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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
407/499

407.大魔導ルイス

「本当にここに出るのだな」

 出た先はハズリムさんも見覚えがあるようだ、ここはグランドル邸にある秘密の地下通路だ。

「ふふふ、何かあればここから逃げられるのね。やったわ!」

 シェルさんは嬉しそうに笑っている。

「この学園から東側にも延びてたから、おそらく王都の外にも出られそうですなんです」

 何かあった時の保険程度と考えて欲しいけどね。

「本当にサンクリス皇都の地下を思い出すな」

 ダイスさんがデジャブに苦笑いしている、命懸けの戦いであったが今では良い思い出になってしまったな。

 再びコノハが隠蔽装置を動かして元に戻す。

「ここの不自然な凹みが起動装置じゃ、魔力を流せば扉が動くはずじゃ」

 試しにシェルさんがやってみる、一度魔力を流すと扉が開き、再び魔力を流すと閉まるというオン/オフ方式みたいだ。

「素晴らしい、さすがコノハ様ですわ」

 シェルさんが終始ニコニコしている。何がそんなに嬉しいのやら。


 地下道を通りゾロゾロと地上へと向かう。ここまで来たら駕籠ゴーレムはお役御免で土へと帰る、シェルさんやミュースちゃんは勿体ないと嘆いていた。おそらく乗りたかったと思われるアイネちゃんとリプリス姫は相当ガックリしている。

「え!?何で姫様が!?」

 地上へと出て、迎えに来たハーシュさんがこの面子を見て驚いている。

「今日はここを借りるよ!」

 リプリス姫が素敵な笑顔で入っていく。その様子を呆然とハーシュさんは見送る。

「・・・むかついたらガツンと分からせて良いからね」

 シェルさんがハーシュさんの肩を叩く、私もその意見には激しく同意するよ。



 今日の魔法の訓練はグランドル邸の中庭だ。

「豊穣ノ息吹」

 今日は私がミュースちゃんのために魔法陣を敷く。今日も魔力制御の練習だ、小さなライトボールを3つ作ってお手玉してみせる。

「面白そう」

 さっそくミュースちゃんが真似るが、3つ作るのは難しいようで苦戦している。

「お手玉なら得意じゃ!」

 コノハが勝手に参戦する。土でお手玉を作ると4つ同時で投げ始める。3つ以上でやるのは本当に凄い、得意と言うだけの事はある。

「ねえ、コノハ様ぁ、遊んでないでさっきの話の続きをして下さいよ」

 ここでリプリス姫がコノハに甘えた声を出す。

「おお、そうじゃな。遊びながらでも良いなら話を続けるかの。ルイの話じゃったな」

 敷物を敷いて皆が中庭に座る、シェルさんまでいるという事は興味があるようだ。


「そうじゃな、バンゲアでアトラス達がマハザエル様と戦った話は知っておるのかな?」

 いきなり伝説の話をされて全員が面食らっている、

「マハザエル様と呼ぶという事は、やはりクロノス様みたいな感じですか?」

 アイネちゃんが思い出すように尋ねる。ここは私が答えよう。

「はい、暴虐の魔神マハザエルというのは人の伝承によって勝手に植え付けられたモノです。本当は降魔神アスラ様という方で実際に会いましたが、とても良い神様ですよ。ただ少々ナンパな感じでしたが・・・」

 艶っぽいんだよな。私はナンパされた事がないから分かんないけど、ホイホイついて行ってしまいそうだ。

「まあ、なんじゃ、可愛い女子がいると声をかけないのが失礼にあたると言っておった」

 コノハも苦笑いしている。

「色々な神様がいるのだな。クロノス神も相当に愉快な神様だったが」

 ハズリムさんが腕組みしてクロノス様を思い出している、単なる悪戯ジジイだけどね。


「ルイスは当時の火の女神様の御使ヴェルカノ殿の従属者での、ヴェルカノ殿に頼まれてアトラスらに協力してくれたのじゃ。本当に生意気での、奴が一つ言えば妾が十返し、口で勝てないと分かると暴行してくる最低な奴じゃった」

 その下りはよく知っている、喧嘩しているのを何度か拝見したからね。

 でもルイスはチビ共の口車に乗らされたとキレていたから、ヴェルカノ様との関係も喧嘩友達みたいだったかもしれない。

 私の中ではルイスは面白担当になってしまった。


「まあ、出会った当初は未熟だったが、100回失敗しても101回目に成功すれば良いという思考の努力家じゃった。本人は隠れてコソコソ内緒でやっていたが、周りからしたらバレバレじゃったなぁ。火属性が機甲兵に効果的ではないと思い知ると、有効的な地属性魔法を身につけ、治癒魔法の限界を知ると薬術を覚えたりと、いくつもの壁にぶち当たってもそれを一つ一つ壊してきた。本当に稀有な存在じゃった」

 過去を懐かしむ顔がどこか嬉しそうだ。

「ルイスは北の方、鉱山がある大田舎から来たと言っていた、確かベラルーンという地名じゃ、今はないかもしれないがの」

 するとシェルさんが手をあげる。

「ベラルーンは今でもありますよ、私の故郷がそこですから。つまり大魔導ルイスは本当にこの国の生まれだったという事ですね」


 シェルさんの田舎?

 ああ、シェルさんは北国出身でベルベレッサさんの妹分だったな。そう言えばウィリアム領は鉱山資源が豊富とも言っていたな。


「貧しい鉱夫の一家に生まれたと言っておったが、最初に解析した時は平凡じゃった。恐るべきはそこからの成長力じゃ、気がつけば5つの属性魔法を覚え、地属性専門のテセアや雷属性専門のラーナをあっという間に追い抜いて行きおったわ」

 コノハの乾いた笑いがその凄さを物語っていた。


「魔神化したマハザエル様を倒した後、本来のルイスの役目は終わったはずじゃった。だがその後も天空の国ラ・ムーの討伐にも同行しての。最終決戦の地、バベルの塔まで共に旅をした」


 バベルの塔・・・アルカトラズの事か。


「太陽王ラ・マーを追い詰めたものの、奴が不死の魔王を解き放った事で取り逃してしまったのじゃ。その後の行方は分かっておらぬが、奈落の闇に身を投じてその命を絶ったという憶測じゃ」

 それは間違いない、ラ・マーの最期はセツハとレヴィアタンの記憶で見た。


「一応、ラ・マーが生きているかもしれないと警戒はしていたが、天空の国ラ・ムーが滅び戦争は幕を閉じた事にした。後はアトラスを中心に新たな世界を作る事となった。アスタシア王朝はアトラスらが築いた国じゃ、平和の維持に妾も協力をした。もちろんテセアやラーナやルイスもな。皆が平和を願い、一致団結して新たな世界を築こうとしたのじゃ」


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