124.お前らの好き勝手にさせてたまるもんか!
本当に納得いかない!
ゲートキーパーが突然乱入して来た、後から来て良い所だけ全部持っていくなんて許さない!
「シェルさん、シシリィさんここから撤退します、すぐに準備して下さい」
後衛で待機していたシェルさん達に指示する。
「あれはオルベアの神の尖兵ですよね。今更来てどういうつもりなの!」
珍しくシシリィさんが語気を荒げている。
「・・・ラヴィリス様、貴女様がただで転ぶつもりはありませんよね?」
さすがシェルさん、私の表情から汲み取ったのか何か感づいたようだ。
「当たり前です!アイツらがここで乳繰り合っているうちに地上から生き埋めにしてやる!好き勝手させてたまるもんですか!」
(・・・ラヴィリス様、うっとりするくらいゲスい顔をしてます!)
「あら、それは素敵!さすがラヴィリス様です」
どうやらカガミンとシシリィさんは思考回路が似ているようだ。根が素直なリプリス姫は私の極悪面を見てガクガク震えている、
「アイツらの目的は翼竜の死骸のはずです、絶対に私達を助けに来たなんて思わない方が良いです」
シェルさんがハッとする。
「まさか、魔石!?」
私は頷く。
「本当の事を話します。ブラックコアの本当の正体は生贄石と言うんです。生贄石は多くの魂を集めて作った人工のエネルギー結晶体なんです」
全員が息を飲んだ。人の手で生物の魂を弄ぶ、明らかに神を冒涜する行為だ。それをオルベア神教は神の名の下にやっているのだ。
「・・・ディルメス達が決して間違っていた訳ではないのですね」
リプリス姫が複雑そうな表情をしている。
「私は彼等が正しいとは思ってません、彼等もオルベア神教もやっている事は同じなんです。魂を冒涜する行為に正当性などありませんよ」
リプリス姫の頬を撫でながら優しく諭す。
「彼らは誰かを犠牲して自分の正しさを証明しているだけなんです、その手段の為なら何をしても許されるなんて絶対にあり得ません」
私の言葉に力強く頷く、ゴメスさんがリプリス姫を推している理由が分かった気がした。
「私はアイツらより先に翼竜の死骸を回収してきます、皆さんは先にここから脱出して下さい」
私は後衛から離れ、待ってもらっていたアリエッタと合流した。
「お姉様、あれが本来のゲートキーパーですよね?」
アリエッタの質問の理由は分かる、先程まで戦っていたピースメーカーとは明らかに違うからだ。
「私もハッキリとは言えませんが、ピースメーカーはおそらく私達のお婆様である精霊女王マナフロアが生み出した物です。ゲートキーパーの場合は生贄石と呼ばれる魂の集合体から作った人工生成物です」
・・・アリエッタはまだマナフロア様まで辿り着いていないだろう、あまり踏み入った事は言わない方が良いのだろうか?
「本来ならこれらの話は私からではなく、貴女のお母様である風の女神フィオル様から教えてもらった方が良いと思ってますが」
・・・ん?何か考え込んでいるぞ。
「私に教えてくれるでしょうか?」
不安そうな顔をしている、
「私はきっとズルをしてシャングリアから脱出したと思うんです、きっと幻滅していると思います」
・・・そういう事か、今回の恐竜の事も自分のせいだと思っている節があった、ずっと気に病んでいたんだ。
「ルールを指定された訳ではないのにズルとか言われても困りますよね」
つい笑えてしまった。
「別にいいじゃないですか、こうやって生きているならきっと喜んでくれますよ。女神様は総じて母性本能の塊ですからね、会いに行けば必ず溺愛してくれますよ」
・・・表情が明るくなった、どうやら思い当たる節があるらしい。
「誕生日に女神様の大神殿に行けば直接お話ししてくれるはずです、ちなみに誕生日は?」
アリエッタは少し考え込んでいる。
「実は私はこことは別の世界から来たんです、なのでここに来たのは3ヶ月くらいなんです」
おっと、この子自分からカミングアウトしたよ。しかもこの世界に来てまだ3ヶ月なの!?
「そうでしたか・・・」
私はバンゲアから脱出するのに半年程かかった、3ヶ月というと丁度諦めかけた時期だ、
「よく頑張りましたね。大丈夫です、皆が貴女の味方ですよ、貴女が罪だと思っても私達は全力でそれを否定しますから覚悟なさいね」
一緒に飛行しているから頭を優しく撫でてあげる、
「うふふ、お姉様じゃなくてお母さんみたいです」
・・・実は私、この世界で2歳にいってないし。
「・・・せめて姉でお願いします」
「ハイ!!」
私のお願いにアリエッタは満面の笑みで返事をした。
前線に着くと無惨な姿となった翼竜が横たわっていた。
ようやくハズリムさん達と合流した、上を見上げると翼竜とゲートキーパー2体が戦闘していた。悔しさがこみ上げてくるが仕方ない、お前たちの思い通りになんて絶対にさせない。
翼竜をカガミンの中に入れる、この巨体が入る収納って一体どういう原理なんだろう。皆が私に注目している。
「さあ!とっととこんな所から脱出しましょう」
皆を促して出口の階段を進む、ドーム部分を抜けて地下道に入る。
「サティさん、シシリィさんから聞きましたが、脱出に使う飛行船はどこにあるかわかりますか?」
一旦休憩してサティさんにちゃんと聞いてみた。
「ええ、東区の地下ドックにあって、起動も確認済みよ」
「あれっ!?中央ドックじゃないの?」
レアンさんが素っ頓狂な事を言い出す、
「バーカ、ディルメスの言うことなんか真に受けないでよ、飛行船はあったけど小細工がしてあって思いっきり囮に使う仕様になっていたわよ」
レアンさんはサティさんの言葉を聞いて頭を抱えている。
サティさんはかなり優秀のようだ、戦闘力はレアンさんが一番だけど頭は1番悪いようだ。
「操縦はできますか?」
「俺が出来る、任せてくれ」
ダイスさんが前にでる、このパーティーは各自の役割がハッキリとしている良いチームなんだと思った。
「この先にシェルさん達がいます、合流して下さい、できれば脱出の手筈をお願いします」
レアンさん達はどうやら脱出まで協力してくれるようだ、本当にありがたい。
「ラヴィリス様は?」
アイネちゃんが心配そうな顔をして聞いてくる、
「私ですか?」
「うふふ、これから地下で乳繰り合っている馬鹿な奴らを1人残さず生き埋めにしてやります」
・・・何故か全員ドン引きしている。




