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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
403/499

403.聖女様のおもてなし

 しっかりと聖女の姿を見させてもらう。

 小柄で可愛らしい容姿をした少女が恥ずかしそうに微笑んでいる。淡い栗色の髪を地味に後ろで一つに束ね、見た目から分かるように純朴そうでとても悪人には見えない。

「年齢は私と一緒です」

 アイネちゃんが追加情報をくれる。

「えっと、先代聖女のシャルル・アスタシア様の娘で二代に渡り聖女に選ばれたそうですよ」

 ん?シャルル・アスタシア?どこかで聞いた事ある名前だ。


 そうだ、ボルトス神父が言っていたオルベアの奇跡シャルル・アスタシアだ。

 その存在のせいで聖母マーサが狂ってしまったと言っていたな。


「天使の歌声を持っているって言われて有名なのです。その歌声を聴くだけで涙が溢れ、心が幸せに満たされていくという噂ですよ」

 アイネちゃんがトリップ状態だ。

「ふーん、噂ねえ」

 さすがシェルさん、噂は話半分といった表情だ。



 そう言えばボルトス神父の言葉を思い出す。


 この聖女シャトレアはシャンティさんの妹かも知れないのか、確かにどことなく似ているような気がする。まあ、清純さで言えば間違いなく聖女シャトレアの方が上だけど、髪の色や小柄なところや可愛らしい容姿など共通点は多い気がする。というかシャンティさんっていくつなんだ?テルーさんの姉貴分なんだから年上だよな?童顔すぎて分からなくなる。

 そして聖女シャトレアも修復魔法のような「理の外の力」を持っているのだろうか?その辺りも気になる所だ。

 この事を知っているのはシャンティさん本人とボルトス神父だけだよな?

 レアンさんあたりも知っているかな?何にせよシャンティさんに何て言えば良いのだろうか・・・それとも一回この写真の少女をボルトス神父に見せた方が良いだろうか。


 カガミン、この絵を記憶できる?

(・・・はい、記憶完了しました)

 鏡に聖女シャトレアが写っている。本当にカガミンは万能だよ。



「それで、おもてなしはどうするのですか?」

 聖女の写真を返し、尋ねると2人は難しい顔をしている。

「私は露店巡りをしたかったんだけど、みんなに即却下されたわ」

 リプリス姫が頬を膨らませる。

「当たり前でしょ!!」

 シェルさんやルーネイアさんが呆れている。

「音楽が好きと聞いたので、無難に歌劇でも招待かなと思います。それと後は臨時出店しているフレイアに招待し、この前食べた蕎麦とかラーメンを食べてもらうとか考えているんです、この2つは珍しいですからね」

 おお、アイネちゃんがマトモに見える。確かに蕎麦やラーメンは珍しくて美味しいから喜びそうだ。


「・・・歌劇って、この国にそんな芸術的なものがあったんですね」

「有りますよ!馬鹿にしないでくださいよ!」

 リプリス姫が可愛らしく頬を膨らませている、こうしていると可愛いんだけどなぁ。


 まあ、前世から通じて私が芸術に興味が無さすぎなんだと思う。音楽なんて全然興味なかったんだよなぁ。昔友達が歌っていたのを聴いた事があるけど、聴くだけだった気がするし、一応カラオケとか行って歌った事あるけど誰も何も言わなかったなあ、要するに下手クソだったのだろう。

 少しだけ悲しい前世の出来事を思い出してしまった。

 

「後は闘技場とか名物はありますけど、さすがに聖女様をそこへ案内するのはどうかと思いますよね」

 どうやら2人で色々と頭を捻っているようだ。

「ふふふ、悩み考える事は良いことよ、一生懸命頭を使いなさい」

 シェルさんは今の二人の姿を嬉しそうにしている。この様子だと何もアドバイスをするつもりはないようだ。2人もそれをわかっているのか何も言わない、だけど何故か私の方をチラチラ見ている。

「・・・アドバイスはいらないのでアイデアを下さい」

 何で私に聞く?

 アドバイスはいらないけどアイデアは欲しい?物は言いようだな。

 私はシェルさんに視線を向けると、何も言うつもりはないらしい。


 アイデアねぇ。あんまり王都を散策してないから何があるか分かんないだよね。

「例えば、古い歴史的な史跡巡りとか?」


 うむ、我ながらつまらない。


「・・・まあ、歴史は向こう(オルベア)の方が断然古いですけどね」

 シェルさん、せめてフォローしてよ!

「で、でも学園なんて1000年クラスの古い建物なんでしょ?」

 コノハがあそこはバルムスカ城の跡地だと言っていたはず。

「・・・でも学園は良いかもしれないです。生徒の発表とか展示物が色々と催し物をやるんでしたよね?新しく生徒会はゼル中心になったそうだし、話せば融通してくれるのでは?」

 アイネちゃんが思い付いたように手を叩く。


 あら?ゼル君、最近見ないと思ったら生徒会に入ったの?私がシェルさんを見る。


「・・・本人はあまり乗り気では無かったようですが周りに担がれたようです。今の状況がまるで学園をグランドル家が牛耳っているみたいで嫌だったようですが、周囲に外堀を埋められて逃げられなかったみたいです」

 シェルさんが呆れるように笑う。生徒会なんて縁のない世界のような話だから何とも言えない。

「本当はアイネさんを誘うつもりのようでしたが、間違いがあるかもしれないからダメとハーシュに言われて諦めたみたい」

 シェルさんがニヤニヤしている。でも、この2人に限ってそんな間違いを犯さないと思うけど。


「そう言えば聖女様って学校とか通っているのかな?」

 ここでリプリス姫がボソッと呟く。

「そうね、向こうの文化では教会や神殿が学校みたいなものね。上の方に神学校があるらしいけど、宗教を教えるだけみたいね」

 こういう情報が欲しい時のシェルさんは本当に頼りになる、

「なら、学園に招待しようよ!あそこなら私達の庭よ!歴史的にも古いし催し物もあるんでしょ?それにあの建物を隅々まで知っているコノハ様がいるじゃない!」

 リプリス姫が嬉しそうに手を叩く、一方のコノハを見ると何か考え込んでいる。私達の視線に気づくとコノハは顔をあげる。

「いや、見せ物になるかどうか分からないが、確か遊びでテセアとある仕掛けを作った記憶があるのじゃが、まだ生きているじゃろうか?」


 仕掛け?


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