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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
174/499

174. 港湾都市ベルダ

 何てことだ、私はとうとう指名手配されてしまった。


「ははほ、大丈夫だ、バレなきゃ問題ない」

 ベルベレッサさんが笑いながらいい加減なフォローをしてくれる。

「絶対に誰にも言いませんから!」

 アイネちゃんが真剣な表情で私の手を握る。

 考えてみれば姿を見られてないし、証拠もないのだから捕まる訳がないはず。


・・・きっと大丈夫、大丈夫なはず!


「ハズリム様、線路沿いに行けばベルダに着くんですよね」

「うむ、それが最短ルートだな」

 私は真剣に悩んでいるのに、関係のないアリエッタとハズリムさんの2人はお気楽な会話をしている。


 そして遠くに海が見えてきた。


「海です!」

 アイネちゃんのテンションが上がってきた。

「ほぼ予定通り、少し早いくらいね」

 シャンティさんが時計を見る、ほぼ予定通りの到着時間のようだ。


 港湾都市ベルダに到着した。ここはクリストア王国最大の港がある大都市だ。ここと王都が魔導列車で繋がっておりクリストア王国の玄関口ともいえる。

 更にメルブラント家の領都が隣り合っており、その姿は王都並みの城塞都市だ。


「都会だわ!」


 アイネちゃんやメアリーさんのように東部から来た人間は皆がカルチャーショックを受けると聞いていたが、文字通り2人ともカルチャーショックで開いた口が塞がらないようだ。


 取り敢えずプーちゃんはベルダから離れた街道沿いに着地した。

「ここで一息つきましょう、縮小魔法を解除しますね」

 全員がみるみる元の大きさに戻っていく。

 シャンティさんが冒険者バッグから水筒を取り出してプーちゃんに飲ませる。

 ほう、冒険者バッグとは収納魔法がかけられているマジックアイテムで見た目よりたくさん入るようだ。私は興味深く見させてもらう、


(回路を改造すれば容量が増やす事ができそうですね)

 カガミンが興味深いことを言う。


「シャンティさん、よかったら改造させて」

「ダメ!」


・・・なぜか高速で拒否されてしまった。


「これは私の宝物なんです!物凄く貴重で高価なんです!ようやく買えたんですから!」

 大事そうに抱えらてしまった、仕方ない今回は諦めよう。



「さあ!それでは街に行きましょう!」

 一息ついてアイネちゃんがドヤ顔で立ち上がる、リプリス姫も同調するように立ち上がる、


「リプリス、お前はダメだ」

「えっ!?」


 ベルベレッサさんがリプリス姫だけ街にいくのを禁止した。

「お婆様なぜですか!?」

 泣きそうな顔で食い下がる、いやもう泣いている。

「ここはメルブラントの膝元だぞ?お前はマチルダ嬢に何をした?」


・・・リプリス姫が固まっている。


「今回はお前の更生も兼ねているから陛下も周囲も納得しているんだぞ?遊び回っているのが見られたら何と言われるか」

 ベルベレッサさんから言われてションボリしながら座る。


「ここにいます」

・・・体育座りしてしまった。


「マリーメア島に着いたらちゃんと自由な時間作るから、それまで我慢しな」

 リプリス姫の横に座って頭を撫でて慰める。

「お前たちも補給をしたらすぐに戻ってこい」

 ベルベレッサさんは私達買出し組にも釘を刺して送り出してくれた。


 買出し組はアイネちゃんとメアリーさん、テルーさんと保護者役のシャンティさんの4人だ。

 あまり目立ちたくないからとハズリムさんら有名人は残る事になった。


 私達はベルダの街に入る。大都市らしく人が多く、通りにはお店が立ち並んでいる。


「ところで、私はよく知らないんですけど、そのマチルダさんというのは一体どのような方なのですか?」

 先程の会話から気になっていたので聞いてみた。するとアイネちゃんとメアリーさんが互いに顔を見合わせる、

「まあ、何というかとても貴族らしい方ですね」

 まあ、確かに君たちは貴族っぽくないけど。

「プライドが高くて我儘です、いつも取り巻きを引き連れて我が物顔ですね」

 あら?メアリーさんが珍しく辛辣だ。

「あとエルヴィン第1王子の許嫁ですね、だからやりたい放題なんです」


 ええっ?その2人はいとこ同士だよね?

 あっ!いとこ同士なら結婚してもいいのか。と言うかアイネちゃんも何気にキツいことを言っている。


「2人共、ベルベレッサ様にここでその方の悪口言うのは厳禁だと言われたでしょ」

 シャンティさんに言われて慌てて手で口を塞ぐ。


「それで、本当にメアリーさんに任せていいの?」


 シャンティさんがメアリーさんに確認している。

「はい、お願いします!」

 メアリーさんはやる気に満ち溢れている。

「じゃあ食糧の方をお願いね、私は冒険者ギルド行って方位針石を手に入れてくるから。帰りは各自戻ること、あまり寄り道しないよう手早くね」

 シャンティさんがお姉さんぽく優しく言う。ただし、見た目が小柄でショートカットの可愛い系なのであまりお姉さんっぽくない。


「何ですか?」

 ジト目で睨まれた・・・勘はとても鋭い。


「私は勉強のためにシャンティさんについていきます」

 冒険者志望のテルーさんはシャンティさんについて行くようだ。


 二手に別れて行動する事になった、実を言うと本当は私もシャンティさんの方について行きたかったけど、この2人を放っておく訳にはいかないので食糧買い出し組についていく事にした。


「色々と外国の食べ物があるんですね」

 アイネちゃんが興味津々に物色している、

「お魚はマリーメア島に沢山ありそうですから、肉や野菜、パンなどをメインに買いましょう」

 メアリーさんは次々と食材を買っていく。

「ここじゃ目立つので後で場所を変えて、私の収納の中に入れましょう、時間凍結型なので生でも大丈夫ですよ」

 姿を消しているので小声で話す、

「ヴェロニカ様のアイテムバッグと一緒ですね」

 そう言えばヴェロニカさんも作った料理をそのまま収納していたな。


 私達は一通り買い物を終え、大荷物を持って街の外に向かって歩いていた。

「あっ、すいません」

 アイネちゃんが前がよく見えてなかったようで、通行人にぶつかりそうになってしまった。

「おっと、大丈夫かい?」

 マントをまとった柔和な騎士風の男性が、転びそうになったアイネちゃんを支える、

「ありがとうございます」

 アイネちゃんはお礼を言いながら頭を下げる。

 騎士風の男性の腰に壮麗な剣が見え、その雰囲気から只者ではないと思えた。


「ジャン・レイ様、こちらへ」


 同じマントをまとった大柄な男性が呼びにきた。その人は爽やかに軽く手を上げ、その大柄な男性と一緒に街の中に歩いて行った。


「うーん?あの格好の人ってどこかで見た気が・・」


 アイネちゃん、メアリーさん2人して首を傾げるが、どうやら思い出せないようだ。



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