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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
191/499

191.一番損をしたのは

 何者かによって4大公爵メルブラント家が貶められている、その事実は驚愕に値するものであった。


「なぜメルブラント家が?」

 ハズリムさんが考え込む、

「なぜと言うより、誰によってかが問題です。心当たりはありますか?」


『・・・何とも言えません、例え4大公爵と言えど敵がいないわけではないので』


 男の人の声に変わった、ホープさんだろう。


 リプリス姫以外に誰が得したというより、誰が一番損したかを考えよう・・・

「エルヴィン第1王子・・・」

 私が呟くと皆が不思議な顔をする。

『どういう事でしょう?』

「メルブラント家が失墜した場合、一番損をするのはエルヴィン第1王子です、前回グランドル家を追い出しているので後ろ盾のない状態です」

 私の推測に全員が顔を見合わせる。


「ところで青薔薇さんという方はそんなにキレ者なのですか?」

 向こうに聞こえないように2人に小さな声で聞いてみる、

「ミスト公爵の娘か、表立って動かないからよく分からないが、相当なキレ者とは聞いている。まあ、元々ミスト家とは法の番人と呼ばれ法務局のトップだ、血筋の者は皆が知恵者と聞いている」

 ハズリムさんが歯切れの悪い回答をする、頭のよい人が見えないところで暗躍するのは非常に厄介だ。


 ゼルさんから青薔薇さんはアリアス第2王子側だと聞いている、もしかしたら本当の狙いはエルヴィン第1王子なのかもしれない。

 でもアリアス王子の狙いはシェルさん・・・いや、学園の月の神兵だと思っていた。


・・・何だろう、この違和感。


「今のエルヴィン第1王子の取巻きって誰ですか?」


『エルヴィン王子の?若手のカリスト伯爵達ですね、私達にも口を出すなと言っていた』


 カリスト伯爵と言えば、グランドル邸にエルヴィン王子と一緒にやって来た人だ。


 そして今、一番立場の悪い人間だ。


「その方達の動向はご存知ですか?」

『いえ、申し訳ないが分からない。何より彼らがグランドル家を追い出したのも我々は知らなかったぐらいだ』

 以前グランドル邸でカリスト伯爵を見た事があるが、それ程大物には見えなかった。確かエルヴィン王子の後ろでニヤニヤしていた気がした。

 プライドが高くて勝気そうだった、その辺りをつつけば簡単に怒りそうだ。


・・・さらに周囲を巻き込ませば尚良い。


私ならそうする。


「・・・シェルさん、なんとかエルヴィン王子の取巻きを調べて下さい。もしかしたらその中にグランドルにも関係した者がいるかもしれません」

 そんな人間が追い詰められた場合、短絡的な行動をおこしやすい、言い換えれば踊らせやすい。


『・・・そうか!分かりました、すぐに調べさせます』

 シェルさんも私が言わんとしたことに気がついたようだ。


「どういう事だ?」

 ハズリムさんの頭の上に???が浮かんでいる。

「エルヴィン王子に関わった一派を全滅させる準備を整えていると言うことです」

 エルヴィン王子に関わった者、つまりメルブラントとグランドルを含めた全てだ。説明してようやくハズリムさんも事の重大さに気付いたようだ。

「おそらく、このまま上手く扇動していけばカリスト伯爵ら取巻き達は行動を起こします」


『あのカリスト家の男は野心高く、自分を有能だと信じ込んでいるような奴よ。だけど1人では動かずに仲間を募り、勝ちを計算をしようとする事ぐらいはするはずよ』


 私に続いてシェルさんが毒を吐く、相変わらず辛辣だ。


『メルブラントもすぐ調べた方がいいな』

 ホープさんが呟く声が聞こえる、

「いえ、あなた方はすぐにでもそのカリスト伯爵及びその周辺を押さえないと大変な事になってしまいます。姪御さんのマチルダさんがリプリス王女、つまり王家に刃向かって騒ぎを起こしたという事実があります。そこを突かれたら何とでも罪を作る事ができます」

 例え子供がしでかした事でも、狡い大人ならそこを必ず突いてくる。


「オーレンさんの事は心配しないで下さい。こっちは既にアルカトラズにいるのだから断然有利です。見つけ次第理由を話してここから離れます」

『感謝いたします、どうかお気をつけて下さい』

 ホープさんから丁寧なお礼を言われた。


『もう一つ私からよろしいでしょうか?』

 エディリーさんが何か聞きたいようだ。 

『オルベアの使者はアルカトラズ上陸の手段として神の尖兵を用意しています、これは正解なのでしょうか?』


・・・正解だ。


「・・・つまり、アルカトラズに誰かが来たことがあるということでしょうか?」


 ヘタをしたら、ここの正確な場所も知っているかもしれない。


『分かりません、私も彼等の会話を盗み聞きしただけなので』


「感謝いたします。その情報はとてもありがたいです」

 あまり猶予はないかもしれない、一刻も早くオーレンさんを見つけなければならくなった。


 シェルさんとの通信を切る、

「マーナ、ありがとう。引き続きシェルさんをよろしくね」


『うん!』


 そう言うとマーナはハズリムさんのコアに戻ってシェルさんの元へ行く、

「本当にマーナがいてよかったな」

 ハズリムさんが服を着ながらしみじみと言う。


「・・・一つ聞きたい、ラヴィリス様はミスト公爵の娘が怪しいと思っているのか?」


 不意にベルベレッサさんが聞いてきた、何か真剣な顔だ。

「いえ、賢い人がやりそうな手口だと思ってまして。ゼルさんからの情報でアリアス王子に近しいと聞いていたので気になっていたのです」

 青薔薇がアリアス王子側にいるという前提で、狙いがエルヴィン第1王子その周辺の取巻きを排除、さらにはシェルさんをと考えれば有効な手だと思う。

 まさに一石二鳥の利を得ようという考えなら凄い策略家だと思う。


「最悪ミスト公爵と対立してでも、孫を謀る女狐を斬るか」

 ベルベレッサさんが物騒な事を呟く。


 そうか、ベルベレッサさんにとってエルヴィン王子もアリアス王子もリプリス姫も皆が可愛い孫なんだ、それをいいように利用されるのは我慢ならないかもしれない。

・・・ベルベレッサさんにこの話をしたのは早まったかもしれない。


 そのピリピリムードを晴らす声が聞こえる。

「ラーヴィーリースー様!」

 遠くでアイネちゃんの呼ぶ声が聞こえる、

「見て下さい!こんなに大きな猪です!」

 どうやら試射をかねて狩りに行ったようだ。その成果なのか、テルーさんと2人で3mくらいの巨大な猪を引きずって来た。

 2人共満面の笑みだ。でも年頃の女の子のやる事じゃないと思う。


 ベルベレッサさんも一気に怒気を晴らされたようで、呆れた顔で苦笑している。


アイネちゃん、グッジョブだよ!!





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