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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
441/499

441.開幕式 その1

シャルロッテのターン!

 ーーシャルロッテーー



「シャルロッテ様、見て下さい!!凄いです、街の中にあんな巨大な施設があるなんて!」

 シャトレアが興奮気味に馬車の窓を覗いている、私も誘われるがままに窓から外を覗く、物凄く巨大な建築物がどんどん近くなってくる。

 私達はクリストア王国にある巨大な施設コロッセオという施設へ向かっている、そこでクリストア王国の建国祭の開幕式が催されるとの話だ。


 クリストア王国に来て1日目、午前中はシャトレアにお客さんが来ており、私とリューの妖精組はシャトレアの部屋で大人しく待機していた。

 そしてシャトレアが部屋に帰ってきた途端、本物の王女様と会ったと興奮気味に話していた。多分、私達もこれからその王女様に会う事が出来るだろうから楽しみだ。

 そして午後になり開幕式が行われるコロッセオへと移動する運びとなり、初めての外国に心を躍らせていた。


「到着いたしました、聖女シャトレア様」

 馬車の外から声をかけられる、同乗していたシャトレアの護衛であるマナエルが馬車のドアを開ける。

「シャルロッテ、リューは私の方に来い」

 小さな声で呼ばれてマナエルのローブのフードの中に潜り込む。マナエルは先に外に出て周囲を警戒する、一方のシャトレアは色々と身体検査を受けている。それが終わると私達はシャトレアの方へ身を隠して移動し、今度はマナエルが身体検査を受ける。

『とても厳重なのですね』

 この流れで何度かの身体検査をパスしてきたが、クリストア王国側はかなり警戒をしているようだ。まさに騒動を絶対に起こさせないという決意の現れなのだろう。

「・・あら、あの方は」

 シャトレアが誰かに気づいて笑顔になる。その方向に視線を移す、若いカップルがその先にいた。

「今日の午前中に挨拶に来た王女様の補佐の方です。確か名前はアイネさんだったかな?男性の方は恋人なのかな?いいなぁ〜、素敵」

 若いカップルの女性の方がシャトレアに気がついたのか深々と頭を下げている、男性の方が何か尋ねており説明を受けて男性の方も倣って頭を下げる。何か初々しくて私とは全く縁のない世界だ、こういうのを美男美女のリア充カップルと言うんだろうな。


 マナエルが身体検査を受け終わり、こちらにやって来る。

「三階に控室が用意されているからそちらに移動しよう。聖女シャトレア様はまずそこで開幕セレモニーの準備をする事になる」

「・・・2人の時はシャトレアと呼んで下さい」

 マナエルの言葉を遮りシャトレアは不満そうに口を尖らせている。

「そう言う訳にはいかない、どこで誰かが聞いているかもしれないから諦めろ」

 マナエルの素っ気ない返答にシャトレアは納得のいかない表情だ。マナエルはそんな事を気に留めないで何やら文章が書かれた紙を渡す。

「確かベネットだったかあの従者?コレを渡すように言われている。宣言と祝福の言葉の文面だ、しっかりと覚えておいて下さいとの伝言だ、聖女シャトレア様」

 チラリと見るとギッシリと細かく文章が書かれている。

「こ、これを全部ですか?」

「・・・だそうだ」

 マナエルの非情な宣告にシャトレアが項垂れしまった。


 開幕式のセレモニーにはまだ時間があるようで、豪華な控室に通される。

「お、おお、おおお覚えなきゃ!」

 控室に入るなり必死に文章や読み返し始める。大変そうだけど、逆に文面を覚えるだけなら楽な気がする、もしコレを自分で全部考えないといけないのだったらもっと大変だよ。

「会場に行くのは1時間後だ、それまでに覚えるんだな」

 マナエルが当然と言ってのけ、シャトレアに同情する様子は一切ない。

 そう言えばこういう人だったな・・・

「2人はどうする?セレモニーを見るなら私と一緒にいる事になるが?」

 そりゃあ、折角の晴れ舞台だし、主役のシャトレアに引っ付いていく訳にはいかないか。

「マナエル、是非ともお願いします」

『私も観たいです』

 マナエルは頷いて了承してくれる。それでも一番の特等席でシャトレアの晴れ舞台を観れるなら最高だ。


 それでも1時間の空きがあるのか。シャトレアは宣言文と祝福の言葉を覚えなきゃいけない、私達がいても邪魔なだけだ。

「マナエル、少しだけコロッセオの中を見てきても良いですか?」


「えっ!?」


 最近のシャトレアは耳が良すぎないか?


「ま、まさか私を置いて行くのですか?」

 今にも泣きそうな顔をしている、そんな事言っても私がいても邪魔なだけだと思う。

「聖女様?少し自覚が足りないようですね・・・」

 マナエルの圧でシャトレアは泣きそうだ。地位はシャトレアの方が上でも立場はマナエルの方が依然として上のようだ。

『あの、さすがに私達だけ遊んでいては悪い気が』

 リューは本当に優しい、私達はシャトレアに付き合わなくても良いのに。

「・・・仕方がありませんね、見学はまた今度にしましょうか」

「そ、そう言う訳には行きません!私のせいで皆さんに迷惑をかけるのもどうかと思います」

 シャトレアはいったいどうしたいんだ?

「つまり・・・一緒に行きたいと?」

 マナエルが言葉がトゲトゲしい。シャトレアは心の中を見透かされてしまったのかどんどん小さくなっていく。

 何とかしてあげたいけどなぁ・・・


「マナエル、例えばカンニングとかはダメですか?この文章を読み上げるとか」

 試しに尋ねてみるとやはりダメみたいで首を横に振る。

「あ、なら文章の書いてある紙を見るのではなく、私が声霊魔法で読み上げるのはどうです?これならシャトレアだけに声を届ける事が出来るはず」


「それです!!」

 シャトレアの歓喜の声が部屋中に響き渡る。

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