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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
二章 リントワース編
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24.悪意の塊

「なっ、何という大きな魔石だ!」


 すっかり元気になったホランドさんがアッシュベアの魔石を前に興奮気味である。

「これをタリスマンに錬成します、体内に入った呪詛をこの中に移します」


 え?猪はどうなったかって?ちゃんと皆さんで美味しくいただきますよ、あれだけあれば半年は食べられるそうです。


 私はこの世界に来て初めて土下座しましたよ?

・・・それが何か?


 さてと本題に戻りましょう。

「奥様はどうですか?しゃべれるくらいには?」

「あぁ、本当に感謝する。今はベッドから起き上って話せるくらいまで回復したぞ」

 それはよかった。奥様とは一度話しておかないといけないと思っていた。

「アイネちゃん抜きで面会したいのですが」

 ホランドさんは静かに頷くと午後から時間を作ってくれた。


「はじめまして奥様、私は地の女神セルリス様の眷属のラヴィリスと申します」

 私は許可を得て、ベッドで起き上がった奥様のシーツの上に立ち挨拶する。

「はじめまして、ルーネイア・リントワースです。この度はリントワースを救っていただきありがとうございます」


 まあ、本番はこれからだけどね。


 しゃべれるまで回復したルーネイアさんを観察する。体調はまだ悪いようだが、前に比べたら大分マシだろう。

 んっ?ルーネイアさんもこちらをじっと観察しているようだ。

「うふふ、失礼。アイネから話は聞いていますが、本当に小さくてお美しい方なのですね」

「ははは、小さいのが取り柄なので」

 私の自虐的冗談にコロコロと笑ってくれる。


「さてと、これから答え辛い質問をしますがよろしいですか?」

 真剣な話をすることにした。

「・・・はい、全て話します」


「今回の件は明らかに人の悪意からなるものです、いったい()()()()で呪詛腫をもらいましたか?」

 ピクッと眉が動く、

「犠牲だと!?どういう事だ!?」

 ホランドさんも状況が飲み込めないようだ、

「・・・ミハイル侯爵夫人、マリナです」

 重たい口を開く。

「なんだとっ!?なぜ侯爵夫人が?我々は派閥の盟友なのだぞ!それにマリナ夫人は君の親友ではないか!」

 どうやらその親友とやらに呪詛をなすりつけられたようだ。


「マリナが、親友のマリナに助けて欲しいと言われて、派閥の未来のためにも、2人で分けあえば呪いも軽くなると何度もお茶会に誘われた時に言われて、ゴメンなさい・・・」

 震えながら独白する。

 自分に向けられた呪詛をルーネイアさんに向けさせたな、よほど後ろめたい事をしているようだ。

「呪詛腫は取り払って良いですね?その親友さんの身代わりを辞めることになりますけど?」

 身代わりを辞めるという事は、その親友モドキのマリナという女に再び呪詛が行くことになる。これだけ周囲を巻き込むような呪詛が、これからは全てそのマリナという女に行くわけだ。


「出来ることなら、証明できるものを見つけて侯爵に訴えたい!そして、離縁を勧める」

 さすがにホランドさんは怒りを覚えているようだ。証拠か、カガミンどうしたらいい?


(もし宮廷に錬金術師がいるなら、タリスマンを渡せば呪詛腫の記録が解読できるはずですが)


「タリスマンを宮廷錬金術師に見せれば、誰が何したかが分かるが、その錬金術師が敵かもしれないだと?」

 そう、その可能性がありそうなのだ。この件は医者や薬師ではわからないが()()()()()()原因に気付くはずなのだ。


「はっきりと断定はできません、その可能性があるということです。タリスマンの記録は切り札ですが専門的すぎて名のない錬金術師では握り潰されるかもしれません、かなり慎重に動かないといけませんね」

「なるほど、見極めが重要だというわけか」

 深い溜息を漏らすホランドさん、やはり躊躇いがあるのかルーネイアさんは暗い表情だ、私は今回の件でどうしても言いたかったことを口にする、

「私はアイネさんの師匠になってしまったので、あの子が悲しむのは嫌です。この屋敷には良い人の方が多いですから、皆さんが悲しむのは嫌です。自分が犠牲になればなんて思いは自分勝手で良くない考え方です。そのせいで周囲に迷惑をかけるのも良くないことです、沢山の人があなたの事を心配しているわけで、アイネさんは泣きながら助けて欲しいと私なんかに頭を下げて、助ける代価に自分の命を使ってくれとか言う始末だし、アイネちゃんが」

 言葉に詰まる、言いたいことがまとまらない、どうしよう、2人が真剣に聞いてるよ、

「要するに!勝手にくたばるな!ちゃんと生きて責任とれって事です!」


 うわ〜、結局グダグタになってしまった。

 シーンとする。


「ぷっ、ふふ、そうですね、その通りですね、私の罪はとてつもなく重たいです。それでもちゃんと子供達や皆と向き合わなくてはいけませんね」

 笑われた?まあ、仕方ないけど、

「ラヴィリス様、どうか愚かな私めをお救い下さい」

 深く頭を下げるルーネイアさん。もちろん私も急いで同意する。

「それにしても、アイネがラヴィリス様のことが大好きな理由がよく分かりました。うふふ、私もラヴィリス様のことが大好きになりそうです」

 さっき会った時のように再び明るくコロコロ笑ってくれる。

 なんとしても治してあげよう、そう強く決心した。



(呪詛腫が悪鬼化してる可能性があります)


 カガミンの解析の結果、ルーネイアさんが意識不明の時に呪詛が溜まりすぎて悪意の塊になってしまったようだ。

(タリスマンを核に人工悪鬼が形成される可能性が高いでしょう)

「倒していいの?」

(倒さないと呪詛を周囲にばら撒きますよ、今までどおり倒してから魔石としてタリスマンを取り出せばいいのです)

「了解!!こっちには準備する時間があるんだ、万全の状態で絶対に勝とう!!」



 今回の戦いは絶対に負けられないんだ!


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