表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
十章 クリストア王国建国100年祭編
401/499

401.小さな出会い

「ハーリス君、元気がありませんね?」

「うん・・・」

 どこか沈んだ様子だ。

「姉様やお母様、お父様みんな忙しいみたい。クレアも兄様もいないし」

 ああ、そうか、アイネちゃんがリプリス姫の補助に抜擢されたから、ルーネイアさん達がそれに付きっきりになってしまったのか。

 遊び相手と思われるメイド長のクレアさんはリントワース領に帰っているので不在だ、誰も相手をしてくれなくて退屈なのかもしれない。

「この子は?」

 ハーリス君を知らないハズリムさんに聞かれる。

「リントワース家の末っ子ですよね?確か上の子は孫のベルツと同い年よ」

 シェルさんは知っているようだ。そう言えばこの前リントワース領に来てたから、その時に紹介されたかな?

「シェルさん、少しだけ向こうに行ってきても良いですか?暇つぶしにこの本を置いていきますので」

 すると笑いながら頷いてくれた、私も最近ハーリス君の魔法の練習をサボり気味だったし、誰も相手してくれないなら私が相手をしよう。

「ちなみに、ハーリス君とミュースちゃんを仲良くしたら不味いですか?仮にも相手は王女様ですけど?」

 すると2人はお互いを見合う。

「ははは、私らのようになるかもしれませんな!」

「ちょっ、やめてよ、もう」

 ハズリムさんとシェルさんがイチャイチャし始めた。


 くそ、物凄く気分が悪い!

 仲が良すぎだろ!

 最近は私の前で隠す気も無いだろ。


 まあ、向こうにベリーサさんがいるから大丈夫だろう。惚気(のろけ)爺婆を放っておいてミュースちゃんとコノハのもとへ向かう。

「コノハ様!」

 ハーリス君がコノハを見つけて駆け出す。

「すいません、ハーリス君も一緒によろしいですか?」

 同い年の男の子と女の子の初対面だ、一体どんなむず痒いキュンキュンシーンが見られるだろうか?

「こんにちは、ハーリスです!」

 ハーリス君の先制攻撃!可愛い男の子の満面の笑みの挨拶だ。私だったらこれでイチコロだ。

「・・・こ、こんにちは」

 ミュースちゃんがすかさずベリーサさんの後ろに隠れた。

 これは人見知り防御フィールドだ!ハーリス君はこの鉄壁の防御をどうやって攻略する?

「僕もご一緒してもいい?」

 ハーリス君、意外と積極的だ。相手が王女様だと知らないからできる技だな。


 コク、


 恥ずかしながらも無言で頷く、これは男子はメロメロだ!キュン死するよ!


 見よ!ハーリス君が真っ赤になって・・・いない。


「やったぁ!!」

 嬉しそうに笑う。無邪気だ・・・

 おや?逆にミュースちゃんの頬が赤くなっているぞ?

「・・・ラヴィリス様、楽しんでない?」

 ベリーサさんに睨まれてしまった。青臭いのはお気に召さなかったようだ。


「さて、ハーリス君、この魔法陣の中ではコノハ様の魔力を使ってやりたい放題、好き勝手できます」

「やりたい放題、好き勝手するでない!」

 だんだんとコノハのツッコミが現代風になって来た。

「ゴホン・・・なのでここの土を使って何か作りましょう。何か作りたいモノはありますか?」

 基本の魔力制御の一つ魔力変化の練習だ。私の言葉にハーリス君は周囲をキョロキョロする、

「じゃあマキシム!」

 シェルさんの足元にいるマキシムを指差す。なる程、素晴らしい選択だ。

「マキシム、来て下さい。少しだけモデルをやって下さいな」

 マキシムを呼ぶとトコトコとこっちに歩いてくる。

「見本を見せますよ」

 マキシムの土人形を作る、ここはカッコいいところを見せなくては!


「・・・出来た!これが私のマキシムだ!!」


 出来た土人形は牛のように大きい。出来栄えが気に食わなくて、付け足し付け足しをしていたらとても大きくなってしまった。

 あれ?装飾品は上手く出来るのに?何でだ?


(装飾は創作で好き勝手作れますが、今の状況は模写なのでセンスの問題だと思われます)

 ええ!?違うの!?


「これは・・・豚?」

「違います!!」

 コノハの目は節穴のようだ。せめて牛と言ってよ。


「ふん!」

 ゴッ!!


「あああ!!ベリーサさん、何を!?」

 私作マキシムがベリーサさんによって破壊される。

「やるならちゃんとやれや!!」

 そんなに怒らなくてもいいんじゃ、

「造形がクソじゃの」

 コノハ様!?


「・・・出来た!!」

 私がみんなから責められている後ろでハーリス君が声をあげる。

「すごい、上手!」

 ミュースちゃんの声まで聞こえる、いつの間に打ち解けたの?後ろを見るとマキシムに似たカッコいい狼の土人形が出来ていた。

「おお、これは凄いのじゃ!」

 土魔法とは言え、私の牛さんより100倍上手だ。ハーリス君にこんな特技があったとは。

「ラヴィリス様、コレですよ、コレ。分かります?」

 この女(ベリーサ)、マジうぜえ。


「・・・おや?これは、ゴーレムに出来るぞ?」

 ジッと見ていたコノハが驚いている。ゴーレム?動くという事?

「ラヴィリスや、魔石を一つ貰えるかの?」

 魔石?カガミンから取り出してコノハに渡す。ここで遠くから見ていたハズリムさんとシェルさんもやって来る。

「ハーリスや、その土人形に魔石を埋め込んで其方の魔力を流してみよ」

 魔石を渡して指示する。ハーリス君は躊躇なく狼の目ん玉に魔石をぶっ刺す。魔力の流し方は一応教えてあるけど、ハーリス君の魔力は多くないぞ?大丈夫かな?

「流す魔力は支配者(マスター)を覚えさせるだけじゃから少しで良い、駆動は妾の魔力を使うのじゃ」

「はい!」

 ハーリス君が魔力を流すと魔石に光が宿る、すると狼の土人形は見事にゴーレムとなって動き出す。

「おお、凄いな」

 見に来ていたハズリムさんが驚きの声を上げる。

「ちょっと待っておれ、豊穣ノ息吹の範囲を広げるから少し動かしてみよ」

 コノハが大地に手をついて範囲を広げる、すると魔法陣が半径10mくらいの広さの円になる。

「乗れるかな?乗ってもいい?」

 嬉しそうにハーリス君が狼ゴーレムに話しかける。もちろん絶対服従なので狼ゴーレムは乗れるように伏せ状態になる。そしてハーリス君が跨ると立ち上がって歩き出した。

「凄い凄い凄い凄い!」

 ハーリス君が興奮気味な声を上げる。ゆっくりと私達の周りを歩いている。慣れてきたのか少しずつスピードが上がって歩き方もスムーズになる。

「凄いセンスじゃ。あれだけ見事な造形なら駆動も問題ないじゃろう」

 コノハも舌を巻く、ここまでとは思ってなかったようだ。

 するとハーリス君はミュースちゃんの前で止まる。どうやらミュースちゃんが物凄く羨ましそうにしているのに気がついたようだ。

「いいの?」

「うん!」

 そう言うとミュースちゃんを狼ゴーレムの後ろに乗せる。なんか普通に仲良くタンデムしてんだけど?


「何だコレ?私は何を見せつけられてるの?」

 ベリーサさんの心は荒れ模様だ。


読んでいただきありがとうございます。

次話の投稿は土曜日になる予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ