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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
404/499

404.学園の仕掛け

 翌日、私達はコノハが言っていた仕掛けを見に行くことになった。

「休みに入っても学校に来ている気がします」

 アイネちゃんは苦笑いをするしかなさそうだ。

「お待たせー」

 ここでミュースちゃんとリプリス姫がハズリムさんに連れられてやって来る、午前中はベリーサさんが動けないらしくて代わりにハズリムさんが迎えに行く事になったらしい。


「最近毎日会ってますね?」

「うふふふ、毎日が良き日です!」


 リプリス姫には皮肉が通じないようだ。

「シェルリース様は?」

 アイネちゃんがハズリムさんに尋ねる。

「後から別に来るとは言っていだが。お、来たな」

 コソコソと裏手から入ってくる一行が見える。小柄な女性と大柄な男性、そして若い男性の3人組だ。


「ゼル!」

 アイネちゃんがその男性を確認すると声を上げる、すると向こうも気がついたのか小さく手をあげる。

「ゼルさん、お久しぶりです。ダイスさんも元気そうで良かった」

 私も声をかける。アイネちゃんの婚約者で、グランドル家の嫡男のゼル君と、元冒険者でサンクリス皇国で一緒に戦った以来の仲間のダイスさんが笑いながら挨拶をしてくれる。

「ふう、ダイスを借りようとしたら、オマケがついてきてしまったわ」

 ゼル君を睨みながらシェルさんが謝罪する。婚約者同士なんだから別に良い気がするけど、家の方針のようだから仕方ないだろう。

「ゼルさん、ダイスさん、こちらが私の姉のコノハ様です」

 2人は初対面だったな、この2人なら信頼できるから良いよね。

「シャンティから話は伺ってますよ、とても世話になったと聞きました、俺からも礼を言わせてくれ。感謝いたします」

 ダイスさんがコノハに頭を下げる。冒険者パーティーは解散したとしても気にかけていたんだろう。

「いやいや、妾はたいした事はしておらんよ。こうして再び外の世界に出るきっかけになったと思っておる、しばらく世話になるので、よしなに頼むのじゃ」

 コノハも丁寧に頭を下げる。ダイスさんは常識人なので大丈夫だろうな、

「こちらのゼルさんはアイネちゃんの婚約者なんですよ」

「ほう」

 コノハが浮ついた話に反応する、やはり女子なのでこれ系の話は好きなんだろう。


「私の可愛いアイネちゃんを奪った男なので多少は虐めても良いですので」

「ほう、それはいかんの」


「なっ!?」

 私達の冗談を間に受けたのか、ゼル君は狼狽えている。

「ふふふ、まあ、私にとってゼルさんも同じくらい可愛いですけどね」

 こういうクールなイケメン男子が狼狽えるのは眼福だよ、とても良い反応をしてくれる。

「か、からかわないで下さい」

 ゼル君は本当に可愛い反応をしてくれる。昔のツンツンしていた頃も良かったけど、牙を抜かれた今も悪くない気がする。

「ほらほら、ゼルも簡単にからかわれるんじゃないの。さっさと行くわよ」

 シェルさんに促され、取り敢えず学園の中に入っていく。


「そう言えばゼルさんは生徒会に入ったのですね?」

 久しぶりなので根掘り葉掘り聞きたい。ゼル君が生徒会のトップと言うことは、アリアス王子やゴメスさんのお孫さんのドリル子ちゃんはどうしたのだろうか?

「アリアス殿下らが生徒会から除籍処分になったので、なぜか俺が周りから担がれる事となってしまって」

 ゼル君がため息まじりに笑っている。生徒会から除籍か、色々とあったから仕方がないのかもしれない。

「それと、お耳に挟んでもらいたいのですが、シルヴィスト・ミハイルが家庭の事情で自主退学したようです。表沙汰にはなってませんが、例の悪鬼との関係が疑われているので、しばらくは侯爵家のゴタゴタが続いているようです」

 ミハイル家か、確か私達を襲ったのはマリナ・ミハイルというルーネイアさんを嵌めた女だったな。ルーネイアさんへの呪詛種の件もあるし、確かに疑惑の温床とも言えるな。

「ふう、家庭の事情とはいえ学園まで辞める必要はないと思うけれどね」

 シェルさんがため息を吐く。元敵対派閥でも生徒の1人として思っているのだろう。

「・・・ハズリムさんシェルさん、この件で誤解や逆恨みを生むかもしれないから気をつけて下さいね」

 何となく嫌な予感がする、今の現状が変な風に受け取られかねない状況だ。

「ええ、分かっているつもりです。私達も下手な事は言わないですし、ゼルに関しても周りに担がれたのは周知されているので大丈夫だと思います。リントワース卿とも情報を共有しているので、何かあればすぐに連絡を取り合えるようにはしていますよ」

 さすが百戦錬磨の大貴族だ、ちゃんと予防線は敷いてあるようだ。



「確か、こっちの方じゃと思ったが・・・」

 先行するコノハがキョロキョロと周囲を見渡して、進んでいく。

「こっちは講堂ですね」

 コノハを先頭に講堂にはいる。広々として天井が高く、ドーム状の屋根が珍しい建物だ。私も初めて入ったがこんな場所があるんだ。

「懐かしい、入学式はここでやりましたね」

 アイネちゃんが懐かしむように見渡す、誰もいないので閑散としており私達の声だけ響いている。

「おお、ここじゃ、ここ。えーと装置は、どこじゃったかな?」

 目的地らしくてコノハが壇上を調べ始める。

「あ、何か出てきた」

 講堂の中央の床が一部開いて何やら魔導装置が現れる。

「よしよし、これに魔力を流してと・・・」

 コノハが魔力を流すと講堂の壁が真っ黒になり、光が遮断され、講堂全体が暗闇に包まれてしまった。

「それで、この真ん中の投影装置に・・・白雷!」

 雷魔法?すると中央の装置が光を乱反射して真っ暗な講堂に幻想的な光のオーロラが投影される。

「凄い、綺麗・・・」

 感嘆の言葉が誰もとなく漏れてくる。

「懐かしいの、テセアがこれが好きでな、雷属性魔法を覚えようとしたが結局覚えられなかった、なので仕方なく妾が代わりに覚えたのじゃ。よし次は紫電」

 今度は紫色の光が投影され、オーロラも紫色へと変化していく。

 そう言えばコノハのステータスを見た時に、電属性魔法があるのを思い出す。

 あの時は戦闘用かと思っていたけど、実はこのためだけに覚えたのかもしれない。


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