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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
三章 王都魔法学園編
36/499

36.そりゃないよ

『シェルはシェルだよ!』

 やはり行き詰まるか。マーナの答えは答えになってなかった。


 捜査は難航し、すでに1週間を経過していた、後からアイネちゃんが合流するためにやってきた。私達はシェルをその人の愛称だと判断し、それっぽい人に話を伺うが収穫はなかった。


 木の下で休憩すると、私はふと鋭い視線に気づく。

 例のゼル少年が見ている。どうやら私達の人探しが、何かを企んでいるのだと勘違いして時々監視しているようだ。


 ははは、ここまでくるとストーカーだよね。


 正直言って、実力はアイネちゃんが飛び抜けているからね、授業で突っかかるが返り討ちにされてる。けどめげずに挑むのは偉いな。悪い子じゃないと思うけど不器用なだけだよね、きっと。

「また、いますね」

 アイネちゃんが露骨に嫌そうな顔をしている。アイネちゃんが視線を向けると舌打ちして去っていった。 


 この前で吹っ切れたのか、今では前向きになって明るい顔になった。

「私はラヴィリス様に会えて本当に救われた」

 後日、さっぱりした顔でそう言われて私も少しだけ安堵していたけど。


「それにしてもシェルさんていったい誰でしょう?」

 アイネちゃんが呟く、

「あら、私に何か?」

・・・えっ?振り向くと学園長がいた。


「シェルは私の愛称よ?」

 盲点でした。アイネちゃんが戸惑いの表情をしている。

 あははは、学園長の本名がシェルリース・グランドルでした!


 そりゃないよ!分かんないって!!


 話の切り口を考えているアイネちゃん。

「あっ、あの秘密の匣というものをご存知でしょうか?」

 学園長の眉がピクリと動くが動じない、

「はて、何の事か」


 なかなか強敵ですな。

「マーナという名前にはここあたりは?」

「マーナ?初耳ですね」

 秘密の匣には多少反応したが、マーナには全く反応しない、どういう事だ?マーナの一方的な友達?


「どっ、どうして」

 一方のアイネちゃんは動揺が隠せない。

「貴女がシェルという人物を探していると聞いて自ら名乗り出てきたのですが?」

 うん、アイネちゃんじゃ歯が立たない、私が出てもいいのかな?身バレはまずいかな?


・・・もういいや、隠蔽阻害範囲拡大。


「なっ!?」

「ラヴィリス様!?」

 私は範囲魔法を展開して周囲から見えないようにした。


「・・・何か隠しているとは思ってましたが」

 私は自身の隠蔽を解き、学園長の前に姿をあらわした。

「はじめまして学園長さん。私はラヴィリスと申します。縁あってアイネさんに魔法と薬術を教えています」

 私は極力丁寧に挨拶する。


「貴女はスプライト?妖精の上位種のようですが」

 大したものだ、動揺を見せないように平常心を装っている。

「よくご存知で、私は地の女神セルリス様の直系眷属です」

「なっ!?女神の直系ですって?もしかして貴女は」

「違います!」

 私は被せ気味に否定した。


「なっ!?まだ、何も言ってませんよ!」

「何となくですが、断じて違います!私はお気楽呑気な旅妖精です」


(ぷっ、旅妖精って何ですか?)

 カガミンに笑われた!?


 いや、気を取り直して話を続けよう。

「学園長さん、貴女はこの大樹が神樹に進化したのはご存知ですか?」

「え?まあ、確かに古い大木ですが・・・」

 実際にマーナと会ってもらおう。私は神樹魔法で上に行く道を作ると驚愕の顔を見せる、ようやく表情が豊かになってきた。


『あっ!シェルー!!』


 マーナの反応からやはり学園長がシェルで間違いなさそうだ、

「あっ、貴女は?妖精?」

「彼女はマーナ、この木が神樹に進化した時に生まれた、この木の妖精です」

 いきなりの事にびっくりしているが、すぐに冷静さを取り戻す。

「彼女がマーナさんですか、確かに妖精のようですが本当にこの大樹の妖精かも分かりませんし・・・」

 そりゃ普通は疑うよね。


「マーナ、シェルさんの事、友達なんだよね?」

『うん!いつも私に好きだって言ってくれたよ』


「何を言って・・・あ」

 うん?この反応は黒歴史の予感がする!


『ハズのことが好きで好きで告白の!ぶっ』

 学園長が顔を真っ赤にしてマーナを掴んで口封じする。

 その瞬間、師匠と弟子は息のあったコンビネーションで学園長の動きを封じた。

「マーナ続きをどうぞ!」

『シェルがハズを好きだから私で毎日練習して、ここで好きって言ってた!』

 恥じらう妙齢の女性、真っ赤になった顔を隠してプルプル身震いしている。

「これで信じてもらえたかしら?大丈夫よ、私の事を黙っていてくれれば誰にも言いふらしませんから」


 うふふふ、やった、学園長の弱味を握ったぞ。


「あのハズさんって、もしかして旦那様の公爵の、ぶふっ」

 アイネちゃんがさらに黒歴史に突っ込もうとするが、学園長がそれを阻止する、後で詳しく聞こう。


 ようやく落ち着いたところで本題を切り出す。

「私達はマーナに貴女を探して欲しいと言われてましてね、秘密の匣を直すのに貴女が必要なんだと。まあ、言えなければ結構ですが何なのかを教えて頂きませんか?」


 すると観念したのか学園長が語り出す。

「おそらく学園の地下にある秘密の部屋のことね」

 ほう、そんなものがこの学園の地下に?アイネちゃんもワクワク顔になっている。実は彼女はこういう話の方が好きなのかもしれない。

「古代アーティファクトで非常に危険な存在なので厳重に封印してあるのです。学園長に就任すると、代々その事が受け継がられているんです」

 ではその封印が壊れかけているから何とかしてほしいということだ。


「はぁ〜、よりによって何で私の代で・・・」

 おっと、ちょいと本音が漏れてるぞ。

「なる程、そういう事でしたか。では頑張ってくださいね」

 これ以上の厄介事に深入りしない方がいいな。


 ガッ!

 なっ、アイネちゃんが捕まった!?


「ここまで引っ掻き回してトンズラは酷くない?片足突っ込んだなら一緒にドップリつかりましょうよ!」

 目が座っている!アイネちゃんが涙目だ。

「私1人に重責を負わせるなんて酷いわ!」

 おばさんが何言ってやがる!

「ラヴィリス様の魔法だけが頼りなの!」

 はっきりと私にやらせる気満々だ!アイネちゃんが涙目で助けを求めている。


「はぁ、仕方ありません。私の事を内密にしてくれるなら手伝いましょう」


 学園長は表情をパァと明るくさせる。


「ありがとうございますラヴィリス様!大好き!」


 腹黒いおばさんに言われてもなぁ。


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