表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
七章 シャルロッテ編
150/499

150.闇の中へ

『現れたな!強欲な大海獣め』


 ネレイス達が苦々しい顔をする。

「いったい何なのあの恐竜は!?」

 私の問いかけに1番落ち着いている年長のネレイスが答えてくれた。


『奴は進化の果実を口にした古代竜です、一度味をしめた為、幾度となく神子様をつけ狙っている強欲なる大海獣です』


「・・・進化の果実?それって私の事?」

 コクリと頷く。何なんだ、そんな話は聞いてない!もしかして騙されたのだろうか?しかしエリエス様が私を騙す事に意味があるのだろうか?


『生きて!いっぱい生きて』


 願望にも似た言葉を思い出す。とても辛そうで悲しそうだった。


・・・私は生きなくてはならない!


 モタモタしているうちにネレイスの1人が恐竜に食われしまった、弱肉強食にしては理不尽すぎるだろ!

 何か考えないと、ここは水の中だから同じ土俵で戦っている。たとえばもっと水深の深いところ・・・そう奈落の底ではアイツは生きられるのだろうか?


(奈落の底は水深2万メートル程デス、生命の活動は不可能と思われマス)


 2万メートル!?マリアナ海溝より深いのか!?私はそこで生きることはできる?


(環境順応のスキルは順応するまで多少の時間がかかります、奈落の水圧に耐えられれば勝てる可能性がありマス)


「大丈夫。痛いのと苦しいのには慣れっこだよ!我慢比べなら絶対に負けない!」

 でも恐竜を奈落まで連れていくにはどうしたら。


『あの、神子様』


 おっとネレイスの事を忘れていた、

「私は神子様ではなく、シャルロッテという名前があります。エリエス様からは愛称のシャロと呼ばれてます、だからそのように呼んでください」


『・・・シャロ様』


 うん、様呼びもいらないんだけど、ネレイス達は嬉しそうだからいいか。

『私どもネレイスの姉妹50人の命をお使い下さい、このままでは私達も大海獣の餌食となりましょう。囮でも何でも命令して下さい。その隙にお逃げ下さい』


・・・はぁ?命を使え?


「そんな事出来る訳ないでしょ!命をそんなに軽く考えないで!!」


 つい大声を出してしまった。ネレイス達が完全に怯えてしまった。いけない、元気な体を手に入れたから調子に乗ってしまったようだ。

「私と貴女達の命は同等です、絶対に使うとか囮とか言わないで」

 私の願いに複雑そうな顔をしている、それでもその思いは曲げるつもりはない。


(シャルロッテ様、ネレイス達は水操魔法を持っていマス。ここから奈落に向かって水流を作ってもらうのはいかがデスか?)


 そんな事出来るの?いや、やってみなければ分からない。

「何でもすると言うのなら協力して!アイツを奈落の闇に引き摺り込むわ!」

 私はアンが提案した方法を説明する。奈落の底なら恐竜は生きられない、反対に私はその中でも生きられるスキルを持っている事を話す。


『そんな危険な事をさせられません』


 泣きそうになっているネレイスを私は慰める、自分の土俵で戦うから勝算はあるはずだ。


((聞いてネレイスの姉妹達、今から私が言うとおりにやって))


 声霊魔法は特定人物に声を届けるける事が出来る魔法だ、私の声を聞いて皆が反応してくれた。

 私は思い切ってダンジョンから海中に出た。


「おい!こっちだワニ!」


 悪口は苦手だ。前世でも口下手だった、だけど精一杯の挑発をする。恐竜は私の姿を見ると喜んでこっちに向かって来た。


((やって!お願い!!))


 私は声霊魔法を使ってネレイス達に声を届ける、呼応するように水流が奈落にむかって動き出し、その奔流は大きな激流となった。

「私も水操魔法!」

 自らを海底に向かって水流を動かし始めた!恐竜は私達の意図に気づいたのか流れに逆らい始めた。


「水魔法!グリッドチェーン!!」


 逃げれないように恐竜の体に水の鎖で縛る、私はさらに水深の深い方へ進んでいく。

 どれぐらい潜っただろう、水圧で体が縮む感覚がする。軋むように体が痛い、それでもまだ我慢できる。

 暗くて視界が悪い?いや水圧で眼球まで萎んでいる。それでも感覚で恐竜もまだ健在なのが分かる。


 しばらく進んで気づき、そして戦慄する。


 どうやら異常進化したこの恐竜はこの超深層域でも生きていられるようだ。

 慣れて来たのか私に向かって突進してきた。私はまだ順応しきっていない、ゴツゴツした巨大な岩が衝突したような衝撃をうける。


「ぐうっう!」


 水の中だったので辛うじて死を免れた、それでも潜る事を止めない。

 次第に視界がクリアになっていく、潰れていた体が元に戻っていく感覚がする。

 虫の息だった私の体力も水の中にいるだけで回復していく。あの鋭い歯が1番危険だ、一撃で死んでしまう。さっきみたいな体当たりならなんとか耐えれる。


((私は無事だよ!皆はすぐにここから離れて!))


 声霊魔法で上にいるネレイス達に伝える、すると声が返ってきた。


((どうかご無事で!))


 私を応援する声が一杯届く。嬉しい、とても勇気づけられる!

「絶対に負けない!」

 私は更に深く深く潜っていく、恐竜は耐えられてはいるが動きは鈍い、

「知っているんだぞ、お前達が氷河期で絶滅したのを。氷河魔法!アイシクル・エイジ!!」

 海中の超深水域で氷河魔法を使えば自分にもダメージをくらうかもしれない。


「我慢比べなら負けない!」


 私を中心に海水の温度が急激に下がっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ