48. 何度も何度でも
「マーナぁ!どこっ!?、返事をして!!」
生命力の強いはずの神樹の息吹が弱くなっていく。
「マァーナァァ!!」
「マァーナァァー!!」
何度も何度でも名前を呼ぶ!
(ラヴィリス様、おかしいです、この程度で神樹が死ぬなんてあり得ません!)
どういうことだ?
(神樹に何か秘密があるかもしれません)
マーナを探さなくてはならない、だけど今はカガミンの言ったことがどうしても無視できなかった。
この木の下にはゲートキーパーのいる秘密の匣はない。
・・・離れた場所に封印?ゲートがないのにゲートキーパーがいる?
・・・実はゲートが学園のどこかにあったのではないか?
あのゲートキーパーが活動を停止しているのはゲートも封印されていたから?
胸騒ぎが止まらない、
(あの時マーナが出てきた木の窪みにいきましょう!)
中腹にある窪みを調べてみる、小さい穴が奥まで続いている。
(神樹魔法なら干渉して通れます!)
私は穴を大きくして身体をねじ込み先に進む、穴は木の根の方、地下へと続いている、この木の地下に何かある。
着いた先は広い空間であった。
そこには、ここにあってはいけないモノがあった。
(やはり、神樹の力によってゲートが抑えられていたようです)
あれは?
「マーナ!!」
力なく横たわっていたマーナを発見した。
『ラヴィ、ラヴィ、来てくれた・・・』
「マーナ、大丈夫だから!私が絶対助ける!」
今なら分かる、マーナがずっとここを守り続けていた理由が。
ハズリムさんとシェルさん2人が幸せそうなのを見て、自分のことのように喜んでいたこと。
マーナにとって、この学園の生徒は自分の子供みたいなものなんだ。
子供が幸せなのが1番嬉しい。
だからずっと守ってこれた。
ずっと守ってきたからこそ神樹に進化できた。
誰にそれを邪魔する権利がある?
「神樹魔法!マテリアル・エーテリオン」
私は神樹の魔導核を抜きだした。神樹はもうダメだ私は苦肉の策でマーナに魔導核を移し、マーナを生きながらえるようにした。
『・・・ラヴィ?・・』
心が苦しくなる。
「おまえがいたから!!」
「おまえがなんで!マーナの幸せを奪うんだ!!」
「ジオグラフィックバトン!!」
「大殲斧!!デイルズハーケン!!」
大地のログを辿り、この地の魔力が超巨大な戦斧を形成する。私はその斧をゲートに向かって投げつけた!
凄まじい音と共にゲートが破壊されるのが分かった。
(気をつけて下さい!防壁が弱くなっているのを感知し、ゲートの中で待ち構えていたようです・・・侵入されました!)
「バンゲアの奴ら!?」
(・・・違います、ですが恐竜です!!)
「ぐるがううああああぁぁ!!」
聞いたことがある声だ、
相手してやる、今の私は最高に怒っているんだ!
「昔の私と一緒と思うなよ!」
ーーハズリムーー
「あぁ、神樹が」
アイネ嬢から涙が溢れる。
神樹が力なく崩れていく。しかし次の瞬間、大地が揺れるような衝撃が走る。
これは・・・ラヴィリス様が何かと戦われているのか?
そして、神樹が倒れたのに左腕からいまだに鼓動を感じる、ということはマーナはまだ生きている!?
「マーナはまだ生きている!今、おそらくラヴィリス様が駆けつけておられる!」
「膝をつくな!ラヴィリス様は諦めていない、今も戦っている!我々も諦めるな!」
アイネ嬢を励ますように叫ぶ。
そして私は剣握る、目の前の敵に剣先を据える。
ホムンクルスと呼ばれる人工の魔獣、リントワースでも大暴れした悪鬼と通じるものがあるだろう。
「ははは、行けガルバルディ!神樹を倒せば後はこいつらだけだ!」
高い所から見ているだけの小物2人が偉そうにぬかしている。
「シェル、あの小物2人を頼めるか?」
長年の付き合いだ、私の意図をすぐに汲み取ってくれる。
「アイネさん、今のうちにあのバカ2人の後ろに周りこみましょう」
「はい!」
アイネ嬢も大したものだ。先程は涙を流していたのにも関わらず冷静な判断をこなせる、本当に素晴らしい逸材だ。
そして目の前の敵と向き合う。
久しぶりの戦場だ、肌がヒリヒリしてくる。やはりこの場所こそ私の居場所なのだな。
「かかってこい!格の違いを教えてやろう」
ホムンクルスは構えもなしに襲いかかる。それは野性に近い獣の動きだ!
大振りの腕を紙一重でかわし、ガラ空きの頭部に剣を振り下ろす。
手応えはない。
ありえない格好で避けている、曲がってはいけない方向に首が曲がっている。
「羨ましいな、私にもそんな動きができたらなぁ」
ガッ
カウンターの一撃を放ってくる、それを剣で受け流す。
冗談の通じないヤツだ!聞く耳さえ持たないとは。
「試してみるか」
私は覚えたての神樹魔法を使う、近くの植木に触れるとホムンクルスに向けて枝が伸びていく!
「おお、これはいいな!」
枝に捕らえられたホムンクルスの心臓部に向けて剣を突き刺した。
ぐうぅ
呻き声が聞こえる、しかしまだ動く。
「なんだ!?今、木が勝手に!?」
くそ!アイツらの前で見せるのは気に食わない。
しかし心臓を突かれたのにまだ動けるか?ホムンクルスは何事もなかったように襲いかかる。
「これならどうだ!」
一瞬で間合いを詰める、
「縮地斬!」
肩からなぎ下ろすように袈裟斬りする、手応えはあった。
「・・・ふむ、まだ生きているか」
大きく半身斬られているのに動く。
「ふふふ、退屈しないものだ」
ーーアイネーー
「ハズリム様は大丈夫でしょうか?」
ハズリム様を1人中庭に残して来てしまったが、あの魔獣は危険だと思った。
「問題ない、伊達に剣聖を名乗っていないわ!」
例の2人を捕らえるため建物内を進む。途中、窓から剣聖の戦いが垣間見れた。
一瞬で間合いを詰める、気付いた時には魔獣は斬り伏せられていた!
「すっ、すごい!」
瞬火の異名をもつラルズよりも速い!
「・・・しつこいわね」
学園長が苦い顔をしている。
まさかと思い再び下を見る。嘘だ、今の一撃をうけても生きている。
「私達も急ぐわよ!」
学園長に言われ通路に目を向ける。
私もやれる事をしないと!再び走りだした。




