃えてるぞ!」

 あら?さっきの溶断の焔が服に燃え移ってしまったみたいだ、男は慌てて服を脱いでいる。

「残るは貴方だけだけど?」

 メアリーちゃんが凄むと残る一人のモジャモジャ頭のオシャレ不良がたじろぐ。

「ギャギャッ!!」

「うわ!!」

 いつの間にか背後に回っていたサラマンダのサラちゃんが嬉々として驚かせる、驚いた男は思いっきり転んでしまった。

「ギャギャ!!」

 そしてサラちゃんの一声で3人は炎に囲まれてしまう、その時点で3人に戦意はなく、もう抵抗するつもりはないようだ。


「うわ、こんな風に鮮明に見えるんだ!」

 メアリーちゃんが3人が持っていた筒状の物の中を覗いて見てみる、まさに望遠鏡そのもののようだ。

「これで何するつもりだったの?」

 質問すると3人は口をつむぐ。

「ギャギャ!!!」

 サラちゃんが鳴くと炎の囲いが狭まってくる。

「ひいっ」

 小さく悲鳴を上げ、炎から逃れるように3人は固まる。

((ラヴィ曰くこんな場合は・・・交換条件だっけ?メアリーちゃん、私の言ったとおりに言ってみて))

 耳元で囁く、すると小さく頷いてくれた。

「そうですね、何が目的か言わなかったら一人ずつ髪の毛を燃やしますか?」

 あれ?これでは交換条件じゃなくて単なる脅しじゃない?

「ギャギャッ!!」

「ひいっ!!」

 身体の小さなサラちゃんが余程怖いのか鳴くたびにビクッとする。

「・・・でも髪は可哀想なので服を燃やしますか?」

 これでは単なる虐めだ、この場合はどう言えばいいか分からない。というかメアリーちゃんとサラちゃんが本当に服を燃やし始めてしまった。

「ま、待ってくれ!お、俺たちはあのレストランに客が来たら合図を出すことを頼まれただけだ!」

 服を燃やされて裸の男達がついに泣き出してしまった。

「誰かに言われて?」

 メアリーちゃんの問いかけに男は首を横に振る。

「知らない、本当に知らないんだ!俺らは楽に稼げるって誘われたからやっただけだ」

 嘘を言っているように見えない。覗き見をするとしたら同業者かな?それともオルテシア神教会が聖女を狙っているかのどちらかだと思うけど。


((メアリーちゃん、この人達以外にもいるか聞いてみて))

「貴方達以外にもいるんでしょ?どこにいるの?」

 すると男達は揃って首を横に振る。

「王都のどこかにいる。だけどどこにいるか全然知らないんだ!本当だ!!俺達は楽に稼げると聞いたからやっているだけだって」

 おそらくこの人達は末端だろう、どこかに元締めがいるはずだけど、今から探すのは不可能に近いだろうな。それに時間もない、それにそろそろ帰らないと不味いだろう。

((メアリーちゃん、そろそろ戻らないと、その望遠鏡を取り上げて戻りましょう))

 耳元で囁くと小さく頷く。

「このまま消えなさい、次は警兵に突き出すからね」

 3人に言い残して私達は急いでフレイアに戻る。するとフレイアはすでに警備が敷かれており、厳戒態勢になっていた。




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