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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
189/499

189.ブラックスミス

昼食後にテルーさんの弓矢製作をすることにした。

「ずいぶん使い込んでますね」

「はい、母のお下がりなんですけど」

 それは思い入れの強そうな物だ、これを改造したらいけない気がする。


 じゃあ新しく作るか。でもこれは軽く木製のしなりの強い素材だ、はたして私の魔法で作れるのだろうか?


(木材を使わずともオリハルコンは魔力錬成加工次第で性質を大きく変えることができます。軽く、しなりを要する物質ならオリハルコンで作成可能です)


 ふむ、説明されてもよく分からない。


「せっかく良い材料はあるけど、作る私に知識がないからなぁ。素人的な考えで両方使ってしまいたいくらいだ」

 今まで装飾品なら何度か作った事があるけど、武器は初めてだ。


(異なる素材を組み合わせて作った弓をコンポジットボウと言います)


・・・そういうのがあるんですか?


「右も左も分かんないから、今使っている弓をベースに作ってしまおう」

 専門的な事は素人の私には分からないから、この弓を手持ちの素材で複製(コピー)してしまおう。


 練金釜にテルーさんの弓とオリハルコンを突っ込む、オリハルコンで弓の型を複製する。

 重さ、しなり、その他もろもろを全く一緒にする。

 弦?はどうしようか、これもオリハルコンで作れるかな?

・・・できてしまった。もう何でも有りだな私は。


(魔力伝道率がよいミスリル銀も、是非とも使用しましょう)

 カガミンも乗ってきた。


 オリハルコンベースの弓本体にミスリル銀の装飾をつけていく、

「いけない、重くなってしまう」

 重さが一緒になるようにオリハルコンベースの本体を削っていく。


「うん、中々良い出来じゃないか!?」

(はい!まさに伝説の神器っぽいです!)


 私のセンス爆発の壮麗な弓が出来た。ついでに矢の方もミスリル銀、オリハルコンで数本作っておいた。


(スキル[物質加工]と[改造]を取得しました)

 カガミンからアナウンスが入る。


(錬金術、魔法可変、物質加工、改造、4つのスキルを併合します。マスタースキル[ブラックスミス]へと進化します)


 おお、マスタースキルですと?スキルの進化なんて初めて聞くアナウンスだ。

(ちなみに大地属性魔法もマスタースキルです)

・・・そうだったのか、確かに大地属性魔法の中に枝分かれして魔法が表示されるからそうだと思った。


 さてと、テルーさんに試作品を使ってもらおう。

「・・・えっ?」

 試作品を手にして固まっている。

「えっと、ダメでした?」

 素人だから心配になってしまう。

「いっ、いえ、ちょっと出来上がりが早すぎませんか?」

 何か問題があるのだろうか?近くにいたベルベレッサさんが見に来た。

「せっかくだから使ってみろ」

 いいね、そういうサッパリした性格は私は大好きだ。


「凄い、大きさも重さも今まで使っていたのと同じです」

 テルーさんが弓を引く、放つしなりまで一緒のようだ。

「そりゃ、オリハルコンで元の弓を完全複製しましたからね、私は武器に関しては素人なので専門的な事は知りませんので。あっ、でも装飾は私のオリジナルです」


・・・あれ?2人共固まっている。


「そういう意味ではないのだが」

 ベルベレッサさんが呆れている、ちょっと派手にしすぎたのだろうか?

「あれ?・・・この弦は?」


 よくぞ気付いてくれた!


「実はこれオリハルコンを物質変化加工したものなんです!すごいんですよ!オリハルコンって思った通りの形状になってくれるんです!」

 嬉しそうに自慢する私に2人はドン引きの眼を向けている。

「神の金属と呼ばれるオリハルコンをこのように簡単に加工できるものなのか?」

ベルベレッサさんが小さな声で呟くが聞こえないフリをしておこう。


 さあ試し撃ちをしてもらう。テルーさんが力強く弓を引く、


 ズスッ! ズスッ! ブスッ!


 素晴らしい!大きな木を2本も貫通してしまったよ!

「・・・威力がありすぎです!」

 テルーさん、何で泣く!?威力があった方がいいんじゃないのか?

「これは・・・使えないな」

 えっ!何で!?ベルベレッサさん?

 私が狼狽えているとベルベレッサさんが解説してくれた。

「制御できない威力は味方をも傷つける可能性があるからだよ」


・・・そうか盲点だった。


「そうだな、弦を少し調節して反発を弱くしたらどうだ」

 よし、やってみよう。


 ブスッ!


「はい、少し柔らかいですが、これなら以前と同じくらいです」

 嬉しそうに次々と放っていく。


「・・・しかし、これ程の逸材とはな」

 ベルベレッサさんが舌を巻く。テルーさんが軽々と放った矢の先へ視線を移す、同じ場所に次々と吸い込まれるように刺さっていく。


「・・・あげませんよ?」

「ふふふ、選ぶのは本人です」


 ベルベレッサさんが不敵に笑う、これは手強そうだ。


「ありがとうございますラヴィリス様、あとはもう少し地味にして欲しいんですけど、」

 ええ!?私のセンスが爆発しているのに!?

「こう、シンプルで凄い弓的な方が凄味がありませんか?」


 なる程、そういう考え方もあるか。


・・・だけどあえて言わせてもらおう!

「お断りです!」


「なっ!?」

 ここは譲れない!この壮麗豪華な弓を恥ずかしそうに使うテルーさん、それを想像しただけでニマニマしてしまう。


 いや、是非見たい!!


「これには私の思いが詰まってます、ここは譲れません」

・・・そう、これは私の為でもある!!


 ベルベレッサさんに肩をポンと叩かれ、テルーさんは納得してくれたようだ。

「でも勿体ないから普段はコレ使いますね」

 テルーさんが悪あがきをする、いつもの弓を大事そうに抱いている。

 勿論、私もそこまで鬼ではないので、これ以上は何も言わないよ。


「それでこの弓の名前は何というのだ?」

 不意にベルベレッサさんが尋ねてきた、

「さあ、単なる複製した弓ですから」

 そう言うと首を横に振られる、

「それはいかんぞ、魔力の秘めた武具は名付きだからこそ100%の力を発揮できるのだぞ」

 そういうものなのだろうか、私はテルーさんを見ると高速で首を振る、まだ何も言ってないのに。


 あの時使った魔法、覇穹のイメージ、まさに虹色の流星・・・か、

「・・・虹流(こうりゅう)とか?」


 言ってみたものの、なんか滅茶苦茶恥ずかしくなってきた。


「コウリュウ・・・コウリュウ、うん!コウリュウです!」

 テルーさんが嬉しそうに私の作った弓を抱きしめる。こう何回も連呼されると、まるで私が辱めを受けているみたいだ。



「ああ、ラヴィリス様、ベルベレッサ、ちょっといいか?シェルから連絡がきているんだが」


 盛り上がる私達に気まずそうにハズリムさんが呼びにやって来た。



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