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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
482/499

482.剣聖 対 金剣

 ドーン!ドーン!!



 開幕の宣言と共に連日の打ち上げ花火が夜空に舞い上がる。昨晩はリントワース邸から眺めていたが、こうして間近で見ると大迫力だ。


『今日は特別解説に第19代王者フレディ・バート氏にお越しいただいてます!』

『よろしくぅ!!』


 フレディさんのテンションが妙に高く、語尾が上がった喋りがチャラい。いや、元々チンピラっぽいけどさ。

「は、恥ずかしいです」

 アイネちゃんが両手で顔を覆って呟く、身内だから余計に恥ずかしいようだ。


『どうですか、この大歓声!こんなに盛り上がるのは前王者フレディ氏の決勝戦以来ですよ!』

『いやあぁ、これは俺ん時以上だぜ。こんなに観客が来るなら今回チャンピオンになった方が良かったかなぁ?超目立てんじゃん!』

「ななな何を言っているんですかあの人は!!」

 リマさんが顔を真っ赤にしている。


『ははは、そ、それでは、今日のプログラムですが』

 アナウンスさんがガチで困っているよ。

「お父様達が観に来なくて本当に良かったです」

 ホランドさんが居たらフレディさんはきっと真面目にやると思うよ。

「リントワース家の人間って本当に面白いわよね?」

 逆にシェルさんは面白がっているようだ、他人事なのでケタケタと笑っている。


『それでは記念すべき王者決定戦の前に、とんでもないビッグイベントの襲来だあぁ!』

『いよおぉぉ!!待ってましたぁ!!』

 いや、フレディさん。マジで恥ずかしいッス。


『今宵の特別エキシビジョンマッチ!!偉大なる我が国の英雄、剣聖ハズリム・グランドル卿!西の偉大なるオルベアの大いなる剣、金剣のシーザー・クラウス卿!最強の二文字の象徴である2人の大剣豪による特別試合を行います!!!』

『いいいぃぃやっほおおおおーーーーい!!!』


「・・・ラヴィリス様、もう無理です。どうか私を何処か地中深くに埋めて下さい」

 アイネちゃんが私に埋葬を懇願する。

「あら、観客からは好評みたいよ?」

 シェルさんに言われて下の観客席を見ると物凄い盛り上がりだ。

「・・・ノリが良いですね?」

「国民性かしら?」


 東側から見覚えのある紳士が若者とゴツい大男と一緒に出てくる。

「ハズリムさん来ましたよ!!」

「ゼルもいます!」

 知っている顔の登場に少々興奮する、ハズリムさんはゼル君と従者のダイスさんを引き連れて出てくる。

 次に西側から大柄な紳士が出てくる。脇には2人の法衣を来た人を従えている。

「あれが金剣シーザー・クラウス、強そうですね」

「なんの、ハズに敵う奴なんていないわ!」

 シェルさんが口では強がりを言うが表情は心配そうだ。


『今回は3分間の模擬戦形式です、時間となったら試合終了とさせてもらいます』

 試合形式をアナウンスする。どうやら模擬戦形式らしく、勝ち負けではない余興のようだ。


「どうやらソハヤは使わないのですね」

「みたいですね」

「当たり前です!!」

 シェルさんから私とアイネちゃんに厳しいツッコミがはいる。

「お爺様は勝ちますよね!」

 心配そうにベルツ君がシェルさんの裾を引っ張る。

「当たり前よ、お爺様は世界で一番強いんだから」

 シェルさんの言葉にベルツ君は顔が明るくなる。そして闘技場の中央に立つ両雄を見つめる。


 こうして並んでいるのを見る。シーザーの方が背が高くてガッチリ体型だ、明らかに貫禄があって強そうだ。対するハズリムさんはシーザーより小さくて細い。いわゆる無駄を削いだ完成された体型なんだろう。

 両者が模擬剣を選ぶ、どうやら2人とも長剣を選択したようだ。

 ハズリムさんが右手に左手を軽く添えただけの剣先を下げた自然体の構えだ。対するシーザーの方は剣を両手で持って剣先を前で構えるスタイルだ。


『実に対極的な構えだ』

 フレディさんがようやく解説してくれた。

『クラウス卿はどんな攻撃にも対応できる基本に忠実な構えだ、対するグランドル卿は力でねじ伏せる攻撃的な構え。これがお互いの色なんだろうな』

 体格が大きいシーザーの方が守りの構えなの?てっきりねじ伏せる方だと思った。


 ドーーーーン!


 大きなドラの音が開始を告げる。


 ダッ!!


 いきなり動いたのがハズリムさんだ!一瞬で間合いを詰めると下段から斬りあげるように剣を振る。いつものハズリムさんの先制パターンだ。

 シーザーはそれを力で受け止めず、剣の腹で受け流しつつ体を横にずらす。ハズリムさんは半分空振り気味になりバランスを崩す、それを見逃さないシーザーは力を入れて剣を振り上げる。


 ハズリムさんは体をよじって間一髪それを避ける、そして返す刀で上から剣を振り下ろす。だがシーザーはいつの間にか剣を途中で止めており、その振り下ろしに剣の腹で受け止める。

 ギギギッと金属の擦れ合うような音が聞こえて来るくらいの激しい鍔迫り合いになる、だが力ではハズリムさんの方が上なのか次第に押していく。


 だがハズリムさんはなぜか剣を途中で止めて距離をとる。


 息を飲むような時間が一瞬で過ぎ去った。

 今の斬り合いだけで満員の客席は静まり帰ってしまった。


『今のは・・・なぜ途中で止めたのでしょう?』

 言葉を失ったアナウンスがようやく口を開く。実況より先にハズリムさんが距離を空けた事を口にしてしまう。

『おそらく誘われていた・・・』

 フレディさんが解説っぽい仕事をする。

『おそらく全力で振り切るために力を込めた瞬間、いなされてカウンターで一閃されていた。』

 いなしてカウンター?そう言えば地下大通路で戦ったディヴァイン・ガーター戦を思い出す、あの時は盾でやられていたけど、シーザーはそれを剣でやろうとしたのか?


 2人は距離をとりつつ睨み合っている。相変わらずシーザーは待ちの構えだ、そしてハズリムさんが静かに剣を上段に構えた。


 何か知らないけど2人とも口元が笑っているのが怖い。

 誰も何も喋らない、向かい合った2人によってここにいる全ての人間の時間が奪われたみたいだ。


 次の瞬間、再びハズリムさんが動き出す。目にも止まらない速さで距離を詰めると渾身の力で剣を上段からの振り下ろす。

 ガキッ!!

 金属がぶつかる音がする。だがすぐにハズリムさんは別の構えをとっている。


 あれはハズリムさんの必殺技サウザンド・スレイヴだ!


 次の剣戟の横からの一閃を振る!シーザーはそれに対応して剣で受ける。だがすぐに斜めから斬り上げる剣戟が襲いかかり、シーザーはそれを防ぐので手一杯だ、だが幾重にも重なる波のように剣戟が繰り出されていく。


 ガッ!!


 だが次の瞬間、ありえない光景を目の当たりにする。


 ハズリムさんが剣を斬り上げようとするタイミングで、シーザーが剣先の細い箇所をピンポイントで当てて剣戟を途中で止めたのだ。

 そしてそのまま振り上げればハズリムさんの喉元に剣を斬りつけられる状態になっている。

 だがハズリムさんはそれを避けようとせず、そのまま力の限り剣を振り上げてシーザーの剣を押し返す。


 力比べはハズリムさんの方が上のようだ、だが今度は上手くシーザーに距離を空けられてしまった、その巨体を軽く翻す。

 今度はシーザーが攻勢に出る、その巨体から想像出来ないようなスピードで距離を詰め、ハズリムさんに向けて神速の突きを振るう。

 ハズリムさんはそれを紙一重で避け、カウンター気味に斬りつけるが、来るのが分かっていたのか体を沈めて回避する。


 再び2人の距離が開き、再び睨み合った状態になる。



 ドーーーーン!!!



 ここで試合終了のドラが会場に鳴り響いた。




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