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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
483/499

483.これから私達の戦いです

「「「「おおおおぉぉぉぉ!!!」」」


 試合終了のドラの音と共に満員の観客から雷のような歓声がおこる。

 ハズリムさんとシーザーは剣を納めるとお互いに近づいて健闘を讃えあうように握手する。その光景を目の当たりにすると更なる歓声が上がる。


「い、い、息が詰まりそうです!!」

 アイネちゃんが顔を真っ赤にしている、そして観客の拍手に合わせて手を叩いている。

「こんなにも凄いものなんですね」

 普段冷静なリマさんも興奮気味のようだ。

「義母様!しっかり!!」

 ハーシュさんの声で隣を見るとシェルさんが抜け殻のようになっていた。

「生きてますか?」

 確認のために物凄くスゥーとする気付薬を鼻の穴に入れようとする。

「生きてますよ!!」

 身の危険を感じたシェルさんがすぐに復活した。そして窓に張り付いて試合を見ていたベルツ君がキラキラした目で私達を見る。

「ラヴィリス様!お婆様!お爺様すごかった!!」

 ああ、純真無垢で私には眩しすぎる。そんなに希望に満ち溢れた目で穢れた私達を見ないで欲しい。


「そ、それにしても金剣の名前は伊達じゃなかったですね」

 魂が抜けていたシェルさんだが、一応は試合は見ていたようだ。

「ええ、普通に剣の技術だけならハズリムさんより上じゃないですか?」

 私は素人だから何とも言えないけど、直感でそう感じた。

「実を言うと今日はマーナの指輪をハズに渡して、魔導核の中に戻ってもらって完璧な状態にしていたの。ほら左手は一応は義手でしょ?完全な動きとまではいかないけど、マーナに協力してもらえるとイメージに近い動きが出来るんですって。ここのところ毎日2人でコソコソ練習していたの」

 あの動きで完璧ではないの?ハズリムさんの恐ろしさを今更ながら感じる。


『素晴らしい試合でしたね』

 アナウンスの人も今の試合の感動にひたっているようだ。

『ああ、自ら動いて勝ち行くスタイルのグランドル卿に対し、効率よく勝利を収めようとするクラウス卿、全くの別の剣であっても、その道の頂点を極めた2人の共演は鳥肌もんだ!もうこんなのは一生見れないぜ、これを見れた人間は幸せ者だよ!』

 フレディさんも興奮気味だ。

「ふん、何が幸せよ!家族からしたら寿命が縮む想いだよ!」

 シェルさんがキレている。

「まったくです!」

 ハーシュさんも同様のようだ。



『それでは、これより決勝トーナメントの組み合わせ抽選を行います』


 興奮冷めやらぬ雰囲気の中、アナウンスが女性の声に切り替わる。

「さあ、これからが私達の戦いよ!」

 シェルさんが身を乗り出してやる気になっている。

『まずは「両断」のダンザイン・・・1番』

 両断のダンザイン?普通にカッコいい二つ名だ。

『次は「海の喧嘩王」デュパル・・・2番』

 喧嘩王って・・・

『続いて「極寒の剛拳」マードレット・・・1番』

「勝負ね、リマ!」

「え!?」

 シェルさんが不敵な笑みをみせ、リマさんは戸惑いを隠せない。

『最後は「謎の覆面剣士」ジャック・・・2番』

 残されたのは2番だけなので自動的に私の買った覆面剣士の相手は喧嘩王になる。


『組み合わせが決まったぁ!第1試合がダンザイン対マードレット、第2試合がデュパル対ジャックです!』

 再び男の人の声に戻り、興奮気味に組み合わせを読み上げる。

『ちなみにフレディさんの予想としていかがでしょう?』

『そうだなぁ、俺の本命はマードレットだ。奴は全身凶器で武器破壊が得意だ!それが成功すれば勝ちが確定だ』

 フレディさんの予想は筋肉マンのようだ、シェルさんも納得の表情で頷いている。最終的な人気を見てみると、1番人気がイケメン剣士ダンザイン、2番人気が筋肉マンのマードレット、3番人気が喧嘩王デュパル、そして4番人気が覆面のジャックだった。


 コンコン、


 ここで不意にノックの音がする。

「グランドル様がおこしです。」

 どうやらハズリムさんがやって来たみたいだ。

「入って!」

 シェルさんが迎え入れるとハズリムさんとゼル君、ダイスさんが入ってくる。

「お爺様!!!」

「じいじ様!!」

 ベルツ君とカレンちゃんがハズリムさん目掛けて猛ダッシュする。

「凄いカッコ良かったです!!」

 ベルツ君が本当に嬉しそうだ。

「ははは、ありがとう。やはり簡単には勝たしてもらえなかったよ!」

 嬉しそうなハズリムさんがベルツ君とカレンちゃんを抱っこする。さっきまで試合をしていたのにとても元気だ。


「お疲れ様!」

「いやもう・・・本当に疲れた」

 アイネちゃんがゼル君を労う、戦った本人じゃないのに疲労困憊な顔をしている、

「見ているこっちはハラハラだよ!」

 ダイスさんも疲れ気味だ。

「本当に全てがギリギリだから、見ているこっちが怖くてしょうがないよ、俺には剣士の道は無理だ」

 ゼル君の率直な感想だろう。ハーシュさんの前で俺と言っているのに気がついていない。

「ふふふ、はい、滋養薬です、少しは疲れが取れますよ」

 私はカガミンから滋養薬という名前の栄養ドリンクを取り出す。この滋養薬にはなぜか炭酸が入っており某エナジードリンクみたいな味がするのでホランドさん達働くおじさんを虜にしている。

 それをゼル君とダイスさんに渡す、一方のハズリムさんには・・・必要なさそうだ。

「・・・美味い」

「喉越しが良いな」

 ゼル君とダイスさん、どうやら2人とも気に入ってくれました。

「うーん、私だと上手くしゅわしゅわにならないんですよね」

 アイネちゃんなりには頑張っているが、どうやっても微炭酸になってしまうらしい。

「え?作れるの?」

「はい、今度作るので味見して下さいね!」

 平然と言ってのけるアイネちゃんにゼル君は唖然としている。


「良かったですね。結婚すれば毎日飲み放題ですよ」


「え!?」

「なっ!?」

 2人して今更な反応をしないで欲しい。


「あーー青臭くて嫌になるわ」

「ですね」


 どうやらシェルさんとハーシュさんは、こういう初々しい反応がお気に召さなかったようだ。

読んでいただきありがとうございました。

次話の投稿は土曜日になる予定ですが、来週あたりに新作を投稿したいと思ってますので、投稿話数は少なくなる予定です。

後日報告すると思いますが、よろしくお願いします。


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