132. ハレルヴィ公国の昼下がり
ここでハレルヴィ公国について説明する。
ウォルベル王国の南にあり、ウォルベル王国との国境に世界最大の山セリンがある。
元々はハレルヴィ公国はウォルベル王国の一部だったがセリン山を隔てての統治が難しいため独立公国として認められた。
この国は大陸の南に位置しており、温暖な気候で農業が盛んだ。さっき食べたフルーツもそうだし、何と稲作までやっている。海にも面しており海の幸も豊富で交易も盛んに行われている。
・・・老後はここに住みたい。
私達はようやく外出の許可が出たのでハレルヴィ公国を散策することにした。
「さあ!テルーの服を買いに行きましょう!」
アイネちゃんはやる気に満ち溢れている。
「私も一緒でいいのかしら?」
リプリス姫が恐縮している。ちなみにリプリス姫は変装しているので、見た目はイイトコのお嬢様だ。
「・・・それはこちらのセリフかと」
テルーさんが泣きそうになっている、この際だから身分とか気にしてもしょうがないのに。
「あれ?馬車は?」
リプリス姫がきょろきょろしている。
「ダメですよ〜、こう言う時は徒歩でこそ新たな発見があるのです!」
アイネちゃんが胸を張る、多分馬車を待つ時間が嫌なんでしょうね。
賑やかな街を進む、アイネちゃんはやりたい放題です。露天で食べ物を買い食いしたり、カーリンさんと買い食いしたり、マキシムと買い食いしたりとずっと食べている。
「テ、、テルー?アイネはいつもあんな感じなの?」
リプリス姫がアイネちゃんの見たことのない姿にドン引きしている。
「・・・これがコイツの本性です。普段の猫被りが上手すぎるだけなんです」
テルーさんがアイネちゃんの耳を引っ張りながら連れ戻してくれた。
「ねえ、ところで服を買うんじゃないの?」
アリエッタが肉串を食べながら喋る、君も行儀が悪いぞ。
「そうでした!我を忘れてました!」
どうやらアイネちゃんは正気に戻ったらしい。
ハレルヴィ領館の職員さんに紹介された服屋さんに入る。
「派手・・・ですね」
温暖な気候で暑いからか露出の多めな大人っぽい服ばかりだ。テルーさんは大人っぽいから似合うと思うが。
「メアリー様みたいな方なら似合うだろうけど」
テルーさんが呟く。なるほどダイナマイトボディのメアリーさんならどれでも似合いそうだ。
「あら、メアリーさんの事はご存知だったんですね」
私が尋ねてみた・・・アイネちゃん以外にも貴族令嬢との交流があったのか。
「はい、アイネから紹介してもらいました。とても温かい雰囲気のある方です」
なる程、概ね正解ですね。
「うふふ、実はメアリーさんも貴女と同じ女神様の従属者なんですよ」
「えっ!そうなのですか?」
そりゃ、驚くよね。
「メアリーさんは火の女神フレア様御使ヴェロニカ様に従僕してます」
私はアリエッタの風、ヴェロニカさんの火とすでに2人のスプライトに会ってるんだよね。会ってないのは水のスプライトだけだ。きっとどこかにいるのだろうか?
「へぇ、ヴェロニカって【竜狩】みたいな名前ね」
シャンティさんが冗談っぽく言う、
「いえ、その本人ですよ。彼女はドラゴンを食べる為に狩りつくす妖精ですから」
・・・あれ?何、この空気。
「ラヴィリス様、もう少しソフトに言わないとダメだと思いますよ。ヴェロニカ様の尊厳のためにも」
えっ!?アイネちゃんにダメ出しされた!?
「私の知らない所でこんな事が起こっていたのですね」
リプリス姫がしんみりと呟く、王城の中で生活していると外の世界の情報は入ってこないからね。
「ディルメスみたいな奴等がいるからね、ヴェロニカ様のことも内緒にしてたんですけどね」
実はクリストア王国にもエルヴィン王子やアリアス王子がいる、彼等は少し警戒しないといけないと思っている。
「・・・きっと兄達もその中に入ってますよね。分かってます、絶対に誰にも言いませんから」
リプリス姫も兄2人に関しては思うところがあるようだ。
「おい、こっちの服なら似合うんじゃない?」
一緒に来ていたサティさんの声がする、見るとシンプルな服が並んだコーナーがあった。
「これはいい!!」
テルーさんが嬉しそうだ。
「・・・私も買っちゃおう!」
アイネちゃんが服を手に取り選び始める。
一方、買い物などしたことのないリプリス姫は何をすればいいのか分からず1人オロオロしている、その姿を見て皆から笑いが溢れる。
・・・こうして楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
その夜、全員集合して今後の方針について話し合いが行われた。
まずはサンクリス皇国が滅んだ。ほぼシシリィさんの見立て通りだった。
北にいる第2皇子がベタスルール王国と繋がっており皇都を占領し、皇太子のディルメスは行方不明らしい。
おそらくディルメスは第2皇子に匿われているだろう。
そして新たに新生国家が樹立するようだ。クリストア王国に対しては正式に謝罪と賠償となるだろう、こっちは沢山の証拠を握っているため迅速に行動したようだ。
帰路についてだが、ここにいる全員が空の旅が少々嫌いになったので陸路か海路になるようだ。
陸路だと山越えとウォルベル王国経由になるので時間がかかりすぎるようだ。
という事で、なんと!今度は船でクルージングです。
クリストア王国南部に位置するグランドル領から豪華客船がこちらに向かっているという。
「へぇ、グランドル家は港を持っているんですね。凄い!」
つい感心してしまった。さすが大貴族!
「私達はほとんど帰ってなかったけどね。最近では息子のガルファにほぼ任せっきりになってしまったわ」
シェルさん達はガルファさんにすべて丸投げしたようだ。なんて親なんだ!
「・・・ラヴィリス様?ハズに内政なんて出来ると思う?」
「・・・そうですね、無理っぽいです」
何となく納得してしまった。
「ハズリムよお前だけ陸路で帰らんか?」
ゴメスさんが唐突に言い出した、
「なっ、何故だ!?」
いきなりの提案にハズリムさんは驚いている。
「お前がいるとトラブルが向こうからやって来る・・・気がする」
・・・ゴメスさん、それをフラグと言うんですが。




