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精霊女王と呼ばれた私の異世界譚  作者: 屋津摩崎
六章 ハレルヴィ公国編
131/499

131.のんびりするのは良いもんだ。

新章、ハレルヴィ公国編スタートです。

 私達はサンクリス皇国脱出後、隣国のハレルヴィ公国に無事保護された。


「公国って?」

 アリエッタが聞いてきた・・私も知らん。


「国王じゃなくて貴族が統治している国の事だよ。ここはウォルベル王国から分離した国なんだ」

 ゼル君が丁寧に教えてくれた。地図を見せてもらい大陸を縦断するようにウォルベル王国の南側にハレルヴィ公国が位置している。こうして見るとウォルベル王国が非常に大きな国土を有しているのが分かった。


「ならここは安全なのかな?」

 アリエッタがストレートに尋ねる、ゼル君は苦笑しるしかなかった。

「うーん、サンクリスがすぐに攻めて来るとは思えないから大丈夫だと思うけど・・」

 今はハレルヴィ公国の偉い人とリプリス姫らが話し合いをしているので結果待ちだ。今、私達は豪華な一室で待機です。


「皆様お茶が入りました」

 リマさんらがお茶の用意をしてくれた。私用の小さなティーセットが用意され、アリエッタの分も出された。一体どれだけ予備を持っているんだ?


「すっごい!こんな小さなティーセット初めて見ました。今まで瓶の蓋で飲んでたもん」

 アリエッタが感嘆の声を上げる。


「何コレ!美味っ!」

 下品な感動の声が聞こえる。シャンティさんそれではお里が知れますよ。


 いったい何が美味しいと言うんだ?

・・・これはフルーツケーキ?

「何コレ!美味っ!」

 私もつい感動の声を上げてしまった!


「ハレルヴィ公国は南国でフルーツが有名なんです」

 ニコニコしながらアイネちゃんがフルーツケーキを頬張る。

 サンクリス皇国に来てからずっと張り詰めていた、だからこんな風に落ち着けるのは本当にありがたい。


「・・・ところでテルーはなんでまだメイド服を着てるの?」

 アイネちゃんが不思議そうに尋ねる、

「・・・この服が一番モノがいいんだよ」

 恥ずかしそうに答える。そうか、貴族のメイド服の品質は平民の服と比べて遥かにモノがいいんだ。


「それはいけない!今からすぐに買いに行こう!」

 アイネちゃんが身を乗り出す。

「えっ、でも」

 困惑するテルーさん、彼女はいわゆる服に無頓着なタイプのようだ。


「さあっ!さあっ!街に繰り出しましょう!!」


・・・おそらくアイネちゃんの目的はそっちだろう。


「ダメですよ」

 リマさんが有無を言わさずストップする。

「なんでっ!?なんでダメなの!!」

 アイネちゃんがガチギレした!?

「・・・分かっているとは思いますが、監査が終わるまでは領館から出てはいけません」

「ぐぬぬぬぬ」

 リマさんの正論にアイネちゃんは何も言い返せない。この性分には本当に困ったものだ・・・


「しばらく大人しくしてましょう。許可が出たら遊びに行きましょうね」

 私がフォローすると複雑そうな顔で頷いた。


「ところでレアンさん達もクリストア王国に来てくれるんですか?」

 話題を変えるべく私が話を振る。

「ああ、俺達がサンクリスを拠点にしていたのはディルメスがスポンサーだったからだ。実は俺、クリストア王国出身だし」

 へえ、そうなんだ。

「うちらの中でサンクリス出身はダイスだけだよ。私とサティはベスタルール出身だし」

 シャンティさんが付け加える。

「ダイスさん、大丈夫なんですか?生まれ故郷なのに・・」

 私の心配をよそになぜか笑われてしまった。

「ははは、単に生まれがサンクリスってだけさ。ありがたい事にゼル様が面倒見てくれるって言うからな、これからはグランドルに世話になるつもりさ」


 んっ?聞き捨てならない事を聞いたぞ?


 私はゼル君を見る、すると高速で私から顔を背けた。

「・・・まさかとは思いますが、抜け駆けしましたね?」

 私はゼル君の肩に乗り耳元で尋問する。


「・・・そんなつもりは・・・ございません」


 とぼけるゼル君、おやぁ?汗だくじゃないですか?

「私はいいけどシシリィさんが怒りますよ?」

「だっ、大丈夫でしょう、お婆様はその為にいるんでするから」

 な、なんて酷い孫だ!お祖母さんを(いけにえ)にするつもりだ!


「そうか、やっぱり冒険者を辞めるのか」

 何やらレアンさんがしんみりしている。

「ああ、俺もそろそろ潮時だ。能力的にもなぁ、今回の戦いで身にしみたよ」

 ダイスさんは冒険者を辞めるようだ。

・・・う〜ん、能力は問題ないと思うけどなぁ。


「私も多分辞めるよ、シシリィ様から熱心に勧誘を受けたからさ、それを受けようと思う」

 サティさんまで冒険者を辞めるようだ、彼女に関しても勿体ない気がする。

「思ったより結構ドライなんですね」

 ちょっと残念に思う、こう仲間とか絆とか熱いものがあると思ってしまった。


「まぁ、そんなもんよ。ずっと一緒にパーティーを組むとマンネリ化するしね、解散、再結成とかザラにあるんだよ」

 サティさんの顔は笑ってはいるが、ちょっと寂しそうだった。

「まあ、私も当分はのんびりするよ。アリエッタはどうするの?」

 シャンティさんは伸びをしながらアリエッタに話を振る。

「私はテルーと一緒に学校に行きたい。私はこの世界の事を知らなさすぎるもの」

 どうやら以前の私と同じ事を考えているようだ。確かに前世の世界とは常識が違いすぎるからね。


「おい、学校なんて勉強する所だぞ?お前にそれが出来るのかよ?」

 レアンさんがからかうように言う。

「レアンこそ行った方がいいんじゃない?」

 アリエッタがジト目で言い返す、きっとこれが彼等の本来の姿なんだろう。

「アホか、それが嫌で冒険者やってんだぞ」


・・・いや、頭悪かったら冒険者できないだろ。


「レアンさんよく生き延びてきましたね?」

 こっそりとシャンティさんに聞いてみた、

「まあ、運だけは良いからね。あと周りのフォローする人間が優秀なんだと思う」

 暗に自分達の優秀さをアピールする。


「うふふ、そうなんですね。実は私もいつかは冒険の旅に出たいと思ってはいるんですよ」


「「「えっ?」」」


 つい軽い気持ちで言ってみたが、皆にビックリされる。

「ラヴィリス様、旅に出られるのですか!?」

 アイネちゃんが真っ青になっている。これはかなり勘違いしているぞ。


「そうですね、私の寿命は1000年以上ありますからね、ずっと同じ場所にいるとマンネリ化してしまうでしょ?」

 私はアイネちゃんを見てウィンクする。


「それにすぐと言うわけじゃないですよ、きっとアイネちゃんが未熟なうちは行きませんよ」


 そう、いつか未来のお話です。


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