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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
46/499

46.性格は言動から滲み出る。

 どうしてこうなった。


 私は後日、カガミンの録画を聞かせるために意気揚々と皆に集まってもらった。

 会話はバッチリに聞き取れるよ、非常に高音質なスピーカーだと思うよ。カガミンの能力に皆が驚愕してた。


 だけどダメなんだ!


 なぜかって?

 それは私が録画ということを忘れていたんだよ。鏡には私の顔がドアップで延々と顔芸ショーをしているのが高画質で録画されていた。

 怒った顔、真剣な顔、悪巧みしている顔、自分がこんなに表情が豊かだと思わなかったよ!!

 

 皆、奴ら悪党の会話なんてどこ吹く風、私の顔芸ショーにドン引きだよ!


「貴女、いつも鏡見てるけど、どんだけ自分好きなの?」

 シェルさん、いつも鏡見てるけど誤解なの!


「か、可愛らしいと思いますよ」

 アイネちゃん、フォローされると逆に辛い、


「ラヴィリス様は本当に退屈させませんな!」

 ハズリムさん、そんなつもりはないんですよ!


「「・・・・」」

 ホランドさん、ガルファさん何か言って下さい。


「ラヴィリス様!これを私に下さい!」

 おや、おかしなことを言ってるメイドがいるぞ?


 撮るなら撮るって言ってよ!こんな恥ずかしめに合うとは思いもしなかったじゃないか!


 八つ当たり気味にカガミンに切れてみる。

(このラヴィリス様はとても可愛いらしいと思いますよ。私のコレクションに永久保存していつでも見れるようにしておきます)


やめてくれ・・・私の全てが失われる。



「で、この2人の会話はどう思う?」

 放心している私を他所に皆が勝手に検証し始めた。 


「こいつらの小物感がすごいわよね、やはり糸を引いている黒幕がいそうね」

 先ずはシェルさんの毒舌人物評から始まる。


「グランドルに対しては父上を操って乱心させるつもりだろうな」

 静かな怒りを滲ませるガルファさん


「学園長・・狙いは地下のアーティファクトみたいですね」

 学園地下で実際にブラックコアを見たアイネちゃんが心配そうだ、確かにあんなの動かされたら大変だ。


「静寂の森のブラックコアは?」

 私はダメージを引きずりつつも復活してこの質問に答える。

「私はゲートキーパーと呼ぶけど、奴らの動力はそのブラックコアらしいの、私がそのゲートキーパーを倒してコアを今まで保管していました。現在はハズリムさんの義手として人工魔導核になってます」 


・・・説明を求められたからしたのに、そんな劇物を見るような目を向けないで下さい。


「なんというか、私達の常識はこの方には一切通じませんね」

 最近、シェルさんがいないとツッコミが成り立たないと気づいた。

「しかし、悪鬼を作り出した目的が静寂の森のブラックコアを手に入れるためだと?あまりにふざけている!」

 ホランドさんの怒りが振り切ってます。仕方ないなぁ、


 ぱんっ!


 私が手を叩くと部屋全体に花の良い香りがする、

「花魔法、華の香です」

 私はこの魔法が一番好きかもしれない、人の心を落ち着かせることができる、この場にいる全員が花の良い香りに気づいた。


「ラヴィリス様・・・」

 アイネちゃんが私が魔法を使ったのがわかったようだ、大きく息をすい深呼吸する。

「落ち着きましょう、怒りに駆られるのは相手の思う壺です!」

 アイネちゃんが皆に声をかける。本当に成長著しいよ!


「攻めるなら薬師のオズリットですね、ハズリムさんが元気に目の前に現れたらどんな顔するでしょうね」

 私は優男の方から追い詰めようと思った、あいつの方が気が弱そうだし思ったより簡単にボロが出たからだ。


(ラヴィリス様!悪い顔、素敵です!)


「それは是非、見てみたいわね」

 性格の悪そうなシェルさんが嬉しそうに賛同する。

 真面目な人達は私達にドン引きしている。そんな事はつゆ知らず話はエスカレートしていく。


「それなら左肩のブラックコアを見せつけてやりましょうよ!どんな顔するかしら?」

 シェルさん、良い顔してるわ!

「ついでにエサの大きな魔石も見せつけましょ」

「あら、さすがラヴィリス様!面白くなってきましたね」

 私とシェルさん2人で盛り上がっていたが、ふと周囲が静かになっていることに気づく、


 あれ?ドン引きされている?


「うふふ、冗談です」

「おほほはほ」

 上手く誤魔化した・・・はず!



 私達はしばらく大人しくすることになった。

 まずはハズリムさんに対する反応を見る、動きを観察しつつ影を忍ばせて証拠を固める。狙いは次の評定の時に告発するというものだ。回りくどいやり方だが貴族のやり方なのでここは従おう。


 という事でヒマです!


 私達が中庭の神樹で休んでいると、接近禁止中のゼル君がやってきた。

「リントワース嬢」

 おや、いつものぶっきらぼうな口ぶりが鳴りを潜めてしまった。

「父上から話を聞いた、お爺様を助けてくれてありがとう、本当に感謝する」

 深く頭を下げる、彼なりの精一杯だろう。アイネちゃんは身構えつつも表情を和らげる。

「・・・私みたいな小娘に学園長が頭をさげて下さったんです、断るわけにもいかないじゃないですか」

 あの時のシェルさんと自身を重ねているのかもしれない、大切な人を助けたいと思う気持ちは一緒だ。


「と言うのは建前で、私が苦しむ人を見て見ぬふりができないだけですよ」

 その笑顔は破壊力抜群だ!ゼル君マジで恋に落ちてないかい?視線を外し神樹に目を向ける、

「お爺様から聞いた、この大木が神樹なのだろう?すごいな」

 見上げながら優しく撫でる。いい顔だ、色々吹っ切れたようだ。


「この木が神樹だって?」


 ふと声が聞こえる、そこにいたのは第2王子のアリアス殿下であった。一瞬、神樹を見上げていたが直ぐに視線を戻して睨みつける。


「ゼル、接近禁止のはずだが?」


「・・・分かってます」

 素直に従いゼル君はその場を離れていった。

「大丈夫?また嫌がらせをされたのかい?」

 優しく語ってくる、キラキラして眩しいなぁ、

「大丈夫です、なんでもありませんので」

 うん、美男美女は目の保養になりますな、

「それにしても、この木が神樹って本当かい?」

「え?はい、最近進化したらしいです」


「・・・そうか、そうなんだ」




 私は何か違和感を感じていた。



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