102.地下は私の庭
ようやく皇都が見える場所に着いた。
上空に恐竜が飛び交う姿が見える、一応ハズリムさんに連絡を取ってみよう。
『ラヴィリス様か?何とか皆無事ですぞ』
良かった全員無事のようだ。
ハズリムさんの情報によると恐竜は脱出しようする者に目を光らせている、更にやって来る者も捕獲する習性があるようだ。
・・・これ以上近づかない方がいいようだ。
「隠蔽魔法を使えば何とかなるかな?」
(ラヴィリス様、地下に網目のような空洞が広がっているようです)
ほうほう、それが中まで続いているのかな?
「この辺かな?ロックバイパー!」
必殺の掘削魔法で大きな穴を掘る、
(ここから数メートル掘り進めると空洞に辿り着きます)
了解!そして空洞にたどり着くいた、地下道のようで人が立って歩けるくらいに広い。
私は皆を呼ぶため穴からひょこりと顔を出す。
「さあ、皆さん行きましょう」
すると全員が変な顔をしている。
「ラヴィリス様、まずはお体を洗って服を着替えてましょう」
カーリンさんの顔が引きつっている、自分を見てみると全身が泥だらけだった。
そしていつもの羞恥ショーが始まった、私のような小物の裸を見て何が面白いんだ!
なぜシャンティさんまで参加しているんだ!?私1人だけリフレッシュしてしまったではないか。
こうしているうちに夜も更けてきたので明日の早朝出発する事にし、列車の中で一晩過ごした。
そして翌朝、私達は地下道へ向かった。
「皇都だけにあると思っていたけど外にまで地下道が広がっていたなんて」
シャンティさんもこの道は知らなかったようだ。
「ここの壁を掘って真っ直ぐ行った方が近いですね、ロックぶっ」
新たな道を掘ろうとしたらなぜか全員に止められた?
「なんで邪魔するのですか、せっかく楽しくなってきたのに!」
テンションが上がっていたのを止められたので、つい文句が出てしまった。
「タナさん手作りのお召し物が汚れてしまいます!やるなら裸でやって下さい!」
ショック!テルーさんにキレられた!?裸で土を掘れと?さすがの私でも裸で掘削するのは恥ずかしいぞ。
「くっ、しょうがない、じゃあこっちの道です」
私が自信を持って進んでいるため不思議に思っているようだ、
「これでも私は地の女神様の眷属ですからね、こういう地下道は私にとっては庭のようなものですから!」
そしてあっという間に皇都の中に入る事ができた。
「皇都内に入ると地下道が整備されているんですね、私的にはさっきまでの洞穴感があった方がテンション上がるんですが」
「あからさまにガッカリしないで下さい!」
テルーさんがツッコミを入れてくれる。今までツッコミ不在だったから、ちょっと嬉しい。
「・・・私の出番が」
地下道の案内役を買って出てくれたシャンティさんが凹んでいた。なぜなら地下では私の能力が絶好調になったりする、さらにはカガミンの探索能力で地下に避難している人の位置まで分かってしまうのだ。
こうして迷う事なく皇宮の地下に着いてしまった。
「リマさん!」
遠目に見えたので声をかける。
「ラヴィリス様!?」
リントワースの面々が走ってやって来る。リマさんに熱烈なハグをされる、しばらくするとタナさんが早く代われと催促する。
「あの、そろそろ状況を教えて下さい」
タナさんに抱き抱えられながら聞く、遅れてやって来たフレディさんが答えてくれた。
すでに皇都は恐竜に破壊されつつあり、先に脱出しようとした皇王は恐竜に襲われ亡くなったらしい。
住民はこの地下壕に避難しているが脱出が出来ないでいるようだ。
そしてもう一つの大問題を知る。ハズリムさん達が皇太子ディルメス達皇族を捜索に地上に出てしまったのだ。
私はすぐにシェルさんの元に向かう、
「シェルさん!」
「ラヴィリス様、帰られたんですか!?」
ちなみに私はもう姿を隠していない、全員の視線が私に集まる。
「ハズリムさんはどれぐらい前に出ましたか!?」
今は昼すぎくらいだ、朝に出発したとしたらまだ間に合う。
「・・・ラヴィリス様から連絡入ってからすぐに出たので昨日の夕方近くです。何か分かったのですか?」
シェルさんが真剣に問いかけてくる。
「皇太子ディルメスは敵の可能性が高いです。おそらく呪術師と裏で繋がっています」
・・・全員が沈黙する。
「貴女はいったい・・・妖精?ですか」
リプリス姫達にも私の姿を晒しているから問いかけて来る、
「嘘をいうな!兄上がそんな事するわけないだろ!」
そのリプリス姫を遮るように少年が激昂してくる、
「シェルさん、彼はどなたですか?」
「皇国の第4皇子のアレン様よ」
カガミン、どう?
(ハイ、呪詛腫が入ってますね、自我はすでに無いので中身は偽物です)
「呪術師の人形ですね、姿を現しなさい!」
私がカガミンからダイツーレンを放つとアレン皇子は身を翻す。しかし一太刀切れていた、そこから蒸発するように煙がでている。
その姿は人ではなく、すでに異形の悪鬼の姿となっていた。
『なんだその剣は!?姿が維持できない!?』
「おっ皇子?」
皇国の人が姿を変えた自国の皇子に愕然としている。
判断の早いシェルさんやカーリンさんが即座に悪鬼に攻撃を仕掛ける、
「ぐぅ!」
ダイツーレンによって暴かれた悪鬼は不利と悟ると近くにいたリプリス姫を人質にとった、
『はあ、はあ、なんだよ、反則じゃないかその剣、浄化の力が半端ない、ぞ』
悪鬼は苦しそうにしている。
「どう足掻いても助からないわよ、リプリス姫を離しなさい」
悪鬼の後ろに人影が見え何やらしようとしている、なら私は注意をこっちに向けさせるようにする。
『うるさい、お前が例の2匹目だな!うぜー事しやがって、ぶっ殺してやる!』
悪鬼の腕が私に伸びる、しかしフレディさんが割って入り腕を切り落とす、
「だいぶ弱っているみたいだなぁ」
ニヤッと笑ってる、その姿、単なるチンピラにしか見えない。
「破邪縛陣、セイントクロス」
突然悪鬼の後ろから結界魔法がかけられた、
『ガアァ!』
姿を現したのはナイスミドルのゴメス・ベルリアル公爵であった、術の展開の速さからかなりの実力者のようだ。
「貴女様がラヴィリス様でよろしいかな?」
丁寧に頭を下げられてしまう。
「あら?どうやら私の事を知っているようですね」
悪鬼を神樹魔法で捕縛しながら聞いてみた、
「ええ、ハズリムとアイネ嬢が出発前に貴女様がここに戻られた時に助けて欲しいと頼まれました」
なる程、この人はあの2人から絶大な信用を寄せられているようだ。
「なんとかコイツから情報を得られるかしら?」
シェルさんもやって来た。でも悪鬼が口を割ってくれるだろうか?
「無理ですな、既に絶命しているようですぜ」
フレディさんが悪鬼を足蹴にしながら確認している。
「貴方達これはいったいどういうことなの!?」
放ったらかしにされていたリプリス姫の声が、地下に虚しく響いた。




