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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
40/499

40.剣聖と呼ばれた男

 かつて1人の剣豪がいた。


 百戦百勝、パーフェクトの戦績を王都の闘技場で残し伝説となった。

 公爵という地位にありながら王国軍の総大将として君臨し、武の頂点に長く立ち続けた男は現役を退いた際、新たな勲章を授与された。


【剣聖】


 クリストア王国でいや世界で唯一その名を許された男がいた。

 その男の名をハズリム・フォン・グランドルといった。


 ラルズさんから剣聖について聞いてみた。まるで映画のプロローグのような内容だ。実際、ラルズさんも現役時代に何度か挑んだが一回も勝てなかったらしい。


「あの頃は若かった」

 遠い目をしている。ラルズさんは何者なのでしょう。


 秘密の地下通路を抜け、グランドル邸にたどり着いた。リントワースも立派だが、グランドルはもっと立派なお屋敷でした。

 中では学園長ことシェルリース夫人が待っていた。

「リントワース伯爵、わざわざお越しいただき感謝します」

 おぉ、ちゃんとしていると気品溢れる貴婦人だ!

「ラヴィリス様も診療を快諾していただき感謝いたします」


・・・これは威嚇の意ですな。余計な事を喋るなという意味だろう。

 私は静かに一礼して患者をまず診ることにした。


 豪華な廊下の先にたどり着いたのは、極力無駄を排除した、とても貴族とは思えないようなシンプルな一室であった。

 そして、1人の男性紳士が静かに座って待っていた。

「ハズ!横になっていてと言ったでしょ!」

 シェルさんが男性に横になるように勧めるが、聞く耳を持たない、とても頑固そうだ。


「はじめまして、地の女神セルリス様眷属のラヴィリスと申します」


 いつも通りの挨拶をする。すると男性は私を見て目を見開くと、その場で片膝をつき騎士の礼をとった。

「私はクリストア王国公爵グランドル家の先代当主、名をハズリムと申します」


 全員がこの光景を唖然として見ていた。私はちょいと恥ずかしかった。

 見るからに体調が悪そうなので相当無理をしているようだ、私はすぐにベッドに横になるように言った。

 すると思ったより言うことは聞くようで素直にベッドへ横になってくれた。


「正直助かった、実はすぐにでも横になりたかった」

 本音が漏れてるよ!単なるカッコつけかよ!!


「ふん、リントワースの小僧に瞬火のラルズが来ていて情けない姿を見せられるか!」

 ほう、ラルズさんはやはり二つ名持ちのスゴイ人のようだ、

「相変わらずですなハズリム様、お身体のお加減はあまりよろしくないようですな」

「ははは、寄る歳には敵わないということだ」

 自虐的に笑うハズリムさん、私は奇妙な違和感を感じていた。

「ハズリムさん、診断をするので上半身裸になって下さい」

 私が鋭く言うと周囲が緊張に包まれる。


「アイネちゃん!薬鉢で墨をひいて!」

「はっ、ハイ!」

 私は直ぐハズリムさんの身体を触診する、

「・・・おかしい、左腕が()()()()()()()()()()()()()


「いったい何をやってんだ!!」


 私は激昂した!おそらく額に青筋を立てていただろう。

 全員が一言も発っせない、私が突然激昂したことに戸惑っているようだ。

「ラヴィリス様!墨です」

 ビクビクしながらアイネちゃんが私に墨を渡す。ゴメンよアイネちゃんに怒っているわけじゃないんだよ。


 私は墨をハズリムさんの身体に塗りたくる、体が小さいのですぐに全身が墨塗れの真っ黒になってしまった。それでもやめなかった、そしてハズリムさんの身体に塗り終わると地属性魔法を使う、

「リンカーヴェール!」

 不格好に塗ってあった墨が幾何学模様に変化していく。

「ぐうぅ!」

 ハズリムさんが苦しみだす。

「いま、体から浸食部を追い出しています。少し苦しいですが我慢して下さい」

 次は、

「シェルさん!生花を出来る限り沢山持ってきて!」

 私に名前を呼ばれたシェルさんはビックリはしたが、すぐに行動に移した、あっという間に沢山の花が用意された。

「花魔法、葬花の封帯!」

 用意された花がハズリムさんの左腕に巻きついていく。ギチギチに花が、巻きついて動かなくなった。


 しばらくして、ようやくハズリムさんは落ち着いた。

「いったい何が?」

 私を見て答えを待っている。私はカガミンを見て話し始めた。


「浸食腫という呪術です、これは身体を奪うために使用されます」

 全員が息を飲む。

「これは、ルーネイアさんより酷い・・・とても悪意に満ちている。なぜなら人為的に身体を乗っ取ろうとする行為なんです」


 絶句し周囲が沈黙に包まれる。 


「・・・シェルさん、ハズリムさんはいつぐらいから体調が悪かったですか?」

「おそらく、1年程前かしら・・・」

 1年程前、ほぼルーネイアさんと同じ時期だ。


「例えば、傷をつけられたり、薬飲んだり注射をしたりしませんでした?」

「えっ?」

 そう、呪詛腫は基本的に直接体内に取り込まないといけないのだ、

「宮廷薬師のオズリットに薬を処方してもらった」

 気が付いたのかハズリムさんが答えた。


 嫌な予感しかしない!いったい宮廷内では何が起きているんだ!

「でっ、このままじっとしていれば治るのか?」

 ハズリムさんが花でぐるぐる巻きの左腕を見て聞いてきた。

 私は言いづらい・・けど言わなくてならない。

「・・・このまま、左腕の切断です。今は体内を犯していた浸食腫を左腕に追い出しただけです。もう左腕は貴方のものではありません」

 私は真っ青な顔をしていただろう。けど、乗っ取られた身体は元に戻せない。やれる事は切り離してしまうしかない。


「・・・ごめんなさい」

大見得きって診療するとか言っておいて・・・自分が恥ずかしくなる。


「そうか、左腕で良かったな、利き腕の右があれば剣は振れる」


 あれ?何を言ってんだこの人?


「ラヴィリス様、この老骨に生きる道を標していただき感謝する、最期に宮廷の蛆を排除する機会が得られるとは思わなかった」


 はぁ!?


「最期はこの命を賭して奉公をするとしよう」


 何言ってんだ!?


「・・・ふざけるな!馬鹿なの!?」

 最近、怒ってばかりだな私。



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