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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
六章 ハレルヴィ公国編
136/499

136.ネレイス

「リプリス!」

 ベリーサさんが大慌てで部屋に入って来た。今はリプリス姫をシャンティさんに診てもらっており、状況を説明してもらう。


「今は眠っていますが体には異常はありません。何者かに憑依された事による生体干渉と思われます」

 シャンティさんは神官としても優秀のようだ、しかし生体干渉とは一体、ふと顔を覗いてみると思案顔をしている。

「シャンティさん?何か引っかかることでも?」

 私の問いかけに苦笑する。

「ラヴィリス様は本当に鋭いですね、サティにも聞いたんですけど、あの幽霊船に会ってから頭の中に時々変な声が聞こえるんです」


 サティさんも?一体どう言うことだ?


「変な声とは?」

 首を横に振る、理解不能のようだ。

「もし何か悪霊憑きなら必ず身体に痕のようなものが現れるはずです。ですがリプリス様にはそれが現れておりません。そして、私もサティもリプリス様も3人共通して水属性なのです」

 狼狽るベリーサさんにシャンティさんが落ち着かせるように説明する。


「つまり悪霊憑きではなく、精霊や妖精の類だと思います」


 精霊や妖精?・・・おい、何で私を見るんだ?



 結局その日はリプリス姫は目覚めなかった。

「カガミン、不本意だけど解析してみよう」

 なぜか私が診ることになってしまった、精霊や妖精の類ならアリエッタでもいいと思うのだが、


リプリス・ファン・クリストア

種族:人間(ネレイス憑き)

LV:10 HP:42/42 MP:00/79

力:15 魔力:46 体力:20 知力:35 速さ:11 運:39

スキル:

水属性魔法、氷属性魔法、魔力回復促進、

王族教育、女神の祝福(水)、


 なんだよこの子、めちゃくちゃ将来有望じゃないか!


(ラヴィリス様、ネレイス憑きのようです)


 おっと、脱線してしまった。カガミン、ネレイス憑きって何?


(海の妖精です、憑かれているため魔力が断続的に枯渇しております。このままでは目覚めることはありません)


 そう言うことか、こういう時はアリエッタがいるから便利だな。


「お姉様、どうされました」

 何故か知らないけど呼ぶとすぐに来てくれた。それにぞろぞろと皆が集まって来る、私はアリエッタに耳打ちして解析をして実際に見てもらうことにした。


「・・・本当です、ネレイス憑きと出てます」

 アリエッタに解析して結果が同じなのを確認する。

「私の薬で魔力を回復してもすぐに枯渇するようです、アリエッタの力を貸してもらえませんか?」

 アリエッタの魔力供給によって干上がったリプリス姫とネレイスに水をあげましょう。


 アリエッタがリプリス姫に魔力を供給する、するとすぐにパチリと目が開く。

「あれ?私は?」

 どうやら目が覚めたようだ。カガミン、今はどういう状態?


(リプリス姫の自我が勝っているようです、深層心理の中にネレイスがいるようです)


 どうしたら良いのかな?マーナのように魔石による依代がベストなのかな?


(その場合、リプリス姫とのエンゲージ契約となりますが?)


 魔石なら一杯あるし、最悪ブラックコアでもいいか。この場合、本人に了承得ないとダメか。


「あの、どういう状態か説明してくれないか?」

 ベリーサさんが状況を知りたくてワナワナしている。確かに今はアリエッタに魔力供給してもらわないと起きていられないのだからね。


「えっと、リプリスさんはネレイスという海の妖精に憑かれてます。そのせいで常に魔力が枯渇している状態です。今はそれを解消するためにアリエッタに魔力を供給してもらってます」


 私の説明にベリーサさんは動揺している、

「それではリプリスはこのままなのか?そのネレイスというのを倒す事はできないのか?」

 私に詰め寄る、かなり必死な様子だ。

「やめて叔母様!」

 リプリス姫がベリーサさんを止める。

「この子は救いを求めている」

 リプリス姫は自分の胸に手を当てる、私も何か訳ありだとは思っている。それにリプリス姫がネレイスに対して嫌悪していないので好都合だ。


「そこで私は対話を提案します、ネレイスは私達と同じ妖精なので話を伺いたいと思っているのですが、どうでしょう」

 私の提案にリプリス姫も大きく頷く、

「一体どうすればいいのでしよう?」

 皆が一様に首を傾ける、

「とりあえずエンゲージリングを作ります。ネレイスにリプリスさんと一時的に従魔契約してもらい、ネレイス本人から事情を聞きましょう。この前の魔石もありますからね!」


 私の提案に全員が唖然とする。

 私は慣れっこなので、それを無視してすぐに作業に取り掛かる事にした。


 とりあえずリプリス姫はアリエッタに任せた、私は中庭に出てきた。私を隠すようにアイネちゃん達が囲ってくれている。

 翼竜の純度の高い魔石を魔力圧縮していく、本当に錬金釜が大活躍だ、これがあるだけで作業が一気に楽になる。


「あれ?これはウチにあったやつだ」


 ゼル君が反応する、興味本位で見に来たグランドル家の面々もこの錬金釜に見覚えがあるようだ。

「感謝しますよ、ハズリムさんの治療代としてもらいましたが大活躍です!」

 改めてお礼を言っておく。


「こうやって使うのですね、私が人から譲り受けたのですが使い方さえ知りませんでした、確か物置にずっと放置してあったはずでしたよね」

 一緒にやって来たハーシュさんが感心している。

「ハーシュさんの物でしたか!?よかったのかしら勝手に私が使ってますけど」

 少し焦る、今更返せと言われたら困る。

「何をおっしゃいます、私じゃ使えないので持っていても意味がないですよ。夫からもちゃんと説明を受けてます、どうか気にせず使ってくださいな」


・・・ありがたい、とても良い人だ。


「ラヴィリス様、魔石に色が!」

 アイネちゃんが錬金釜の中を覗く、

「アイネちゃん、中を覗いたら危ないですよ」

 笑いながらアイネちゃんを注意する、するとゾクッと寒気がする。

「・・・そう、貴女がアイネさん」

 うっ・・・ハーシュさんの笑顔が冷たい。



・・・さて、作業の続きをしましょう。




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