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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
460/499

460.原因究明へ

「ラヴィリス様、餅米の仕入れ先も聞いてきました」

 リマさんがいつも持っている手帳に書き込みながら嬉しい報告をしてくれた。

「どうやらクリストア王国の南方で生産されているようです。南方というかグランドル領です。売店で販売されていた焼き菓子の生産元もグランドル領内の製菓メーカーのようです。先程思い出したのですが、シェルリース様がこの菓子の事を存じていたのです。今思えばグランドル領で堅焼き菓子が作られているからなんですね」

 おお、グランドル領内で餅米が手に入るのか!?今日の夜にシェルさんに会うだろうから、その時に詳しく聞いてみよう。


「さて、では共同の配給水場に行ってみましょう」

 餅米をカガミンの中に入れ、西区のさらに奥へと向かう。

「狭くて入り組んでますね、迷子になりそう」

 アイネちゃんが率直に思った事を呟く。確かに道は細くて入り組んでおり、まるで迷路みたいだ。

「・・・おかしい。静かすぎる、あまりに人の往来がない。とても人が集まる水場に向かう道とは思えぬ」

 コノハが周囲を見渡し、異常な雰囲気に警戒感が強くなる。

「あそこだ」

 開けた場所に出るとポツンと東屋(あずまや)のような簡素な建物があった。建物の中には大きなレバーがあり、それを下げると吐水口から水が出てくる仕組みのようだ。


(微量ですが異物が含まれております)

 カガミンが解析する、やはり水が原因だったようだ。


「水が送られてくる先に行ってみたいですね」

 水場に繋がっているパイプの先を見る、ここから更に奥へと向かっているようだ。

「行ってみよう」

 レアンさんを先頭に水のパイプに沿って歩いていくと大きく開けた場所に出て、ドーム状の建物が建っており、パイプはそのドーム状の建物へと繋がっている。


「ここは、ろ過施設だったと思います。水を飲めるようにするために一度ここに貯められ、ろ過されて各水場に送られるそうです」

 アイネちゃんが目の前にある建物の説明をしてくれる。看板を見ると西区第3上水ドームと書いてある。

「これは公共の施設なんですよね?」

「え?はい、そうだと思います」

 こういったライフラインの施設には必ず人が常駐するものだよね?

「少し待っててくれ、中に誰かいるかもしれない」

 レアンさんが建物の入り口に向かう、どうやら中には人がいるみたいだ。作業服を着た2人の職員が出てきた。レアンさんと何やら話をしており、私達に来る様に手を振って呼び込み、普通に中に入る事ができたけど良いのだろうか?

「俺の雇い主のメルブラント公爵の名前を出せばだいたいOKなんだぜ」

レアンさんが自慢げに教えてくれる。勝手に名前を使っているけど大丈夫なのか?



「ここの設備はすべて魔導装置で自動で動いてます、なので我々のする事は装置の点検確認だけなんです。定期的に装置のメンテナンスをするためには入りますが普段は入る事はありません。ここは特にセキュリティが強いので異物や劇物を入れるような事は困難だと思うのですが・・・」

 作業服の職員さんがレアンさんとアイネちゃんに説明している。確かにこの施設はドーム状の屋内で閉鎖されており、基本的に誰も出入り出来ないようになっている。

 貯水槽の水は問題なさそうだ、ろ過装置を見ると魔導装置による消毒がしっかりされていて弱い呪詛なら除去できそうな気がする。


 なら送水設備、つまりポンプ場と呼ばれる場所か。


((気をつけるのじゃ、ここじゃ!))

 コノハが警戒を促す、アイネちゃんも感じるのかダイツーレンを手にする。

「気をつけろ、中にいる」

 レアンさんが職員さんに指示する。ただならぬ雰囲気に2人は頷く、そして厳重な鍵を開けてもらって中に入る。

「あれは、ダイアン?何で?」

 奥にいる人間に気づいて職員さんが近づこうとするが、すかさずレアンさんがそれを止める。

「知り合いか?」

「は、はい、ここの職員の1人です」

 じっと観察をしているがダイアンと呼ばれた職員は動く気配がない、だけどその姿は明らかに異常なのは分かる。

「アンタ達は外に出て行ってくれ、何かヤバそうな気配だ」

 危険を察知したレアンさんは職員さん達に避難するように促す。

「で、ですが・・」

「気をつけて下さい!」


 ガッ!


 アイネちゃんが鋭く声を上げる。すぐ横にはボロボロの身なりの男が襲いかかってきており、アイネちゃんがダイツーレンの柄でその攻撃を受け止める。

 その男は目は焦点が合っておらず、顔色は青白い、手からは異形の爪のような鋭い刃が伸びており、職員さんの目の前で止まっている。

「リマちゃん!」

「はい!!」

 レアンさんが指示を出すとリマさんは2人を連れて入り口に走り出す。それを待ち構えるように数人の浮浪者風の男が立ちはだかる。

「マキシム!」

 並走したマキシムが速度を上げて浮浪者風の男達の間をすり抜けていく。

「息を止めていて下さい!」

 リマさんが影を操って2人を拘束して影の中に潜る、それをマキシムが引き上げ、一瞬で入り口まで影移動をする。

 息のあったナイスコンビネーションだ!


「狼・・・まさか噂の狼メイド!?」

「本物!?」

 2人が唖然としてリマさんを見ている。

「私は偽物です!断じて狼メイドなどではありません!!」

 リマさん・・・


 リマさんが2人を外へ避難させてくれたおかげで私達は隠蔽を解く事が出来る。

「妾がリマ殿の方へ行く。ラヴィリスや、雑草を分けてもらえるかの?」

 状況を考えると確かに入り口を背に、敵に囲まれているリマさんが危険だ、コノハに山盛りの雑草を渡すとお椀のカヤさんの中へ入れていき、適量をエクレールに渡す。

「エクレール、ゆくぞ」

「はうっ!」

 コノハと一緒にエクレールが駆け出す、口には雑草で作った長いロープを加えている。そして物凄いスピードで浮浪者達の間をすり抜けていく。

「花魔法、草結び!」

 コノハが雑草のロープに魔力を流すと草が膨張していき浮浪者達に絡まっていく。その隙にコノハはリマさんのもとに向かう。

「奴らが外に出れないように入り口に結界を張るのじゃ、少し妾を守ってくだされ」

「はい!」

 リマさんとマキシム、エクレールがコノハを守る様に立ちはだかる、浮浪者達は自身の爪を剣のように振り回してまとわりつく雑草を切っていき簡単に拘束から解放されていく。

「こっちも囲まれたな」

 レアンさんの一言でこちらも周囲を見渡す、周りには5人ほど悪鬼化した人が私達を囲っていた。



読んでいただきありがとうございました。


活動報告でも書きましたが、私の過去作の「黒き異物はこの世界を後にした。」を書き直しのために一度削除しようと思ってます。

読まれている方もいるようなので今月までは公開するつもりですのでよろしくお願いします。

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