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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
442/499

442.開幕式 その2

 ーーシャルロッテーー



((どう?聞こえる?))


「はい!シャルロッテ様の美しいお声が、はっきりしっかりばっちり聞こえます!」

 シャトレアは大袈裟に声を上げる、明らかにマナエルへのアピールも兼ねている。

「マナエルはどうですか?私の声は漏れてましたか?」

 苦々しい表情で首を横に振る、でもなぜか悔しそうなんだけど?

「くう、神経を張り巡らして意地でも感知してやろうと思ったのに!全く何も感じないだと!?」

 本気で悔しかったみたいだ。

『凄いです!私も全然感じませんでした!』

 妖精であり魔力に関して敏感なはずのリューでも分からなかったようだ。


(どうやら従僕魔法の契約により、精密かつ隠蔽された意思通信が可能なようです)

 私の相棒のインテリジェンスアイテムの傘のアンが解説をしてくれる。従僕魔法にこんなメリットがあるとは思わなかった。


((マナエル、いかがですか?従属関係にある私達はより精密で隠蔽された意思通信ができるみたいですよ))

 突然私の声が頭の中に響いたのか驚いた様子で私の顔を見る。


 するとマナエルは大きなため息を吐く。

「・・・30分だけだ」

 諦めたように30分だけ自由時間をくれた。

「やった!!シャルロッテ様!リューちゃん!さっそく行きましょう!!」

 シャトレアはローブを羽織り、私達にフードに入るように促す。本当に現金な子だよ、一気に機嫌が良くなってしまった。

「おかあさ・・じゃなくてアルテアナ卿も早く行きましょ・・参りましょう!」

 興奮していても何とか言い直してマナエルも促す、仕方ないという表情でマナエルも付いていく。マナエルはシャトレアの専属護衛なので一緒に行かなくてはならないのだ。


 シャトレアが軽い足取りで外に出る、廊下にはオルベアの騎士達でいっぱいだ、これなら誰が襲ってきてもすぐに返り討ちできそうだ。

「聖女シャトレア様、どちらへ?」

 熊みたいな大男が行手を遮るように立ちはだかる。

「おい、第3師部隊長グラハッド。聖女シャトレア様の前に立ちはだかるとはどういう了見だ?無礼であろう」

 マナエルがすぐにシャトレアの前に立つ、その圧に耐えられなかったのか後ろにたじろぐ。

「いつまでもシャトレア様を聖女候補と間違えるな。聖女様の立場は教皇猊下と同等だ、貴様は己の立場を(わきま)えろ!」

 鋭く言い放つと、グラハッドと呼ばれた大男はモゴモゴしながら謝罪する。さっきまでの態度とは大違いで少しだけスカッとした。

「少しだけこの施設を見学してきます。アルテアナ卿と第2師団の方々が護衛として同行します。なので貴方がたはそのまま待機していて下さい」

 シャトレアが丁寧な言葉で分からせる、ちなみに第2師団とは[銀剣]マナエル直属の騎士団だ。第1師団が[金剣]シーザー・クラウスで、第3師団が[聖騎士]ジャン・レイ・ロッサーノの直属の騎士団らしい。

 シャトレアがそう言うとマナエルが視線を動かす、すると背の高いイケメンの騎士と背の高い女性騎士がスッと動き出して前に立つ。それを見てグラハッドは何も言えなくなったのか一礼して元の持ち場に戻っていった。

「レオ、エルザ、2人は離れて後方をついて来い」

「「はっ」」

 マナエルが命令すると2人は頭を下げてその場を離れる。その後は指示通りに離れた後方からついて来る。


「ふう、第2師団を何人か連れてきて正解だった。第1と第3が大きい顔でのさばるのはあまり良い気分ではないな」

 マナエルが小さくため息を吐く。マナエルの騎士団である第2師団のほとんどは本国の守備に回っており、今回の主な戦力は第1、第3師団がまかなっている。その中で第1師団は教皇専門の護衛となっており、ほとんど顔を合わせないが、第3師団は全体的な主護衛の役目を担っているためそこらじゅうにいる。今みたいに結構横柄な態度をとるために少しだけウンザリしていた。


 そのまま赤絨毯の通路を進み、広い色々な展示品が飾られたホールへとたどり着く。

『これは、何か有名な方なのですか?』

 リューが何かに気づいてシャトレアに尋ねる、広いホールの壁にカッコいいポーズをとった戦士っぽい人の肖像画がたくさん飾られている。

「えっと・・・19代王者フレディ・バート?こっちは20代王者と書いてあるけど額縁だけ・・・」

 シャトレアが肖像画に書いている文を読む。

「どうやらそれは歴代の剣闘場の王者のようだな。確か5年ごとに王座を決めると言っていた。この建国祭の期間内に20代目王者が決まると言っていた」

 マナエルが説明してくれる。そう言えばここはコロッセオっていう施設で、普段は剣闘が行われているという話だった。

 カッコいいポーズをした肖像画を見てまわる、歴戦の筋肉ムキムキの戦士っぽい人から女性の剣闘士、少年剣士の絵まである。

「・・・10代王者[剣聖]ハズリム・グランドル」

 マナエルが少年の肖像画を見て呟く、剣聖?こんな若い子供が?

「ええっと、50年ほど前の絵のようですね」

 シャトレアが書いてある文を読み上げる、こんな若い頃に王者になったの?以前マナエルが次元の違う強さだと言っていた人だ。


「・・・え?」

 先に進もうとするシャトレアが突然立ち止まる。その視線の先を見ると豪奢な法衣を身に纏った大男が肖像画の前で立っていた。

「シーザー?このような場所にいるとは珍しいですね」

 マナエルが声をかける。そう、金剣と呼ばれるオルベア最強の男シーザー・クラウスがこんな所に1人でいたのだ。

「マナエルか、それに聖女シャトレア様」

 シャトレアの顔を見るなり小さく頭を下げる、こういう弁えた所作は本当に凄い。さっきの第3師団の騎士達とは大違いだ。

「16代王者[瞬火]ラルズ?」

 シャトレアがシーザーが見ていた肖像画を見る、そして不思議そうにシーザーの顔を見返す。


「昔、少し見知った顔があると思ってな」

 鉄仮面のようなシーザーの表情が少しだけ緩んだ瞬間であった。




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