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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
188/499

188. 猫被り夫人

 ☆海底地下大通路3日目の頃・クリストア王国



 ーーシェルリースーー


 ハズやラヴィリス様達がアルカトラズに向かって数日経った、今のところ何も起きていない。

「奥様、ベリーサ・ウィリアム様がお越しです」

 私専属新人メイドのリマが呼びに入ってきた。


 昨日、ウィリアム家から打診があったから予定に入れてある。

「分かったわ、伺います」

 リマに連れられて一緒に応接室へ向かう。その途中、つい彼女のエプロンのポケットに目がいってしまう。


 リマのエプロンのポケットにはいつも黒髪の少女人形が入っている。

 先日、不思議に思い同僚メイドのカーリンに聞いてみる、よく分からないがあれで禁断症状が和らぐらしい。

 その話をしている同僚のカーリンが遠い目をしている、あまり踏み込んで欲しくない話題のようだ。


・・・このリマという娘は別の意味でヤバい子かもしれない。


 一抹の不安を覚えつつ応接室に入ると見知っている顔が目に入る。

「お久しぶりですシェルリース様。先日は母がご迷惑をおかけしたそうで」

 背の高いベリーサが頭を下げてくる。毎度の事なので、私は問題ないという手振りをして顔を上げさせる。

 ふとその隣の席に見慣れない2人がいる事に気づく。


「ご無沙汰してます、グランドル様」

 派手な赤い髪を地味目に後ろで束ねた女、性格も体型も派手で生理的に合わないと、今まであまり接点を持たなかった。でもそこにいたのは間違いなく紅薔薇ことエディリー・レスコットであり、そんな彼女が地味な格好で神妙な顔つきをして同席していた。


「先日はどうもありがとうございます」

 更にはオーレンの息子でレスコット侯爵家当主であるホープ・レスコット卿まで同席していた。


「・・・どうされました?」


 驚きの面子に唖然としていた、ベリーサに声をかけられて正気に戻る。

「ごめんなさい、あまりの珍しい組み合わせに驚いてしまいました、どうぞお座り下さい」

 私は3人を促し座ってもらう、カーリンが入れ替わりに入ってきてコーヒーを入れてくれた。


 彼女のいれるコーヒーは別格で、素晴らしい香りが部屋中に広がる。



「先日は私の姪であり、馬鹿弟子のマチルダが学園で騒動を起こしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。そして寛大なご配慮、ありがとうございます」

 意外だったのはいきなりエディリーからの謝罪から始まった。

 先日のマチルダ嬢とリプリス姫の騒動の件だろう、

「それならホープ様より謝罪を受けてます、どうぞ顔をあげて下さい」

 この夫婦が裏で尻拭いをしているのは噂で聞いていたが、どうやら本当だったようだ。


「マチルダは私の弟子という立場を悪用して増長していたようです、しばらく魔法を使えないように使い魔を取り上げ、再教育しています」

 何か調子が狂ってしまう。もっと高飛車で嫌われるような性格だと思っていた。


 ふとベリーサを見ると俯いて笑っている。

 コイツ、確信犯だ!


「アンタ、わざとか?」


「はて?」


 とぼけた表情がムカつく。

 ベリーサはエディリーの人となりを知っており、その上で連れて来た。

 私は大きく息を吐く、

「もうちょい私のイメージ通りで来て欲しかった」

 私のボヤきにエディリーは訳も分からず困惑していた。


「ところで屋敷の人を変えたのですか?リントワース家の従者もいましたし。先程、冒険者のレアン殿とお会いしましたけど?」

 ベリーサが目ざとく探ってくる、

「はぁ、よく見てるわね。前回、私が狙われていると思っているらしくてね。過保護モードよ、どこに行くにしてもついて来るわ」

 うんざりしていつもの地が出てしまった。ハッとして顔を上げるとレスコット夫妻が唖然としていた。


「ほほほほほ・・・もう遅いかしら?」


「ようやくいつも私が知っている()()()()ですね」


 ベリーサを殴りたくなった、敵わないけど。



「ところでココに来た本来の理由は?」

 もう身バレしたのこのままで行く事にした。

「父がシェルリース様は最高の猫被り夫人だと言ってましたが、ぷっ」

 ホープが笑いを堪えている。


 くそ、オーレンめ!呪ってやる。


「実は、先日私の元にオルベアから使者が来ました・・・」

 エディリーは真面目に話し出す、どうしよう、私の中で彼女の株が爆上げ中だ!


・・・でも内容は聞かなければよかった。


 私は頭を抱えてしまう。正直言って、メルブラント家がオルベア神聖同盟に情報を流していると思っていた。

「ではオルベア神聖同盟からの使者はオーレンの命を狙っていると?そして裏で情報をリークした者がいるということかしら?」

 私が簡単にまとめると彼女は頷く、

「義父がアルカトラズ島にいるかもしれないと話したのは私です、ただその時はあくまで噂話で、さすがに行ける訳ないとタカをくくってました。だけど私以外からも情報を得ているようで、詳しい上陸手段まで心得てました」

 悔しそうに唇を噛み締めている。


「シェル様、ハズリム様達と連絡を取ることはできませんか?」

 そう言えばベリーサはマーナの事を知っている。

「やってみましょう、マーナ」


『おうよ!』


 エンゲージリングからマーナが出てくる、マーナの事を知らない2人は驚いている。

「・・・妖精?しかもかなり上位の・・・」

 エディリーが呟く、さすがに魔法のスペシャリストだよく知っている、

「できればこの事は内緒にしてね。この子はウチの切り札なんでね」

『ねっ!』

 マーナは相変わらず可愛い、本当に可愛い!


「話は聞いたと思うけど、一回ハズの方に行ってもらえないかしら?」


『了解ダ!』


 マーナにお願いするとすぐに姿が消えてしまった。

「本当に、グランドル家はすごいな・・」

 エディリーから聞こえないくらいの小さな声が聞こえて来た。


『シェールー!準備OK!!』


 マーナの声が聞こえる、

「ハズ?聞こえる?ハロハロ?」

 エンゲージリングに向けて話しかける、

『シェルか?元気か?私は元気だ!』

 いつものハズの声が聞こえて来た。

「あー、えーと、こちらは何も問題ないけど、そちらはどうかしら?」


『うむ!アルカトラズについたぞ!』


・・・えっ?着いた?


「待って!王都を出発して5日目よ!?早すぎでしょ!?」

『・・・そうなのか?』


 王都からマリーメアまで船を使うと2、3日はかかり、マリーメアに着いてからアルカトラズまで大海原の探索と準備も兼ねて最低でも10日はかかると思っていたんだけど?



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