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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
199/499

199. 死者の宮殿

「アリエッタ、貴女の方が詳しそうなのでお願いします」

 そう言ってアリエッタと席を変わることにする。

「やっ、やってみます。・・・あれ?新着の報告があるそうです、開いてみます」


ーーー海底深層にて侵入者あり画像を転送。


 するとモニターの映像が切り替わった。

「どうやら1年程前みたいですね」

「侵入者か・・・いる?」

 目を凝らして見るがよく分からない。

「あっ、どうやら拡大できるようですね」

 アリエッタ・・・私は貴女を心から尊敬します。凄い、モニターがどんどん拡大していく!


『・・・シャロ様!!』


 フローネが突然声を上げる、画面には謎のブクブクに膨らんだ小さな物体が転がっていた。

「あれがシャロ様?思ったのと違う」

 リプリス姫がドン引きしている。


『違うの!シャロ様はこの世で一番綺麗!!』


 フローネが反論するがこの姿では・・・


 しかし時間が経つとブクブク膨張していた身体が元に戻り本来の姿に戻っていった。


(海底から侵入したと思われます。急激な気圧の変化に体がついて行かなかったのでしょう)

 カガミンが解説してくれたので、さっきまでの姿の謎は解けた。


「早送りできるみたいです」

 すごい!ビデオみたいだ。


「あっ、気がつきましたね」

 気絶していたのか周囲をキョロキョロしている。

「こっちを向いて〜、こっち〜、今!!」


 アリエッタが完璧に操作をマスターしている、彼女への尊敬の念がどんどん上昇して行く。


 シャロ様がこちらを向いている瞬間を静止させてくれた。

『良かった、シャロ様無事だった』

 フローネがモニターに引っ付いて号泣している。私もシャロ様の顔を確認する。

 青みがかったストレートの銀髪、整った顔立ちに意志の強さが伺える澄んだ瞳、一言で言ってしまえば絶世の美女だ。

「綺麗・・・」

 どうやらアリエッタも同じ考えのようだ。でもアリエッタも金髪正統派美少女だと思う。


 というかヴェロニカさんは赤髪の妖艶美女じゃん。


 シャロ様は銀髪清楚系超絶美女だ。


 黒髪の私って一番地味じゃない?

・・・まあ、元から地味なんだからいいけどさ。


 それ以降シャロ様はモニターに映らなかった。きっと隠蔽を使ったのだろう、

「フローネ、どうします?探しに行きますか?」

 私が聞くと首を横に振る。


『いい、生きていることが知れただけで嬉しい』


 そう言うフローネの顔はとても嬉しそうだった。彼女にとってはシャロ様が生きていることが1番大切だったようだ。


 他に面白そうなものは無いだろうか?

「・・・日記があります」

 アリエッタが監督官の日記を見つけた。


 〜〜〜〜


☆オーバーシアー・ネヴィルより


 なんて事だ、すべては奴が裏で糸を引いていたのか!


 ラ・マーめ、最初から我々を利用するつもりだったのか!


 〜〜〜〜



 いきなり物騒な物言いから始まった、アリエッタと顔を見合わせる、

「とにかく続きを・・・」



 〜〜〜〜


☆オーバーシアー・ネヴィルより


 大海溝の底には死者の宮殿があるという。調査の結果、それは真実だった。


 死者の宮殿は時空を操作する時空転移魔法技術の全てが詰まっていた。


 だがラ・マーの本当の目的は死者の宮殿の最奥にある転生装置だった。


 奴は己の為に大勢の人間の魂を生贄にした。


・・・もう、私も長く無い。


 脱出チューブを射出した、少しでも多くの人々が生きて大陸にたどり着く事を祈っている。


 〜〜〜〜



 何があったか分からない、でもこの監督官さんは最後までここに残っていたようだ。

 そしてラ・マーという人物、この文書だと多くの人を犠牲にして転生したと書いてある。


・・・任意的に転生なんて出来るの?


「アルカナ・トア・ライズ・バベル計画という項目がありますね」

 アリエッタが監督官の日記から別の項目に変える。



ー大海溝の海底調査計画ー


 海底奥深く深層域に次元の歪みが生じている。

 調査の為に大掛かりな計画を発表した。


 この調査によって転移ゲート研究を飛躍的に発展させる事になるだろう。


 調査にあたり海底2万mに到達するように上空で塔を建設した。

 上空より投下して海底まで届かせるという計画だ。

 20年の歳月を経て完成。無事に海底まで到達する事に成功した。

 数多くの犠牲と失敗を繰り返し千世永国ラ・ムーの威光を知らしめた。


 了



 つまりここは海底調査の為に作られた大掛かりな研究施設だったということか?そして海溝の深層に死者の宮殿と呼ばれる物があるということか!?


 嫌な予感しかしない。


「アリエッタ?私は嫌な予感がするのですが、死者の宮殿がクロノス様の神殿だったりする可能性はありませんか?」

 そう聞くと、アリエッタの顔も引きつっている。

「・・・偶然ですね、私も同じこと考えてました」


 これは無理だ、無理、無理、無理。


 あの爺神め!思いっきり無理難題を私にふっかけて来やがった。

「クロノス様のところに行くのは次の機会にしましょうか?」


「・・・まあ、私は行きませんので」


 まさか、アリエッタがここで裏切るだと!?私は掴んだその腕を離さない。


「私を見捨てるのですか!?こんな罰ゲームを1人でやれなんて理不尽です!」

 腕から胴へとロックを移動する、ついでにモミモミしておく、

「わっ、分かりましたって!行きますので離して下さい。くすぐらないで下さい!」


「・・・何をイチャイチャしているのだ?」

 ベルベレッサさんが呆れている。どうやら私達2人の戦いを戯れているように見えたらしい。


 私達は相当必死だったのに!

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