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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
427/499

427.入国

 ーーシャルロッテーー



 朝にオルベア神聖同盟を出発し、夜にはクリストア王国に到着するらしい。

 オルベアは最新鋭でアニメに出てくるような流線形のフォルムの高速飛空船を所持しており、その技術力の高さを自慢するかのようにギリギリ最後の大トリで入港するとの話だ、なので今は着陸する順番待ちのためクリストア王国の王都上空で待機している。


 私は従属者の海の妖精リューと一緒にシャトレアの部屋に身を潜めて外の様子を眺めている。初めてオルベア以外の国へ行くわけだが、窓に映るクリストア王国の様子から察するにおそらく人々の生活水準はオルベアと同等のくらいでクリストア王国もかなり裕福な国のようだ。


 コンコン

「私だ」


 ドアをノックする音がして、聞き覚えのある声が聞こえる。

養母様(おかあさま)!」

「・・・違う、アルテアナ卿と呼べ」

 シャトレアがいきなりダメ出しを食らっている。

「ううう、やっぱり慣れません」

 この2人はついに親子関係を解消した。マナエルを母として慕っているシャトレアにとって、今さら他人のように振る舞うのは難しすぎたようだ。

「とにかくそこは慣れろ。特に公の場では母と絶対に呼ばないように、アルテアナ卿が難しいならマナエルと呼び捨てにしろ。聖女の方が身分は上なんだから全然問題ない」

「そんなの絶対に無理です!」

 シャトレアが高速で首を横に振る。マナエルは呆れているが、ここのところ毎日のようにこのやり取りを繰り返している。


「私は聖女シャトレア様と呼ばないといけないのだが?」

「私などに様なんていりません!!」


 相変わらず話し合いは平行線のようだ。


()()()()()()、見て下さいクリストア王国の王都ですよ!」

「・・・シャルロッテ様ぁ?」

 本当にマナエル同様シャトレアも感情表現が豊かになってきた、冷やかしで「様」をつけて呼んでみたら睨まれてしまった。

『街が綺麗ですねー。こんな高い場所から見る事ができるなんて!』

 リューも窓から外を覗いて感動している。確かに夜景がとても綺麗だ、夜景なんて前世を通しても見たことがないのでちょっとだけ感動している。

「こんなに飛空船が!沢山の国から人が来ているのですね」

 シャトレアも私達と一緒に外を見る、着陸しようとしている先には各国の飛空船がたくさん停泊している。


 コンコン

「聖女シャトレア様、失礼いたします」


 ドアをノックし、いつもの法衣を着た従女が入ってくる。私とリューはすぐに姿を消して身を隠す。

「アルテアナ卿もいらっしゃいましたか」

 従女はマナエルに一礼して入ってくる。

「もうしばらくしたら着陸いたします、部屋から出ずに椅子に座っているようにお願いいたします。アルテアナ卿もこちらに?」

 従女が尋ねるとマナエルは頷く。

「着陸した後の予定ですが、本日はこのままクリストア王城内の来賓館にてお休みになってもらいます。明日は午後より開幕式に参加してもらいます、そのまま聖女就任の宣言をし、祝賀の晩餐会への参加となります」

 明日の昼まではゆっくり出来ると言うことか。ギリギリに出発した割にはゆとりのあるスケジュールのようだ。

「警護にアルテアナ卿に志願していただいたので、すべてに同行してもらいます」

 すると初耳だったのかシャトレアが驚いてマナエルを見る、しかしマナエルは一切表情を変えない。すぐにシャトレアも表情を戻す。その様子を見て従女はニコリと口元が緩む。

「成長されましたね」

 クールで仕事優先な人だと思ったが、こんな柔和な顔が出来るとはちょっと意外だ。

 従女は2人に一礼して部屋から出て行く。彼女もまたシャトレアの成長をずっと見守り寄り添ってきたんだ。オルベア聖教の人間すべてが悪い訳ではない、こうして彼女やマナエルのように優しくて良い人もいるんだ。


「良い人ですね」

 私がつい言葉を漏らしてしまう。

「ふん、頭がガチガチに固い奴だが、悪い奴ではない」

 マナエルより頭が固いの!?

「ふふふ、最初は用件しか話してくれなかったから嫌われているかと思ってました。最近は少しだけ話をしてくれるの、名前がベネットさんっていうのも初めて知りました」

 お世話になっていたのに?シャトレアは最近まで名前を知らなかったようだ。

「あの女、そんな名前だったのか」

 マナエル!?


「間もなく着陸準備に入ります。各自、固定椅子に腰掛けて安全ベルトを装着して下さい」


 船内にアナウンスが流れる。どうやらこれから着陸するようで、各室にある床に固定された椅子に座り、安全ベルトを締める。

 窓を見ると飛空船がゆっくりと降下していく、私とリューも急いでシャトレア達の膝の上に座って待機する。

 特に揺れや振動もなく無事に着陸する、船内アナウンスが着陸した事を教える。

 取り敢えず窓から外を覗く、すでに夜になっているのにかかわらず多くの人々が集まってくる。


「ふうぅ、やっぱり地面に着くと安心しますね」

 シャトレアが大きく息を吐く。安全ベルトを外して大きく伸びをする。

「これより入国審査が入る、シャルロッテとリューは少し離れて身を隠していてくれ」

 マナエルが立ち上がると私達に指示を出す。そして少し思案顔をする。

「そのまま離脱しても良いぞ?もう自由だ」

 マナエルが含み笑いをする。


「ふふふ、ご冗談を」

 悪いけど私にはそんな気は毛頭ないよ。


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