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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
八章 絶海のアルカトラズ編
166/499

166. 竜宮城

 アルカトラズ島に何かある。


 シシリィさん達も私の様子から何かを感じ取ったようだ。

「ラヴィリス様、もしかしてルンカース号の事件と関連があると見ているんですか?」

 シシリィさんの問いかけに私は首を横に振る、あまりに判断材料が少なすぎて答えられない。

「・・・人がいない絶海の孤島というのが引っかかりまして」


 ハッとするハズリムさん、

「まさか、彼奴の言う最期の仕事とは例の生贄石なのか!?」

 生贄石が危険なのは私達は知っている。精神を侵食されていくのを私は身を持って知っている。これを処理するとしたら人のいない絶海の孤島はうってつけだ。


 魔王核は昔、クリストア王国から持ち出された。それをオルベア神聖同盟に持って行き、賢者の石モドキの生贄石に錬成されて持って帰ろうとした。

 帰路の途中で封印が解除されてルンカース号は当時の国王、そしてシシリィさんのご両親らによって沈められた。

 その時、オーレンさんはオルベア神聖同盟側に残って錬金術を学んでいたはず、つまりルンカース号が沈んだ事に疑問を持たない筈はない。


 これはあくまで推測の域だ。

 もしかしてその時、オーレンさんは何か行動をおこした可能性はないだろうか?

 もしかして魔王核、もしくは生贄石を奪還したりとかしてるかもしれない。

 内緒で人に知られない場所に隠したり、封印したりするかもしれない。アルカトラズ島がクリストア王国の最西にあり、西の管領であるメルブラント家の管理下にあるなら考えられる。


「どういう事が説明してくれるか?」


・・・ベルベレッサさんがいるのを忘れていた。

「ベリーサさんから何も聞いてませんか?」

 私が尋ねると首を振る、

「ベリーサは仕事に関しては親にも話さないからな、何であんな堅物になったのやら」

 ハズリムさんを見ると頷く、信用に足りる人物のようだ。

「これから話す事は他言無用でお願いします」

 シシリィさんがサンクリス皇国、ハレルヴィ公国での出来事を簡潔に説明する、ベルベレッサさんはワナワナと震えている。



「あの馬鹿・・・」

 オーレンさんに対するやり切れない怒りを覚えているようだ、

「まずは、アルカトラズ島に行く方法を探さないといけませんね」

 と言っても船で行くしか方法はない。オーレンさんは何か別の方法で行ったのだろうか?


 シェルさんが地図を持ってきた。

「行くなら、西海岸メルブラント領にある港湾都市ベルダから船をチャーターして行くしかないわ」

 この地図の尺図がどれだけか分からないが、かなり陸地から離れているのが分かる。

「グランドルの港からでも行けるけどかなり遠回りになりますね」

 ふと見るとフローネがじっと地図を見ている。

「どうしたの?」

 リプリス姫が聞くと顔を上げる。


『ここ竜宮城!私達ここで生まれた!』


 突然フローネが声を張り上げた、

「竜宮城?地図でわかるの?」

『うん!たぶん分かる。昔、人に見せてもらった』

 竜宮城?乙姫様でもいるのだろうか?亀を助けたら行けるのだろうか?


「何と、竜宮城とは本当に実在したのか」

 ベルベレッサさんが感嘆している、

「竜宮城とはオーレリア海にある海底巨大ダンジョンの事だ。かつて海底に古代文明国家が栄えており、その遺跡の事を指すんだ」

 私の質問に答えるベルベレッサさん、子供のように目を輝かせている。


『船で行ったらダメ、あそこは大海獣の縄張りだからダメ』


 大海獣=恐竜だろう、私がいたら真っ先に狙われそうだ。

 海路がダメなら八方塞がりじゃないか。


『昔の人間は地下道から来てた』

 フローネの言葉に皆が反応する。この海の海底には張り巡らせられたように海底ダンジョンが広がっているという。

「それだったら私ならいけますね」

 私は何と言っても大地の女神様の娘だ、地下道は私にとって庭のようなものだ。

 フローネはアルカトラズ島から東に離れた島を指差す。

「マリーメア島か、ここはこの国で最西端の有人島だ」

『ここから人は来たって言ってた』

 フローネが指差す。一番近い島でもここから歩くのは大変そうだな。というかフローネは一体何歳なんだろうか?


 ふとシェルさんが真剣な顔つきになった、

「ねえ、・・・まさかとは思うけど、もう死んでいるとかは無いよね」

 とても怖いことを言葉にした、それに対し全員が押し黙ってしまった。


・・・その可能性がありうるだけに何とも言えない。


「前にリプリスさんが言ってましたよね」

 私はハレルヴィ公国でリプリス姫が言った言葉を思い出した。

「このクリストア王国が今、大きな岐路に立っていると。きっとこの先の未来に、大きな選択を強いられる時がくると思います。その上で無知で過去の真実を知らずに未来を選ぶのは非常に愚かしい行為だと私は思いますよ」

 自分の言葉を引用されたリプリス姫は顔を真っ赤にしている。

「そうですな、私もその通りだと思います。それにオーレンが簡単に死ぬとは思えない。良いかなシェル?」

 ハズリムさんが決意するようにシェルさんに聞く、呆れた顔のシェルさんが了解のジェスチャーをする。


「私も行きます!行きたいです!」

 まさかのリプリス姫が立候補してきた。さすがにそれはダメだろう、大人達は顔をしかめている。

「でっ、でもフローネがいるんだし」

「ダメですよ、学園は休みでも王族なんだから身勝手な行動は慎んで下さい」

 シェルさんが即座にシャットアウトする、諦めきれないのか、すがるような目で私を見る。


 さすがにダメだろう、私は手でバツを大きく作った。




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