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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
402/499

402.邪魔をする姉達と心労の絶えない母

「でも私のはダメで、何でハーリス君のはゴーレムになったのでしょう?」

 まあ、私の方がセンス無いのは分かるけど。

「いや、ラヴィリスのも魔力をしっかり練り込んであるから造形はクソじゃが一応動くぞ?ただベリーサ殿によって破壊されたからの、もう動かぬ」

 造形がクソとか言うな!それに何だよ、やっぱ動くじゃん!

「あんなおぞましいモノは動いてはいけません!」

 この女(ベリーサ)、マジでムカつく。

「ぶ、豚としては可愛かったわよ?ぷふふ」

 シェルさんが俯いて笑いを堪えている。本当に失礼な奴らだ。


「え?ハーリスとミュース様!?」

「凄い!もう一体マキシムさんが!?」

 後ろの方から若々しい女の子の声が近づいてくる、声の主はアイネちゃんとリプリス姫だ。

「「姉様!!」」

 ハーリス君とミュースちゃんの声が揃う、狼ゴーレムに乗って豊穣ノ息吹の範囲の際まで駆けていく。

「これは土?それにしては表面とか綺麗」

 2人が乗っている狼ゴーレムの精巧さに驚いている。

「ハーリスはゴーレムマジックの才能があったみたいじゃ。初めて作ったのにここまでスムーズに動くのは中々ないぞ」

 コノハの解説にハーリス君は嬉しそうだ。

「ね、ねえハーリス、姉様も乗っても良い?お願い!」

 アイネちゃんが弟におねだりしている。姉は弟と姫様のランデブーを邪魔するようだ。

「うん!いいよ!!」

 ハーリス君!?

 そこは取られちゃいけないだろ!


 アイネちゃんは2人から狼ゴーレムを奪い、嬉々として跨る。

「凄い、凄い、凄い!!」

 あれ?何かアイネちゃんでもスムーズに動かしているんだけど?


(豊穣ノ息吹の付加効果のようです。コノハ様の魔力を通してアイネさんが操っている模様です)

・・・それって凄いのでは?


「ふふふ、メルブラント邸でサレン殿とユミル殿が氷鏡結界を妾に代わり操作していたのを覚えているかの?」

 私が不思議そうな顔をしているのを見てコノハも説明をしてくれる。

「これが豊穣ノ息吹の最強の武器といえるの。範囲内にいる者に魔法操作を代用してもらえるのじゃ、つまり操作が必要なゴーレムマジックや、ラヴィリスが昨日使った光輪を誰かに代わりに操作してもらう事ができるのじゃ!」

 これは凄いぞ!ゴメスさんやオーレンさんのように能力が高いのに魔力限界という(かせ)がある人にとって抜群に良い魔法じゃないか。

「アイネ!次!早く変わって!!」

 一方、向こうではリプリス姫まで乗りたがり、姉同士の醜い争いが始まっていた。


「あ、ハーリス、こんなところに!!」

 ここで遅れてお母さんのルーネイアさんが屋敷からやって来た。どうやら屋敷にハーリス君がいなくなっていたので探しに来たようだ。

「あら?ミュース様と・・・」

 ハーリス君とミュースちゃんは2人並んで姉達の醜い争いを傍観している。というかよく見ると2人は手を繋いでいる。

 ああ、狼ゴーレムから降りる時にハーリス君がエスコートしたからか。


「ルーネイアさん、気をつけなさい。このまま行くとすぐにレイアに見つかるわよ。フットワークが軽いから呆けているとあっという間にハーリス君を取られてしまうわよ?子供が可愛いいならしっかり守りなさい」

 シェルさんが苦笑いをしながらルーネイアさんに忠告する。

「は?・・・えええええ!!??」

 ルーネイアさんの素っ頓狂な声があがる。

「あそこにいるリプリス様の姿を見てみなさい、間違いなくベリーサと同じ将来が見えるわ」

 シェルさん酷い・・・

アレ(リプリス)と結婚したいという男は中々現れないわよ、強すぎるもの。おそらくレイアも薄々勘づいているはず」

 ルーネイアさんがカタカタ小刻みに震え始める。

「そこへ引っ込み思案で内気な下の娘の前に、将来有望かつ人当たりが良くて、相性の良さげな男の子が現れたらどうする?上に期待できないなら下に期待するでしょ?私だったら真っ先に囲うわ、レイアの性格を考えるとおそらく私と同じ事を考えるはずよ」

 逞しい母親の思考に驚愕する。


 おそらくミュースちゃんは今日の出来事をレイアさんに喜んで報告するだろう、初めて友達が出来たのなら尚更だ。オマケに将来有望でコミュ力が高く、家柄も良くて、2人は私とコノハが魔法を教えている同士か。

「明日あたりレイアさんが査察に来そうですね」

「ひいっ!」

 私の言葉にルーネイアさんが小さく悲鳴をあげる、彼女の心労は中々絶えないな。



「どうぞ、お茶の用意が整いました」

 お茶の時間になり、中庭にいつも通りティーセットが用意されていく。最近では外でお茶する用に日傘付きのテーブルまで用意され準備万端だ。

「取り敢えずこの本はお返します。一応、ハーシェに翻訳の話はしてみます」

 先に着く前にシェルさんが小声で私に本を返す、

「分かりました、公に出来なさそうなので私の方から伺います。引き受けてくれるのなら連絡をして下さい」

 本を受け取りカガミンの中に戻す、コソコソした話なので私から出向いた方が良いだろう。アイネちゃんは忙しそうだからグランドル家と仲の良いリマさんかカーリンさんに頼もう。

「ありがとうございます。それでは後日連絡をしますね」

 そう言ってお茶の輪の中に入っていく。


 テーブルの上には紅茶と美味しそうなお菓子が並んでいる、だが皆が一斉に手を出すのは例の完熟桃だ。その味を知るミュースちゃんが真っ先に手を出す、それに釣られてハーリス君もアイネちゃんも食べる。皆が頬を押さえてその甘味に溺れていく。

「それで、オルベアからの聖女様のおもてなしの話は終わったのですか?ちなみに、聖女様とはどのような方なのですか?」

 ここにいる面々なら聞いても良いだろう、それに聖女がどんな人か興味はある。ハズリムさん達も興味があるのだろう、静かに聞く耳を立てている。

「ふふふ、聞きたい?」

 リプリス姫が勿体ぶっている。そして一枚の紙を取り出す、そこにはキラキラの聖女の法衣を着た可愛らしい女の子の写真が載っている。やにやら儀式の時のものだろうか?


「彼女の名前はシャトレア・アスタシア様、新しく選ばれた新時代の聖女様よ」


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