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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
六章 ハレルヴィ公国編
135/499

135.幽霊船が、

「待ってくれ、私は何もしていない!」

 ハズリムさんの必死の弁明から始まった。


 今回の幽霊船もハズリムさんの凶運がもたらしたものという疑惑が出てきた。

 ここでも歩くトラブルメーカーは健在のようだ。


「それにしても、ハズリムさんにはラッキーのスキルがあるのに、何でこんな事ばかり起こるのかしら?」


(ハズリムさんがこれまで生き延びてきた事自体が幸運のようです、普通ならすでに何度も死んでいます)


 そんなラッキーなど要らない!!


(まず第一にラヴィリス様と出会えたことが最大の幸運なのですから)


 もうっ!カガミンたら持ち上げ上手!!


「皆様ご無事で」

 立派な顎髭をたずさえた壮年の男性が慌てて入って来た。

「メーヴェル公、わざわざお越しに!?」

 シェルさんが反応する、一体誰でしょうか?私はアイネちゃんの肩に乗って尋ねる。

「メーヴェル・ハレルヴィ公爵様です、この国の統治されている方ですよ。今朝も挨拶に来られてました」

 アイネちゃんから説明を受ける、そりゃ領内でいきなり幽霊船が現れたらビックリするよね。


「メーヴェル公、あの船は一体」

 ゴメスさんが顎に手を当てて思案顔だ、質問に対して隣にいた眼鏡の執事さんが答える。

「海運協会からの情報ですが、オーレリア海を巡回する謎の破船が存在するという話です」


 オーレリア海について説明すると、このユーピテル大陸とオルベア神聖同盟のあるアゼリア大陸を隔てる大海をオーレリア海という。


「特に被害はないようですが気がつくと霧の中に閉じ込められ、しばらく経つと居なくなっているとの情報が入ってます」

 私は少し違和感を覚える、そうか!あの時、カガミンが結界と言った。

「アイネちゃん、ゴメスさんを呼んで隣の部屋に来て下さい」


 私の緊張感のある声にすぐに頷き、行動に移してくれた。


「やはり、あれは結界でしたか」

 どうやらゴメスさんも気付いていたようだ。

「おそらく引き寄せる結界です。何かを探しているようにも見えましたが」

 ゴメスさんも私の見解に同意する。

「どちらにしても危害を加える様子はなさそうなので、放置でいいのかしら?」

 オーレリア海を巡回しているなら、時間がたてば何処かに行ってくれるはずだ。


 そんな私の問いかけにゴメスさんが答えてくれる。

「いえ、それがずっと沖に停泊しているようです、監視を続けていますが全く動く気配がないようです」

 それは困った、出航できないじゃないか。

「ヘタに攻撃して反撃をされた時、どんな被害を受けるか分かりませんしな」

 まあ、幽霊から攻撃なんて想像したくもない。とりあえず1日様子を見てから考えようという結論に達した。



 夕方、私達はビーチに幽霊船を確認しに来た、確かに沖に幽霊船が停泊している。

 ビーチにはそれを見ようと大勢のギャラリーが集まっていた、どの世界にも野次馬は存在するんだな。


「退治とかできるんでしょうか?」

 アイネちゃんから質問される、

「私は役に立てませんが、ベリーサさんがいるから何とかなると思いますよ」

 ベリーサさんは光属性魔法の使い手、幽霊に最も有効的な攻撃方法なのだ、逆に私の地属性魔法は物理的な魔法ばかりなので効果は薄いのは実証済みだ。

「後はアリエッタの風属性魔法も有効ですから、何かあっても大丈夫だと思いますよ」


「えっ?」


 アリエッタが青い顔をしている、そう言えばずっと顔色が悪い、

「どうかしたのですか?」

 私がアリエッタに尋ねると震えながら答える、

「私、見えたんです、幽霊船に女の人が、私をずっと見ていたんです!もしかして私を追ってここまで来たのかも!?」


 久しぶりにネガティヴアリエッタが出現した。一生懸命テルーさんがそれを慰めている。


「幽霊船に女の人ですか、いかにもって感じですね。こちら側に接触しに来てくれないかしら」

 私が幽霊っぽく真似をしながらからかってみる、

「ひいいぃ」

 アリエッタが悲鳴を上げる、

「ラヴィリス様〜」

 テルーさんに恨めしそうに睨まれた、

「ごめんなさい、冗談ですって。でも逆に対話できるなら本当はありがたいんですけどね」

 今までが話の通じない相手ばかりだったので、たまにはそういうのも欲しいと思ってしまう。


(幽霊なら神刀が1番有効ですね)


 あっ、そうでした!私にはセルリス様から頂いた最強のチート武器がありました、幽霊恐るるに足らず。


 そういえばウチの冒険者さん達が大人しい、

「シャンティさん、貴女達冒険者はああいうのは大好物なのではないのですか?」

 一緒に見に来ていたので聞いてみた、

「・・・いや、私は命の方が私は大事ですから!」

 青い顔をして否定する、もしかして幽霊とか苦手なのか?


「・・・実は昔、父に連れられて悪霊退治に行ったら呪われた事があってね、三日三晩悪夢にうなされた事があってから苦手になっちゃったんだ」


 そういえばシャンティさんは教会孤児だった、教会の神父さんの仕事に悪意退治があるんですね。

「私はそういうのを避けてきたけど、乗り込もうとする馬鹿はいると思うよ。メーヴェル公がどういう判断をするかだね」

 なる程、メーヴェル公が討伐しようとするなら冒険者の召集があり得るという事か。


「あれ?あれはリプリス様では?」


 アイネちゃんが気付いて指差す、そのにはリプリス姫が1人で幽霊船を見ていた。

「何か様子がおかしくないですか?声を掛けましょう!」

 私達はすぐにリプリス姫の異変に気付く。


 急いで声をかけるとリプリス姫は振り向いて虚な表情を見せる。

・・・そして意識を失い、その場に倒れてしまった。




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