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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
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41.極秘同盟

 ガンっ!!


 久しぶりのカガミンアタックをアホ爺にぶっ放した!


「ふぐぁ!!」


 ハズリムさんは頭を抱えて悶絶している。


「ふざけたことぬかすな!バカ!!」


 私は温厚な人間だと自負している、それでも我慢できないことだってある。


「アンタの嫁が、シェルさんが!敵側の私達に頭を下げて、アンタを助けて欲しいって言ったんだぞ!!」


「そんな人の気持ちを無下にするなよっ!アンタはそれだけ大切に思われてるんだから、しっかりその気持ちに応えてあげろよ!!」


「もう、頭来た!私が意地でも絶対治してやるから覚悟しろよ!」



 はぁぁ・・・やってしまった。


 ムカついたとはいえ、怒りのままにぶちまけてしまった。

 あぁ、どうしよう・・・

「ラヴィリス様?大丈夫ですか?」

 この声は、我が愛しのアイネちゃん。その後ろにはシェルさんもいる。


「本当に申し訳ありませんでした。夫が間違っております、十分に言い聞かせますので、どうかお許しを」


 私に深々と頭を下げるシェルさん、貴女が頭を下げなくてもいいのに。


「・・・やらかしてしまいましたね、こちらこそ申し訳ありません」

 一応失礼は謝罪しなくてはならない。

「いえ、私の言いたいことを代わりに言って頂いて本当にスッキリしてますよ、ありがとうございます」

 いい笑顔だ、ちょっと救われた。


 さてと、治すと言ってしまった手前どうしようか?

(人体の欠損を復元させるにはエリクシル以上の神薬が必要になります、製作は可能ですが材料がありません)


 治癒魔法じゃ治らない?


(千切れた腕を修復するならともかく、ゼロからの復元は普通なら不可能です)


 エリクシルとかエリクサーかぁ、どう違うの?


(エリクサーは寿命まで復元します、エリクシルは寿命までは復元しませんが、欠損部位等の復元まで可能です)

 材料は、うわ、古代龍の心臓とか魔王核?世界樹の種とか集めるのは不可能じゃないか?


(時間をかければ可能かと)

 集めている間にハズリムさんが死んじゃうよ。


 例えば義手みたいな代わりのものでなんとかできないかな?自由自在に自分の腕のように扱えれば。


(可能性があるのは従僕魔法ですね)


 私もそう思っていた、問題はハズリムさんが地属性かどうかだ。


(あの方の属性は不明ですが、マキシムとリマさんの件がヒントになると思います)

 そうか、マーナを従属させてハズリムさんと契約させる。マーナに神樹魔法を授与して義手を作ってしまおうという事か、いける気がする。


(神樹の代理はラヴィリス様で可能なのは実証済みなので後は説得次第です)


 よし、方針が決まったら先にやる事やってしまおう。ハズリムさんの属性も知りたいしね!



 考えがまとまり私はハズリムさんの部屋に入る、


「・・・・」


 沈黙が痛い、私がまだ怒っていると思っているようだ。


「迷惑をかけてすまなかったラヴィリス様。どうやら私が浅はかだったようだ」

 ハズリムさんが謝罪を口にする。


「ちゃんとシェルリースさんと話をしましたか?」


「あぁ、あまりに自分勝手であった、シェルには迷惑をかけてばかりであった」


「うふふふふ」

 シェルさんはニマニマしている。はいはい良かったですね。


「やはり腕は切断しますが、私が責任を持ってなんとかします。よろしいですか?」

「ああ、頼む!」


 工程を説明する、腕をラルズさんに切ってもらい、私とアイネちゃんですぐに治療するという作戦だ。


「では、参ります」

 神速の剣がハズリムさんの腕を切断する。

 ハズリムさんのものではないので痛みはあまりないようだ。出血は多少あるものの、私とアイネちゃんが2人がかりで止血する。


(いけません!生きてます!左腕が逃げます!)


 突然、カガミンの警告が聞こえる、私はすぐに反応する!


「逃すかぁ!葬花の封帯!!」


 部屋全体を花が封鎖する、逃げられないと悟った左腕は変態していき異形の怪物となる。


ガルバルディ

種族:人造生成物(ホムンクルス)

所属:バルトハイトの子供(培養中)

LV:15 HP:50 MP:40


 解析をする、対して強くないが現状は不利だ!

 私は残った一輪の花しか武器はないが構える。


「瞬火よ、獲物を借りるぞ」


 一瞬の出来事だった。


 ハズリムさんがラルズさんの剣を持つと、かつて左腕だったホムンクルスは瞬時に切り伏せられていた。


 私達はポカンとして何も出来なかった。ようやく正気に戻る。あっ、傷口から相当の血が落ちている。

 治療中で片腕だけであの強さ、剣聖の名前は本当に伊達ではなかった。



 治療中に飛び出した事をアイネちゃんに怒られているハズリムさん。だが本人はストレスが発散できたのか楽しそうだ。

「しっかし、お嬢さんはいいなぁ!ウチの孫の嫁にこないか?」

「お断りです!」

 爺ジョークに真面目に答えるなよアイネちゃん!それにしてもゼル君、嫌われすぎて可哀想すぎる。

 さてと、ちょっと気になる事ができたので聞くか。


「ところで、バルトハイトという名前を聞いたことありますか?」

 ホランドさん含め全員が私を見る、


「どこで、その名前を?」


「・・・さっきの左腕ホムンクルスの錬成者です」


・・・あれ?


「バルトハイトはこの国の宮廷錬金術師です」


・・・という事は、やはり黒幕はその錬金術師?そして宮廷薬師のオズリットもグルかもしれない?


 全員が顔を見合わせる。


 空気が重い、ふとホランドさんが口を開く

「今回、私共がここまで来たのにはある目論見があったからです、立証が難しい案件だけに少しでも証拠物が集まればと思っていた」


「しかし、これはあまりに酷い!貴族の吟持も誇りを踏みにじる行為だ!」


「協力体制をとりましょう!相手が宮廷に根付いているので表立って宣言するわけにはいかないが、これ以上の横暴は断じて許せん!」


「・・・極秘同盟というわけか、いいだろう倅に言っておこう。好き勝手されて黙っている程、まだ老いぼれておらんわ」

 やはりホランドさん、連れて来て正解だった。


 一方の私は頭を抱えていた。


「さっき倒した左腕、魔導核じゃん!」

 責任もって治すって言っちゃったよ、



・・・どうしよう。


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