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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
177/499

177.マリーメア島探訪

 ここはマリーメア島。

 オーレリア海の楽園と呼ばれる大自然の残る美しい島だ。

 人口は3000人程で、本土から来るには船で1日かかる距離にある。

 オーレリア海沿岸諸国からの補給地点でもあるため、意外と栄えており、多種多様な文化が根付いているようだ。

 そして古代文明の史跡が多く残っており、考古学の聖地としても有名である。



「いい天気だ」


 私は朝早く目が覚めて外の空気を吸う。

「ラヴィリス様、おはようございます」

 ハズリムさんが声をかけて来る、どうやら早朝の稽古をしていたようで、程よい汗をかいている。

「早いなラヴィリス様」

 どうやらベルベレッサさんも一緒に稽古をしていたようだ、若々しくて肌の艶も全然良い。


「・・・ベルベレッサさんって、ハズリムさんより年上なんですよね?」

 つい失礼なことを聞いてしまった。


「ははは、原因はこれです」

 ベルベレッサさんが長い髪をかきあげる、その仕草がとても艶っぽい。

「エルフ!?」

 ベルベレッサさんの耳が少し長くて尖っていた。

「ウィリアム家は代々エルフの血が流れてましてね。そのおかげで人より若さが長く保たれるんです、寿命は人と同じですがね。滅多にいないが血が濃い純血種のハイエルフなら300年くらいは生きると言われてるんだ」

 テルーさんもエルフの血が流れていたが、ウィリアム家の人もそうだったのか。エルフ族は寿命が長いと聞いていたけど血が薄くなると違ってくるようだ。


「ところでハズリムさん、午前中は何か用事がありますか?」

 汗を拭いて休憩しているところだが聞いてみた。

「いや、特にはないが」

「何だ、若い娘と一緒に訓練じゃないのか?」

 ベルベレッサさんが笑っている。とても凶悪だ、ハズリムさんの顔が引きつっている。

「なら私に少々付き合って下さい、私1人では不便なので。忙しいなら仕方がないですが・・・」


「勿論大丈夫だ!暇だ!付き合わせてくれ!」


 食い気味にOKを貰った、一方のベルベレッサさんは悪戯っ子の笑みを見せている、なかなか良い性格をしているようだ。



 朝食を食べた後、アイネちゃん達はさっそく基礎訓練というしごきを味わっていた。


「ではお願いします」

 私はハズリムさんのポケットの中に入る。

 さすが公爵家だ、とても良い生地の上着を着ている。入り心地がとても良い。

「どこに向かわれます?」

 ハズリムさんも気分良く歩き出す。

「そうですね。実は昨晩のうちに大地を調べた時、気になる場所を見つけたのでそこに向かいたいのです」


 そう言うと街の方へ向かって歩いてもらう。


「あの建物です」

 とある建物を指差す。

「これは学校か?」

 私が指定したのは子供達が集まっている古い建物だ、

「ここは古い遺跡のようです、どうやら遺跡を改築して利用しているみたいですね」

 私はハズリムさんにお願いして建物の中に入らせてもらう。


「どちら様でしょう?」

 年配の女性が声をかけてきた、

「少しこの建物が気になってな、古い遺跡のようなのだが」

 ハズリムさんの質問に女性は目を輝かせる、ハズリムさんは見た目が良いので学者が何かと間違っているのかもしれない。


「凄い!分かる人がいらっしゃるのですね!そうです、ここは時の父と呼ばれるクロノス神を祀る神殿だったのです」

 うん?また新しい神様が出てきた。

「ほう、クロノス神とな、聞いたことのない名前の神だ」

 ハズリムさんも聞いた事のない名前のようで興味津々だ。

「いわゆる旧神や秘神と呼ばれる存在です、知名度は全くありませんよ」

 女性は朗らかに笑う、

「しばらく見学しても良いかな?」

 ハズリムさんがお願いすると、授業の邪魔にならない範囲でとお願いされた。


「ここは礼拝堂かな?」

 奥に進んで行って広い場所にでた。

「あれがクロノス神様ですかね」

 壁の象徴画に砂時計を持った老人が描かれている。私はハズリムさんのポケットから出て地面に手を置く、


「ジオグラフィックバトン」


 大地の記憶を辿る、

「やはりここにありますね。ハズリムさんもう少し進みましょう」

 人はいないのでここからは姿を消さずに肩に乗っていく。


「ここで行き止まりか」

 講堂の奥は緩やかに下っており、行った先は小部屋になっていた。

「魔法で隠蔽してありますね」

 私は古い魔法装置を見つけ、そこに魔力を流していく。

 すると小部屋の真ん中に隠し扉が現れた。


「ハズリムさんお願いします」

 こういう時に体が小さいと不便だ。ハズリムさんが重い鋼鉄製の地下扉を開けると地下への階段が続いていた。


「行ってみましょう」

 私の言葉にハズリムさんは嬉しそうに頷く、

「本当にラヴィリス様といると退屈しませんな!」

 いい年してワクワクが止まらないらしい。私は念のためこの部屋全体に隠蔽魔法をかけておく、

「学校なので子供達が来たら危ないですからね」

「ですな」

 ハズリムさんはとても上機嫌だ。


「かなり広いな」

 私の探知から大幅に改訂しないといけないくらいに広いダンジョンのようだ。


(魔物の気配もかなりの数です)


 カガミンの探知に魔物の気配が確認されたようだ。

「こっちです」

 私は地下に潜れば潜るほどセンサーが鋭くなっていく、地図なしで目的地まで魔物に合わずに進めた。


「これは・・・」


 ハズリムさんが驚愕している、私も想像以上で驚いている。

 巨大なトンネルのような通路の真ん中に線路のようなレールがある。まずはそれを調べてみる。

「新しい通った跡がありますね」

 レールの鉄が擦れた痕跡がある、

「おそらくオーレンさんはこれを知ってましたね。確認してみましょう」

 私はハズリムさんにカガミンを渡す、

「大地の記憶を辿ります、ハズリムさんも確認して下さい」


「ジオグラフィックバトン」


 しばらく魔物が行き交う映像しか流れなかった、

「むっ、これは」

 数ヶ月前くらいか?一台の電車?が止まった、そして1人の男性が降りて来た、

「・・・おそらくオーレンだ」

 よかった、どうやらオーレンさんはまだ生きているようだ。大荷物を持って戻って来たと思ったら、また電車に乗って去っていった、どうやら補給をするためにやって来たようだ。


「良かった、これで目処が立ちました」


 私はつい安堵の言葉が漏れてしまった。なぜなら、この広大な大海原をアテもなく飛んで、アルカトラズを探すなんて自殺行為だと思っていたからだ。


「明日はここからプーちゃんに乗って行きましょう」

 きっとこの線路沿いを進めばアルカトラズに辿りつけるはずだ。


 目的は達成したので地上に一旦帰る、私達は元来た道を引き返していった。


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