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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
493/499

493.待ちに待った日 その2

 王宮・迎賓区画



 ーーシャルロッテーー



「ミュース姫殿下は大丈夫でしょうか?」

 シャトレアが心配そうにリプリス姫に声をかける。

「大丈夫だと思います。まだ大人の男性は少し怖いみたいでして、失礼な態度をとってしまいました、申し訳ありません」

 逆にリプリス姫が謝罪をする。ミュース姫は悪くはないけど私達にとっては少し安心した。

((なぜ・・なぜあの男が・・・))

 今度はリューの様子がおかしくなった。隠蔽で姿は見えないが怒りというか憎悪に近い感情が私に流れ込んでくる。

「申し訳ない、少しだけ失礼する」

 マナエルが断りを入れて部屋の外へ出てくれて、そのまま少し離れた物陰に移動してくれた。

「リュー、大丈夫?」

「震えているのか?」

 マナエルもリューの異変に気が付いてすぐに部屋の外に出てくれたみたいだ。


『あの男が、何で!何で!!』


 うわ言のように呟きリューの顔色が真っ青になっている。あの男?カルストーレのことか?

『おかしいよ、何で人間が300年も生きていられるの?』

 300年?マナエルと顔を見合う。

「リュー、猊下の事を言っているのか?猊下は60を迎えられたばかりだぞ?」

『嘘だ!ティティ様の命を奪ったあの男と顔が瓜二つだった!声も一緒だった!あの、すべてを見透かすような目まで一緒だった!きっとアイツが最期にティティ様を殺したんだ!』

 普段温厚なリューが怒りをあらわにしている。その目には涙が溜まり怒りの感情に支配されている、取り敢えず落ち着かせるためにリューを抱きしめる。

「落ち着いてリュー、多分ティティ様の命を奪った人とあの男は別人よ、きっとその人の末裔か何かだから似てるだけ、だから落ち着いて」

 肩を震わせて激昂していたリューが次第に落ち着いてくる。

『申し訳ありません。もう、大丈夫です』

 呼吸を整えて大きく息を吐く、怒りに満ちた顔がようやくいつも通りの笑顔に戻った。それにしても温厚なリューがここまで変貌するとは。

「リューちゃん!」

 ここで慌てた様子でシャトレアまでやって来た。どうやら新スキルの「以心伝心」は私と従属者間に波及するようで、シャトレアまでリューの激昂に感応してこっちに来てしまった。


「シャトレア、何をしている、早く戻れ」

「うっ!ご、ごめんなさい」


 誰の見ていない場所では母と子供に戻る、久しぶりにマナエルに叱られて凹んでいる。

『ご心配おかけしました。もう大丈夫です』

 リューがすかさずシャトレアを慰める。本当はシャトレアがリューを慰めるつもりだったのだろう、複雑そうな笑顔で応えている。


 揃って部屋に戻って離席した事を謝罪する。いきなりの出来事にリプリス姫側も驚いていたようだが、シャトレアの恥じらいと誤魔化し笑いを上手い具合に解釈してくれたようだ。

「失礼いたします」

 ここでミュース姫を連れて行ったアイネさんが戻ってきた、場の和んだ雰囲気にキョトンされてしまった。リプリス姫はすぐに背筋を伸ばして元に戻る。

「ミュースは?」

「はい、ベルベレッサ様がいらっしゃったのでお願いしました」

 妹のミュース姫の方も解決したみたいだ、リプリス姫が安堵の表情になっている。


「色々ありましたが、そろそろ出発いたしましょうか」

「はい」

 リプリス姫が立ち上がる。シャトレアも元気よく返事をして立ち上がる。


 リプリス姫側の従者はアイネさんと仕事の出来そうなクールな初見女性のみ、シャトレア側はマナエルに第2師団のレオとエルザのみようだ。

「本日の警備をいたします王女専属近衛騎士団長のベリーサ・ウィリアムです。皆様の安全のために万全を期します、どうかよろしくお願いいたします」

 背の高い銀髪の女性騎士が私達に挨拶をする。


「ウィリアム・・・」

 ほとんど聞こえないような小声でマナエルが呟く。そう言えば体格は全然違うが、銀髪なところと雰囲気は何となく誰かに似ている気がする。

「アルテアナ卿、オルベア聖騎士団の皆様も本日はよろしくお願いします」

「我々の帯剣は許されるのか?」

 マナエルの質問が意外すぎたのかベリーサ団長は驚きの表情をしている。

「勿論です。聖女様の護衛もあります、どうか帯剣をして下さい」

「そうか、2人とも自分の剣を持ってこい」

「「はっ」」

 レオとエルザは急いで剣を取りに戻っていった。どうしようマナエルの武器は私が持っているんだけど?

「アルテアナ卿は?」

「リプリス姫殿下の従者が帯剣していない以上、聖女シャトレア様の従者である私が持つのは筋違いでしょう」

 もっともらしい言い訳をする。昨日のうちにマナエルの剣を返しておけば良かった。まあ、マナエルなら最悪の場合は氷で武器を代用できるから大丈夫か。

「銀剣のアルテアナ様は本当に噂以上の方のようですね。感服いたしました」

 ベリーサ団長が人懐っこいような満面の笑みでマナエルを讃える、それに対してマナエルは相変わらず表情を一切変える様子はない。

「お待たせしました」

 レオとエルザが武器を持って戻ってくる。マナエルが丸腰なのを気を遣ったのかエルザは2本を帯剣している。本当によく出来た部下だと思う。

「それでは少し早いですが昼食にいたしましょう。今回の建国祭のためにウォルベル王国より超一流レストラン「フレイア」が臨時で出店しております」

「晩餐会の時にお料理を出されてましたよね?」

 アイネさんの説明にシャトレアが反応する、おそらく昨日マナエルと下見に行った場所の事だろう。

「はい、リプリス姫殿下と聖女シャトレア様のために特別料理をご用意しているとの話です」

 アイネさんの説明にシャトレアは頬を紅潮させ、嬉しさを隠す気は微塵もないようだ。

「私も楽しみです。早速参りましょう!!」

 リプリス姫も楽しみしているようで出発を催促する。


 こうして馬車に乗り込むと私達はレストラン「フレイア」に向かって出発した。

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