200. オーレン・メルブラント
「何だこれは!?こんな部屋があったのか?」
後ろから不意に声がかけられた。
「ようやく尻尾をだしたか」
その声の主を見てベルベレッサさんが笑う、その顔が怖い・・・
「なっ、まっ、待て、待ってくれ!何でベルベレッサがいる!?」
少し頭が薄くなっている男性が酷く狼狽えている。
「ハズリムさん、あの方はもしかして・・・」
私が尋ねると呆れたようにため息を吐く。
「ああ、オーレン・メルブラント本人だ」
なっ、何か苦労してここまで来たのに拍子抜けな再会となってしまった。
オーレンさんがベルベレッサさんの締め技を喰らっている、顔が紫色になってきたそろそろヤバいのでは?
私はハズリムさんと目が合う、すると再びため息を吐く、
「ベルベレッサよ、そろそろ死ぬぞ?」
「ふんっ!軟弱者め!!」
ベルベレッサさんが手を緩め、ようやく解放された。
「なんで父さんがこんな所に!?」
後ろでも何か面倒なことが起きたようだ。
「久しぶりだなシャンティ。相変わらずチビだし、出るとこも出てないし、」
ドスッ!
父さんと呼ばれた男性の体がくの字に折れ曲がり、そのまま地面に崩れ落ちた。
「予備動作なしとは、見事だ!」
ベルベレッサさんがベタ褒めする、シャンティさんの必殺のボディブローはすでに目で追うことが出来なくなっていた。
・・・何だろうかこの展開は。
「ベルベレッサ様にハズリム様?」
このどうにもならない展開にまた1人何者かが現れた。
「何と、サレン夫人までいるのか!?」
ハズリムさんが驚いている、どうやら知り合いのようだ。
しかしそれをぶち壊す人がいた。
「サレン!久しぶりではないか!元気そうで嬉しいぞ!!」
両手を広げてベルベレッサさんが必殺の鯖折り体勢に入る。
いや、腕ごとロックした!?あれは閂固め!?
「逃げろサレン夫人!!」
ハズリムさんの声はもうすでに時遅く、サレンさんと呼ばれた女性はベルベレッサさんの腕の中にいた。
「ひぐぅあっ!」
ベルベレッサさんは線の細そうな女性にも手加減なしだった。・・・腕が変な方向に曲がっている。
「おい・・・どうするつもりだ」
ハズリムさんがベルベレッサさんをジト目で追求する。
「はははは、久しぶりの再会に胸が熱くなってしまった。すまん、すまん」
すでに現場の惨状はどうすることも出来なかった。
とりあえず回復魔法をかける、3人とも何とか息を吹き返えした。
「気がついたか、オーレン」
ハズリムさんが声をかける、
「ふう、お前がここに来ているという事は、俺を斬りに来たか?」
オーレンさんが何かを悟ったかのような表情をする。
「そんな事はしません」
凛とした声が響き渡る。リプリス姫がオーレンさんの前に立つ。
「リプリス・・・様なのか?」
オーレンさんが驚愕している。ここにリプリス姫がいる事に驚いている・・・ようには見えないな、おそらく成長したリプリス姫を見て驚いているのだろう。
「本当にリプリス様なのですね、見違えてしまいました」
女性の声がする、どうやらサレンさんも復活したようだ。
「ああ、そうか、そうだな。ゴメスの奴が言っていた与太話はあながち嘘ではないようだ」
オーレンさんはリプリス姫の前に畏まり、臣下の礼をする、並んでサレンさんも同じように礼をする。
「ここでは何ですので、どうぞこちらへ」
サレンさんの提案で拠点としている場所へ招待される。
私達は隠し部屋を見つけて真っ直ぐに来たが、どうやら突き当たりのT字路を右に進めば正解だったようだ。
「ここは居住区です」
どうやらアルカトラズ島に住んでいた人々は、ここに暮らしていたようだ。オーレンさん達も現在夫婦でここにいるようだ。
そして居住区で待っていたのは若い男女2人だ。私達が大勢で詰めかけたことで驚かれてしまった。
「彼らは?」
ハズリムさんが尋ねる、
「オルテシア神教会の若者達だ、そこにいる俺の友人ボルトス神父のツレだ」
2人は紹介されて大慌てで頭を下げる。
「はっ、はじめまして聖母マーサ様の従者をしておりましたカナックです」
「同じく従者のラフィです」
色々聞きたいワードが多いぞ?まずオルテシア神教会とは何だ?
「オルテシア神教会?オルベア神聖教会とは違うのですか?」
アイネちゃん、ナイスアシスト!
「光の神オルテシアを崇拝する教会だよ、元々は同じだったがカルストーレが教皇になってからは他神を排斥する動きが強くなってな。今は別々の道を進んでいる」
ボルトス神父が嫌悪感を出しつつ説明してくれた、どうやら彼らはオルベア神聖同盟が嫌いなようだ。
「彼らは私達を旧神教派と罵り迫害されました。そして今や祖国さえも追われました」
女性従者のラフィさんの瞳には涙が浮かんでいる。
・・・宗教の問題はどこに行っても難しいなぁ。
「っで、お前達はここに何の用だ?リプリス様まで連れてきて」
オーレンさんが尋ねてくる、
「それと、そこにいる妖精的な小っこいのは何だ?」
おお、毎度毎度の反応だなぁ。
「私は地の女神セルリス様の直系眷属のラヴィリスと申します、縁あってこうして皆さんと一緒に行動させてもらってます」
丁寧に挨拶しておく、サレンさんやラフィさんの目が光る、どうやら私はロックオンされたようだ。
「風の女神様フィオル様の直系眷属アリエッタと申します、よろしくお願いします」
アリエッタも私と同じように挨拶をする、彼女も2人の視線に気づいたようで身震いしている。
「ラヴィリス様、アリエッタ様こちらにどうぞ、美味しいお菓子を焼いたので味見して下さいな」
早速、私達への餌付けが始まった。まあ、ニコニコして和んでくれればそれでいいか。
とりあえずティータイムが始まった。
「ラヴィリス様」
その最中、不意にハズリムさんが深刻そうな顔をして私に尋ねてきた。
「どうしたんですか?」
難しそうな顔をしている、かなり深刻な問題なのか!?
「先程オーレンに言われて思ったのだが、私達は何をしにここに来たのだっけか?」
・・・ダメだこりゃ。
とうとう200話到達。
本来なら200話前後で終わる予定だったのに・・・
想像していること、思っていることを文字にして伝える難しさを日々痛感しております。
ただ執筆とか小説に縁もゆかりもない私が、ここまで沢山の文章が書けるとは思ってもみませんでした。
そして、なろうサイトを含め小説を書かれている方々、本当に尊敬します。
私の素人な小説を読んで下さってくれている方々、本当にありがとうございます。読んでくれる方がいるというだけで、物凄くモチベーションに繋がってます。
改めて心より感謝申し上げます。
屋津摩崎




