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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
465/499

465.助け損のくたびれ儲け

「リントワース家を代表して、静寂の森の危険ダンジョン区域に指定されているのは許せません!ここはラヴィリス様の森であり大切な聖地なのです!!」

 アイネちゃんがキレッキレです。ギルドマスターのアイザックさんは困った顔で私を見る、どうやらラヴィリス様の森というワードから私が関係している事は理解したんだろう。


「あー、静寂の森は私のモノではありません。一応は私が静寂の森の頂点に立っているというだけです」


 これは助け舟を出さないといけないよね、私が目配せをすると察したのかアイザックさんは口を開く。

「それなら静寂の森は安全なのか?」

「まさか?森への侵入者は捕食対象です、アッシュベアやゴブリンロードなどの最上位の魔獣が住んでいて非常に危険です」

 ゴブリンロードの名前を出すと全員が騒つく。

「ゴブリンロードだと!?まさか集落を作っているのか!?」

「それってヤベェんじゃねえのか?」

 レアンさんまで深刻な顔をしている?何か大袈裟なんだけど?彼らと私は平和なお付き合いをしているんだけど。

「アイネちゃん、実はゴブリンロードって本当は集落を形成できる程の知能を持った危険な魔物なんですよ?あの時は私と一緒にいたから友好的でしたが、本来ならあそこで袋叩きにあっていたはずなんです。常々話していると思いますが、自然界では弱いという事は狩られる側なんです、それは誰であろうと変わる事ない不変の理なんです。なので危険区域なのは間違っていないんです」

 私が言いたい事を理解したのかアイネちゃんは小さくなっていく。まあ、反省できるのは良いと思うよ。

「あー、それでか、実は国より静寂の森を危険区域より更に上のカテゴリーである禁足地に指定するという達しが来ているんだ」

 アイザックさんが付け加える。確かシェルさんが前にそんな事を言っていた気がする。


「そういう事ですので、納得して下さいね」

「「はい・・・」」


 アイネちゃんとリマさんはシュンとなりながらも納得してくれたようだ。私の事を大切にしてくれるのは嬉しいんだけどね。

「それでゴブリンロードは本当に大丈夫なのか?危険性は無いんだよな?」

 レアンさんが念を押してくる。

「大丈夫だと思いますよ。向こうから仕掛けてくる事は無いと思います。ただ、こちら側からちょっかいをかけたらどうなるかは分かりません」

「・・・ふう、早いとこ禁足地にしないといかんな。ヘタな奴らが入れないようにしないとな」

 アイザックさんが大きく息を吐いてレアンさんを見る、お互い安堵の表情をしている。本当に私達とは大きく見解の違いにがあるようだ、世間ではゴブリンロードが存在するという事は非常に危険な事だったようだ。


 いけない、話が滅茶苦茶脱線してしまった。

 早いところ本題に入らないと。



「ふむ、水に呪術を・・・」

 レアンさんの説明にアイザックさんが深く考え込む。

「実際にこれがあった。中に呪詛が入れられていて、時間をかけて水に溶け出す仕組みになっている」

 タリスマンを見せて説明する。

「お姉様、この呪術はあの男ですか?」

 アリエッタがきっと同じ犯人を連想したようだ。

「おそらく。やり口が陰湿で卑怯、人間を材料としか見てないあの男です」

「おいおい、そんなヤベェ奴がいんのかよ」

 何も知らなかったのか、アイザックさんにとっては眉唾物だったようだ。

「それでだ、王都の全部の上水施設の点検が必要なんだ。この事はメルブラント卿に報告して動いてもらうつもりだ、国に任せるしかないだろうしな」

 レアンさんが本題に入る、視線は私の方を向いている。どうやら私が説明した方が良さそうだ。


「アイザックさん、スラム街というのはどんな場所ですか?どこの誰が居なくなったとかを把握する事は出来ますか?」

 単刀直入に聞いてみる。おそらく国としては汚点だから隠したい部分だろう、どこの国でもそういった負の部分はあると思うから責める意図はないけど。

「・・・まず誰が居なくなったかすべて把握するのは無理だ。この国で国籍を得るには金がいる。いわゆる税金って奴だ、それを払えないからスラム街にいるんだろ」

 まあ、そうだよね。

「基本的に人の出入りは分からない、気がつけば居なくなっているし、知らない人間が増えている時もある、それがスラム街だ。それに手配されているような犯罪者でなければ王都には比較的自由に入れるしな」

 以前見た王都へ入る際、多くの人が並んでいた。あの数を全て確認するのは無理だと思ったんだね、貴族なんて別の入り口から簡単に入れたしね。

「それで、スラム街での行方不明者の件なんだがな、実際に捜索の依頼が来ていた、しかもかなりの数だ」

 アイザックさんの言葉に緊張が走る。そして何やら手配書のような顔絵付きの紙を私達の前に出す。

「あ、この顔は!」

 アイネちゃんがその中の一枚に反応する、例の私達を襲った浮浪者そっくりの男だ。

「こいつは借金を踏み倒した野郎で、貸付人が捜索依頼を出していたんだ。他にコイツもあの中にいたな、コイツは婦女暴行をして被害者が捕まえてくれっていう依頼で手配されている。どちらも警兵らに頼めないからウチに依頼がくるんだよ、こっちは冒険者であって便利屋じゃねえのになぁ」

 ウンザリしたようにため息を吐く。


 どいつもコイツも最低な奴ばかりじゃないか、助けて損をした気分だ。





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